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読んでみたい本

  ベルマーク新聞の「読んでみたい本」のコーナーで20年以上、児童・生徒・PTA向けに、本を紹介し続けている児童文学者・鈴木喜代春さんの「書評コーナー」を、ベルマーク財団のホームページでもご紹介します。書評は3カ月に1度更新していきます。


「わたしの記憶」
白根厚子詩集

 「/花輪線に乗るのは何十年ぶりだろう/いくつかの駅をすぎて/ガラス窓に二センチに満たない/小さな蛾がとまった/蛾の腹のあたりを指先でつついたが/うごかない/列車はしだいにスピードをあげていく/わたしは気が気でない/トンネルだ!もうだめ!/蛾はいた/この小さな蛾にこんな力があり/こんなにも耐える力があるなんて」
 「旅は人生」「人生は旅」と「旅」を詩いつづけてきた憶いがひしひしとつたわってくる。中学以上向き。

(詩人会議出版・頒価1500円)

「くまさんのまほうのえんぴつ」
アンソニー・ブラウン作・さくまゆみこ訳

 狼が、くまさんを食べようとする。くまさんは、まほうのえんぴつで、狼を消してしまう。ライオンや、へびなども、まほうのえんぴつでのりこえてゆく。
 カワイルカ、マウンテンゴリラなど、地球から消えてしまいそうな動物をまほうのえんぴつで描いてまもる。カワイルカなど描いてもらった動物は、その夜、喜びのパーティーを開く。小学校初級以上向き。

(BL出版・本体1300円+税)

「タンポポ あの日をわすれないで」
光丘真理文・山本省三絵

 その日、いつものようにスクールバスに乗って、まいちゃんも、さきちゃんも、学校へ行く。午後の国語の授業中に、教室が大きく大きくゆれて大地震だ。
 ゴロゴロゴロオオオと、津波がくる。マンションも、電柱も、自動車も、家も、みんなのみ込んで、町はなくなってしまった。
 そして2か月が経った。
 校庭にタンポポが咲いて風にゆれて、綿毛をとばしている。綿毛は津波で亡くなった人たちのいる天に向かって、空高く高く飛んでゆく。小学校初級以上向き。

(文研出版・本体1300円+税)

「ちゅい ゆんたく」
琉愛子著

 「ちゅい ゆんたく」は「一人語り」ということ。「沖縄」は、たくさんの軍事上の問題がある。その中で本書は沖縄の庶民の日常生活の喜びや楽しみ、悲しみや苦しみが、たんたんと語られている。例えば、高校時代の友人の、千枝子さんと32年ぶりにあう。千枝子さんは米兵と結婚してアメリカへ渡る。米兵の夫は酒とマリファナに溺れ、離婚する。千枝子さんはいま2人の娘とアリゾナに住んでいるという。
 このような手記が88編、収められていて、沖縄の庶民の息づかいが、つたわってくる。PTAで話題にしたい本である。

(東京沖縄県人会・頒価700円)

「ソーラーカーで未来を走る」
木村英樹著

 「ソーラーカー」は、1滴のガソリンも使わない。太陽の光りだけで走る。
 東海大学が「ソーラーカー」の研究をすすめ「カモメ50号」「東海51SP」「東海スピリット」「東海スピリット2号」をつくった。
 2008年には「東海フルコン」をつくり「アフリカ大陸一周」のレースで優勝し、初代のチャンピオンになっている。
 石油や石炭は、いつかはなくなってしまう。大きく期待されているのは風力、太陽光などの自然エネルギーだ。
 「ソーラーカー」は未来をささえて明るい。小学校上級以上向き。

(くもん出版・本体1400円+税)

「てるちゃんのかお」
藤井輝明文・亀澤裕也絵

 2歳になった輝明の顔に赤い大きな、こぶができはじめる。(それは海綿状血管腫)幼稚園、小学校に通う頃になると、こぶはますます大きくなる。「バケモノ」などと馬鹿にされる。
 輝明は、父母に励まされ、教師や、友だちに励まされて「こぶ」をのりこえて、大学を3つも卒業して医学博士となる。
 「人間」のすばらしさが、うれしく、ありがたくなる大きな絵本である。小学校初級以上向き。

(金の星社・本体1300円+税)

「なぞなぞのみせ」
石津ちひろなぞなぞ・なかざわくみこ絵

 頁を開くと、右の頁はお店の絵で、左の頁は「なぞなぞの問いかけの文」となっている。全部で10の店の絵と、なぞなぞの文となっている。
 例えば6番目のお店(絵)は「書店」で、左のなぞなぞ文は5問。その答は、ずかん、しおり、うちわ、えほん、はと。
 楽しく遊び、のびのびと選択分析の思考を育てる、みごとに工夫された絵本である。幼児以上向き。

(偕成社・本体1000円+税)

「童話のどうぶつえん」
漆原智良文・いしいつとむ絵

 東京都羽村市の小さな動物園に「ウサギ」と「カメ」の部屋がある。ここではウサギとカメが、仲よく遊んでいる。「昔話」にある「ウサギとカメ」の部屋だ。ほかに「さるかに合戦」や「三匹のコブタ」などの部屋もある。特別にめずらしい動物がいなくても、昔話の動物の部屋があるので、この小さな動物園では、子ども達が昔話に出る動物と仲よく遊んでいる。小学校初級以上向き。

(アリス館・本体1400円+税)

「ぶつくさモンクターレさん」
サトシン作・西村敏雄絵

 「モンクターレ」のおじさんは「なんだこの道は。グニャグニャまがっていて」と、もんくを言う。「ピーピーチュンチュン」なく小鳥に「うるさいたら、ありゃしない」と、もんくを言って家へ帰ると、おくさんに「いままで、どこをほっつき歩いていたの」と、もんくを言われる。この絵本は「もんく」を言って、言われる「人間」を考えさせてしまうおもしろい本だ。小学校中級以上向き。

(PHP研究所・本体1200円+税)

「メン! ふたりの剣」
開隆人作・高田桂絵

 9月、市の体育館で剣道の「秋季大会女子個人戦」がおこなわれる。第一小学校の久世ミクと、第三小学校の辻ユリンが決勝戦で戦う。ミクとユリンは幼稚園の頃は大の仲よしだった。ユリンが韓国の学校へ転校し、そして帰ってきて、いまミクと戦うのだ。勝負はユリンの勝となる。
 次に2人はケン大会で決勝を戦いミクが勝つ。
 剣道で、戦うごとに2人は更に更に仲よくなり、剣がつよくなる。小学校上級以上向き。

(そうえん社・本体950円+税)

「青木繁とその情熱」
かわな静著

 画家・青木繁の「海の幸」は油彩画では「重要文化財」第1号という。青木繁は「古事記」など古代神話の世界を「絵」に描きつづけた。その中で房州布良の海岸で描いたのが、名作の「海の幸」だ。「海の幸」を黒田清輝は「悲調をおびた歓喜」といい、蒲原有明は「耳にひびく底力のある音楽を聞いた」と賞賛している。
 青木繁は明治44年に28歳でこの世を去っている。短い生涯は激しい。数多くの知人、友人と交わり、めまぐるしく転居をくりかえす。その激しい人生が、繁に、自分の絵を、描かせてゆく。
 ところで、青木繁が「海の幸」を描いた同じ房州布良に住んでいる、本書の著者は、実地調査を重ねて、みごとにまとめたのが本書である。中学以上向き。

(てらいんく・本体1200円+税)

「『はやぶさ』がとどけたタイムカプセル」
山下美樹文・的川泰宣監修

 小惑星探査機「はやぶさ」が、小惑星「イトカワ」まで行って、地球誕生の秘密がこめられているカケラを地球に持ち帰った記録で、次の項目で、目に見えるように詳しく述べてすばらしい。①宇宙に向かって出発!②イトカワをめざそう!③イトカワへの着陸に挑戦!④まいごになったはやぶさ⑤奇跡がおきた!⑥地球に帰れない ⑦二度目の奇跡がおきた!⑧「ただいま」と「さようなら」。高度な「科学」を目に見えるような表現で、うれしい。小学校中級以上向き。

(文溪堂・本体1300円+税)

「ハナンのヒツジが生まれたよ」
井上夕香文・小林豊絵

 世界には、いろいろな国があって、しあわせを求めて、それぞれ「生きて」いる。
 ここでは「イスラム教国」の、国土の大部分が砂漠の「ヨルダン」のお話。
 「テント」で暮す。春。1年ぶりに恵みの雨。乾いた砂漠が緑いっぱいとなる。
 断食の生活がはじまってひと月も、つづく。
 いけにえ祭りで、育てたヒツジが食べられる。ハナンが育てたヒツジも食べられる。
 空いちめんのヒツジ雲。「心配しないでお食べ」と声が聞こえてくる。
 ヨルダンで2年間、生活した著者の、世界の国ぐにに目をひらかせる熱い心情のこもった1冊。小学校中級以上向き。

(小学館・本体1600円+税)

「ラブレター物語」
丘修三作、ささめやゆき絵

 「ぼく」は「けいこ」が好きで、3年生までは会えば話ができた。4年生頃から恥ずかしくて口を聞けなくなる。その「けいこ」が転校することになり、いなくなってしまう。ぼくは、口で言えなくて手紙(ラブレター)を書く。でも、その手紙を、けいこにわたすことができない。けいこの家へ行ってわたすことにする。けいこが出てくる。それでも手紙をわたせない。ぼくは散歩するけいこの後をついて歩く。別れてから、ぼくは手紙をきざんで川に流してしまう。涙がぽろぽろ出てくる。すると、もっとけいこが好きになる。
 このように「ラブレター」の美しい話が、6編収められていて嬉しい。
 いま、ファンタジーや、お化けの本が多い。そのとき現実の「子ども」の物語の本が出版されたことがありがたい。小学校上級以上向き。

(小峰書店・本体1400円+税)

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