 「ベルマーク理科実験教室」が、11月12日と13日の両日、初めて世界遺産の島・屋久島を訪れました。「実験名人」出雲科学館の曽我部國久館長が「サイエンスマジックショー」を出前したのは、鹿児島県屋久島町の永田小学校、小瀬田中学校(12日)、栗生小学校(13日)の3つの小中学校。島の中央部はたくさんの屋久杉がそびえる昼なお暗い山地、道路は海岸部分を回る一本道のため、同じ島内とはいえ、永田、小瀬田、栗生の3地区間の交通はとても至便とはいえず、「1カ所集中開催は無理」。そこで、3校での分散開催となりました。
曽我部さんが館長をしている出雲科学館で行っている「ものづくり・実験教室 子ども科学学園」の謳い文句は、  「ノーベル賞をめざせ!」。「ノーベル賞が取れる人材を育てるためには、子どものうちから『科学って面白いな』という興味を持ってもらう必要がある。これまで、手弁当で日本全国800ヶ所以上に実験教室を出前してきたのは、そのため」という曽我部さんの思いは熱いし、真剣です。
今回も、「実験材料作りに、2日間徹夜しました。さらに各校でそれぞれ1時間から1時間半の事前準備、後片付けにも30分から1時間はかかる。それを2日間で3ヶ所こなす」というハードスケジュール、朝寝坊はもちろん、昼食をとる時間的余裕もありません。「それでも、島の子どもたちに、科学実験を見せてやりたい」という曽我部「名人」のアツき思いが、3カ所開催を実現させたのです。
「名人」を迎えたのは、永田では小学生27人、中学生14人、幼稚園児8人、  小瀬田では中学生18人、小学生14人、栗生では小学生ばかり24人。「とにかく自然の豊かな島。そんな素晴らしい自然の中で子どもたちを育てたい」という全国の親たちの要望に答えて、永田、栗生では留学制度を設けていますが、永田ではうち12人(小学校9人、中学校3人)、栗生ではうち4人が、北海道や東京、大阪、京都などからの「留学生」。「中には家族で移住してきたケースもありますが、ほとんどが近くに住む里親に預けられ、そこから通学している」といいます。
全国的に見ても、「最多雨量地区」だけに、両日とも雨催(あめもよ)い。しかし、これまでテレビ以外では見たこともない科学実験が始まると、子どもたちはそんなうっとうしさを忘れたかのように、驚きと笑いの連続。液体窒素に漬けたボールを床にぶつけると一瞬のうちに割れてしまったり、カチカチに凍った花の花びらを手で揉むとばらばらに崩れたり・・・そんな実験を目を丸くしながら見た後は、子どもたち一人ひとりが液体窒素で凍らせたマシュマロを試食したり、ヘリウムガスを吸い込むと「声変わり」する不思議で楽しい体験もしました。
最後は、例によって「万華鏡づくり」。「名人」のいかにも教育者らしい厳しい指導に、今度は涙を浮かべる子もいましたが、  自分の手だけで完成させた「万華鏡」をのぞき込んだ子供たちからは一斉に、「うわ〜奇麗!」の歓声。今泣いたカラスがテレながら笑っていました。
「名人」にとって唯一残念だったのは、「島に良質なドライアイスがなく、それを使った実験が出来なかった」こと。「良質なドライアイスがあれば、こどもたちに、液体が美しい七色に変わるところを見せてやることができたのに。ドライアイスくらいあるだろうと思い込んだのが、失敗でした」と悔やむことしきり。失礼ながら、「弘法にも筆の誤り」「サルも木から・・」のことわざを思い出してしまいました。
それでも、3カ所ともこどもたちは十分に「科学実験」を楽しんでいたよう。「科学」に興味を持ってもらえたのでは、と期待したいところですが。
《写真上から》
・「科学実験」に見入る子どもたちは興味津々=鹿児島県屋久島町永田小で
・自分の手で作り上げた「万華鏡」を覗き込む子どもたち=同小で
・中学生に混じって、液体窒素で花びらの冷凍実験に挑戦=小瀬田中で
・「液体窒素に風船を入れたらどうなる? 空気が無くなったの?」と子どもたちに質問をぶつけながら実験をする曽我部さん=栗生小で(同小提供)
(2009/11/27)
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