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自然、命を大切にする心、生き方を学んで20年

第14回「朝日のびのび教育賞」 千歳市立末広小にベルマーク賞を贈呈

伝統的家屋「チセ」の中。ベルマーク賞の活動奨励金でカヤなどを修繕する予定です 1年生から6年生まで、20年にわたってアイヌ文化を学んできた北海道千歳市の市立末広小学校(秋沢裕校長、479人)に、朝日のびのび教育賞の「ベルマーク賞」が贈られました。2月22日、学校の体育館であった贈呈式には、子どもたちの講師を務める千歳アイヌ文化伝承保存会の野本久栄・副会長と夫人の敏江さんをはじチセの前で記念撮影。目録をもつ秋沢裕校長と正賞の盾をもつ小田歩美さんを囲んでめ、地元町内会の代表、学校評議員のみなさんも参加して全校で受賞を祝いました。
 秋沢校長は「イランカラプテ」と呼びかけました。アイヌ語で「こんにちは」とのあいさつです。すると児童も「イランカラプテ」と答えます。自然な応答はさすがでした。校長は「野本さんご夫妻に支えられ20年。感謝で子どもたちに語りかける野本久栄さんいっぱいです。この賞を励みにさらに学習を発展させたい」と話しました。
 児童会会長の小田歩美さんは「私はもうすぐ卒業ですが、末広小で学んだことを誇りに思います」と笑顔でした。
 野本さんは「きょうはとてもうれしい。ジーンときちゃった」と切り出します。そして「天の国から役目なしに降ろされたものは、一つもない」と語りかけます。命にいらないものなどない。自然を敬い、大切にして生きる。これがアイヌ民族の教えで、自然との共生、平等など野本さんが一番伝えたいことです。「みんな、仲間として付き合っていきましょう」と結びました。
 朝日新聞からは西川祥一・北海道報道センター長が出席。「学校にあるチセ(アイヌ民族の伝統的家屋)は博物館にあっていいような立派なものです。これからも末広小に注目してみていきます」と話しました。ベルマーク財団の宮田謙一常務理事は「チセがあるなんて、全国で末広小だけです。うらやましい。いろいろな経験を一生の宝物にしてください」と励ましました。

野本さんが伝統のもり「マレク」でサケを突く
 1993年、学芸発表会で先生が「世界の歌と踊り」というプログラムを考えたのが、はじまりです。それならアイヌ民族の歌と踊りをいれてはどうか、という声がでて、2年生の保護者だった野本夫妻に相談します。学芸会は成功。これを契機にチセ作りの機運が盛り上がり、96年サケのかわをはぐ勉強。切り身にして児童が持ち帰りますに完成します。
 この年、1年生から6年生まで発達度合いに応じたカリキュラムもつくりました。歌や踊り、遊びからはじまり、サケ漁の体験、地名学習、雑穀栽培、生活用具作りなどをします。6年生は差別の歴史と人権まで視野をひろげます。昨年は、運動会でアイヌ古式舞踊の「ホリッパ」を全校で披露しました。北海道アイヌ協会など市外から見学に来る方もいて、かつての苦労を思い出し、涙を流す場面もありました。
 世間では、偏見がすべて消えたわけではありません。学校では、アイヌ文化を教えることに異論が出るのではと、心配もしたそうです。しかし、「子どもたちがごく自然に歌や踊りを身につけ、なじんでいる。その明るい姿がすべてでした」と振り返っています。

伝統の踊りホリッパの練習。教えるのは野本敏江さん《写真上から》
・伝統的家屋「チセ」の中。ベルマーク賞の活動奨励金でカヤなどを修繕する予定です
・チセの前で記念撮影。目録をもつ秋沢裕校長と正賞の盾をもつ小田歩美さんを囲んで
・子どもたちに語りかける野本久栄さん
・野本さんが伝統のもり「マレク」でサケを突く
・サケのかわをはぐ勉強。切り身にして児童が持ち帰ります
・伝統の踊りホリッパの練習。教えるのは野本敏江さん

(2013/02/26)

ベルマーク財団の事務局長が交代しました

 ベルマーク財団事務局長に2月14日付で青柳正悟事務局長代理が就任しました。これまで事務局長を兼務していた宮田謙一常務理事は、常務理事専従となります。また、小菅幸一広報部長が事務局次長を兼務します。青柳氏は朝日新聞甲府総局長、東京本社編集サポート部長などを歴任しました。

(2013/02/14)

第14回「朝日のびのび教育賞」

「ベルマーク賞」に北海道千歳市立末広小学校
アイヌ文化を実体験、共生社会を夢見て

 多様な教育活動に光をあて、豊かな心と生きる力を伸ばす素晴らしい試みを表彰する第14回「朝日のびのび教育賞」(朝日新聞社主催、ベルマーク教育助成財団後援)の受賞団体が決まりました。
 受賞したのは、千歳市立末広小学校(北海道)、網地島ふるさと楽好(宮城)、栃木県立栃木農業高校環境科学部地域おこしプロジェクト班、NPO法人「地域学習プラットフォーム研究会」(富山)、NPO法人「なはまちづくりネット」(沖縄)の5団体です。
このうち千歳市立末広小学校(秋沢裕校長、482人)には「ベルマーク賞」が贈られます。ベルマーク賞は、子どもたちが主体となって助け合いの活動に取り組んでいる学校に贈られます。
 末広小は、先住民族であるアイヌ民族の文化を学び、地域のアイヌ文化の継承者とともに、遊びや歌、道具作り、収穫、料理などを体験して、自然を敬い命の大切さを重んじるアイヌ文化を学んでいます。6年生は差別の歴史も教わり、人権についても考えます。異なる民族が理解しあい、ともに生きる社会を作っていくことをめざしています。こうした実践を1993年から地道に続けてきたことが高く評価されました。
 末広小には、空き教室にアイヌ民族の伝統民家「チセ」が建てられています。先生もアイヌ文化に関心が高まり、知識が増えていきます。先生には転勤がありますが、研修を続けて活動は引き継がれています。
 「ベルマーク賞」の贈呈式は2月22日、同校で行われる予定です。正賞の盾と、財団から副賞の活動奨励金50万円が贈られます。

(2013/02/04)

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