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7人みんな絵が好きになったよ 和歌山県新宮市高田小でお絵かき教室

喜田川さんが4歳のときに描いたという絵を見る子どもたち 児童数が全校で7人という和歌山県新宮市立高田小学校(南武校長)で10月22日、ベルマーク運動からのプレゼント「お絵かき教室」が開かれました。講師は、ベルマーク新聞の漫画「ベルちゃん」を描いているイラストレーターの喜田川昌之さん。工夫を凝らした指導に子どもたちの笑顔が広がり、周囲の山々に歓声が響きました。
 毎年数回、喜田川さんが全国各地のへき地校を訪問する教室は2002(平成14)年度に始まり、今年で8年目です。2〜3時間の間にさまざまなテーマの授業を展開していますが、今年度から新しく「感字絵」を加えました。「漢字」と「感じ」を組み合わせた絵の意味で、一つの漢字を土台に、その字から連想される事象を組み合わせて描きます。
 高田小の構成は1、3年生が各1人で、4年生以上が5人。低学年の子が理解できるかどうか心配されましたが、1年生の榎本怜君は「大」の字を選び、袋の中の品物を手で触りながら、想像で描きました富士山やゾウなどの絵を描きこんでいました。また3年生の榎本恵君は「本」の字で、画面いっぱいに本棚を展開しました。4年生の今井誠也君は「夏」、仲桃子さんは「木」、5年生の久保拓登君は「森」の字を選び、6年生は上住夏南さんが「春」、仲麻美さんが「山」。それぞれ自然の風物や花々、虫、遊ぶ子どもの姿などを上手に組み合わせていました。喜田川さんは「みな感性がいい」と感心していました。
 授業の最初は、喜田川さんが4歳のときに描いた家族や動物の絵を見せ、子どもたちの緊張をほぐすところから始めました。次いで両脇から手を入れられる黒い布袋を渡し、手触りだけで中の物を想像して絵を描かせます。どんな色かも想像します。入っていたのは、1回目はタワシや砂時計、やかんなど、2回目はリンゴやニンジン、レンコン、ゴーヤなど。実際に見るよりも集中するため、上手に描くことができました。
 最後は、2枚のイラストによるアニメーション作り。一部分を変えた2枚の絵を繰り返し見せることで動いて見えるようにする基本的なアニメを子どもたちに作らせるもので、これも低学年には少し難しい内容でした。しかし、怜君は物怖じすることなく挑戦し、元気いっぱいに何点ものアニメを仕上げていました。
仲麻美さんの「山」を描いた「感字絵」 教室は、2時限目から午前中いっぱいかけて行われましたが、子どもたちは休み時間も惜しんで、給食開始ぎりぎりまで作品づくりに取り組みました。最後は喜田川さんを囲み、自分の作品を掲げて記念撮影。全員、これまで以上に絵が好きになりました。
 同小のある高田地区は、川の熊野古道と言われる熊野川と、その支流の高田川に沿って新宮市街地から車で20分ほどの渓谷にあります。戦後間もない頃は1200人近い人口でしたが、近年は過疎化が進み、350人余まで減少しました。1877(明治10)年開校の歴史を誇る同小の児童数も減少し、最近10年間は20人以下で推移しています。
 「家族的で、子ども同士の関係が密なのはいいのですが、お互いに切磋琢磨(せっさたくま)するという点では難点があります」と南校長。社会性を育てる授業に力を入れ、昨年度は県職員や電力会社員を招いて「出前授業」を実施しました。今年度は高学年が熊野古道を調べ、熊野三山の宮司の話を聞いているほか、中学年は市の水道や消防の事業所を訪ね、1年生は電車の切符を買って実際に乗車する体験をしました。
コーチを囲んで記念撮影。


《写真上から》
・喜田川さんが4歳のときに描いたという絵を見る子どもたち
・袋の中の品物を手で触りながら、想像で描きました
・仲麻美さんの「山」を描いた「感字絵」
・自分の作品を掲げた全校生7人が、喜田川さんを囲んで記念撮影=いずれも和歌山県新宮市の高田小学校で

(2009/10/27)

山あいの村で長野県初の走り方教室 天龍中、カレー粉づくりにも挑戦

コーチを囲んで記念撮影。
 長野県天龍村の天龍中学校(中島千明校長、31人)で10月21日、ベルマーク走り方教室が開かれました。快晴の秋空の下、地元の人たちも参加、子どもたちは元気いっぱいに走り回り、心地よい汗をかいていました。終わった後は、協賛会社エスビー食品の協力で、オリジナルのカレー粉づくりにも挑戦しました。
ボールをバトンにリレー 走り方教室は2002年から始まり、天龍中が32校目ですが、長野県で開かれるのは初めてです。コーチは、NPO法人ニッポンランナーズのヘッドコーチ、齋藤太郎さんとソウル五輪1万メートル代表でエスビー食品社員、遠藤司さんの2人です。2人はともに早稲田大学競走部の出身で、これまでもコンビを組んで各地の走り方教室で指導してきました。
 まず体育館で、遠藤さんがオリンピック代表になるまでの紆余曲折のエピソードを交えて「夢は大きく高く持って挑戦することが大事です。必ずかなうとは限らないけれど、皆さんの財産になります」と話しました。この後、準備運動からスタートして、実技に入りました。
 グラウンドでは、齋藤さんが黒板を使って、良い姿勢、悪い姿勢の図を見せながら走る上で大事な基本を解説。四角い枠が連続するラダーと呼ばれる道具を使って、正しい姿勢で走るためのいろいろな練習に挑んだ。「足だけじゃなくて、腕の振り方にも気をつけて」。齋藤さんのかけ声で、生徒と一緒に走る遠藤さん(左)。中央が齋藤さん。子どもたちはだんだん難しくなる走り方に懸命に取り組んでいました。このほか新聞紙を胸に置いて落とさないように走ったり、ボールをバトン代わりにしたりするリレー形式の練習もありました。最後は、再び体育館に戻り、この日学んだことを世界のトップ選手が実際に走る映像を見ながら確認して終わりました。
 天龍村は長野県の最南端にあり、天竜川沿いの山あいの村です。1951(昭和26)年頃には8000人だった人口が、現在は約1800人になり、65歳以上の高齢者の割合が52%になっているそうです。子供たちも減る一方で、天龍小学校の児童も38人になっています。中島校長は「だからこそ今、大人も子供も一緒に活動できる、学校を中心にした総合スポーツクラブを育てて盛り上げたい。今回のベルマーク走り方教室などが、そのいい刺激になると思います」と話していました。
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 生徒たちは、走り方教室の後、エスビー食品勤務の遠藤さんの指導で「オリジナルのカレー粉づくり」に挑戦しました。「走るには健康でないといけません。においをかぎながらカレー粉づくり=いずれも長野県天龍村の天龍中学校でそれには食べることも大事ですよ」と、食育の一環としての試みです。
 並んだ12種類のスパイスを1つずつ、決められた分量で入れていくだけですが、目分量のため、それぞれ違うカレー粉になるそうです。「1つずつのにおいをかいでみてください。いいにおいじゃないでしょ。それがいろいろ混ぜ合わせて、フライパンで軽く煎(い)って、1カ月ほどすると、香りのいいカレー粉ができます」という説明に、それぞれのスパイスに鼻を近づけては「わあー、臭い」「変なにおい」と声をあげていました。

《写真上から》
・コーチを囲んで記念撮影。
・ボールをバトンにリレー
・生徒と一緒に走る遠藤さん(左)。中央が齋藤さん。
・においをかぎながらカレー粉づくり=いずれも長野県天龍村の天龍中学校で

(2009/10/02)

「感字絵」やアニメ作りに挑戦 山形県牛房野小でお絵かき教室

 山形県尾花沢市の牛房野(ごぼうの)小学校(渡辺尚樹校長、10人)で9月30日、ベルマーク財団のお絵かき教室が開かれました。喜田川さんの作品説明を真剣に聞き入っています講師はベルマーク新聞の4コマ漫画「ベルちゃん」でおなじみのイラストレーター喜田川昌之さん。子どもたちはいつもとは違ったお絵かき体験やアニメーション作りを2時間たっぷり楽しみました。
 1年生から5年生まで全校児童10人がそろって参加しました。最初の「さぐり絵」は、袋の中のものを手探りで想像しながら描きます。「チクチクしていて、ブラシみたいだ」「これはきっとアレだ」。布製の袋の左右の口から両手を入れて、触った感じだけで正体を想像し、思い思いに叫んでいました。色も想像でつけていきます。「見えないことでかえって気持ちが集中できる。何度も触って興味を持った部分から書き始めるといいよ」と喜田川さん。子どもたちは明るい歓声を上げて大胆に、または細かいところまでしっかりと絵に仕上げていきました。袋に入っていたのは、タワシ、ジョウロ、砂時計、茶こし、などでした。2回戦は野菜・果物に全員で挑戦です。ゴーヤの質感を生き生きと描いたのは今野隆晴くん(5年)。「見ないで描くのは難しかったけど、とっても面白かった」そうです。レモン、リンゴ、ニンジン、レンコンも、みんなしっかり描けていました。
 次に、この教室初めての企画、漢字からイメージを膨らませていく「感字絵」に取り組みました。ひとつの漢字のまわりに心に浮かんだ景色を描いたり、字の一部を何かに見立てて描くことで、絵と文字が溶け合った楽しい作品が生まれます。テーマの字は自由選択。「うさぎさんの耳、動いたよ」アニメに驚く佐藤日向子さん(1年)「大」「犬」「木」「元」などの易しい字のほかに、「泳」「金」などの画数の多い字を選んだ子どももいました。自分の名前の1字「咲」にチャレンジしたのは大類美咲さん(2年)。「きれいな花や小さな家を描いて、明るくかわいい絵になりました」とうれしそうです。象、クジラ、小鳥、タコなどの動物たちのほか、木の根、小川、地球などの自然や、元気いっぱいの友達や先生方などが登場しました。「木」の左払いの一画を小川の流れに見立てたのは結城沙耶さん(4年)。牛房野の豊かな自然の匂いが感じられる作品に仕上がりました。佐藤永一くん(3年)は、波間に船を浮かべ、潮を吹くクジラで大海原を表現するスケールの大きな絵を描きました。「皆さん、目をつけるところがとてもいいですね。飾りに選んだ絵柄から、その人が大事にしたいものが見えてきます」とは喜田川さんの言葉です。
 最後はアニメに挑戦です。たった2枚の絵を交互に見せることで、意外なほど動きが出てきます。まず先生の見本を模写して動きの見え方を確認し、そのあとで自分なりの絵で簡易版のアニメーション作りを体験しました。まき割り、鳥のさえずり、大きな笑顔、流れ星などのアイデアが生まれました。志村崇斗くん(2年)は「アニメで口を開ける動きがうまく出来て、うれしかった」とのこと。動きを見せるには、動かない部分をきちんと書き込むのがいいそうです。
 「絵には唯一の正解はありません。皆さんの心が表れるのが絵で、どれもが正解です」という喜田川さんの言葉で、2時間のお絵かき教室は終了しました。子どもたちが作品作りで見せてくれた素直な明るさと人懐っこさが、とても印象的でした。
作品を掲げる全校児童。喜田川さんを囲んでみんな笑顔です=いずれも山形県尾花沢市の牛房野小学校で
 牛房野小のある尾花沢市の牛房野地区は「ほたるの里」と呼ばれています。同校にはゲンジボタルの飼育水槽があり、廊下には生育記録が張ってありました。6月ごろには学校の周りが幻想的な灯りに包まれるそうです。また、尾花沢市はスイカの産地として全国的に有名で、花笠踊り、花笠音頭の発祥の地でもあります。自然環境は素晴らしく、学校と地域の人たちとの交流が盛んで、子どもたちも元気いっぱい。「保健室はほとんど使わないんですよ」と渡辺校長。
 同小は1874年(明治7)年創立で、今年で135周年という長い歴史がありますが、児童数が増えず、残念ながら来年3月で閉校になることが決まっています。来春からは尾花沢小にバスで通うことになるそうです。
 喜田川さんをはじめ大人たちは、お絵かき教室を通じて子どもたちから元気をもらいました。学校を引き上げるときは、別れを惜しんで全員と握手やハイタッチ。子どもたちは、少し車を追いかけながら、長い間手を振って見送ってくれました。

《写真上から》
・喜田川さんの作品説明を真剣に聞き入っています
・「うさぎさんの耳、動いたよ」アニメに驚く佐藤日向子さん(1年)
・作品を掲げる全校児童。喜田川さんを囲んでみんな笑顔です=いずれも山形県尾花沢市の牛房野小学校で

(2009/10/02)
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