山形県尾花沢市の牛房野(ごぼうの)小学校(渡辺尚樹校長、10人)で9月30日、ベルマーク財団のお絵かき教室が開かれました。  講師はベルマーク新聞の4コマ漫画「ベルちゃん」でおなじみのイラストレーター喜田川昌之さん。子どもたちはいつもとは違ったお絵かき体験やアニメーション作りを2時間たっぷり楽しみました。
1年生から5年生まで全校児童10人がそろって参加しました。最初の「さぐり絵」は、袋の中のものを手探りで想像しながら描きます。「チクチクしていて、ブラシみたいだ」「これはきっとアレだ」。布製の袋の左右の口から両手を入れて、触った感じだけで正体を想像し、思い思いに叫んでいました。色も想像でつけていきます。「見えないことでかえって気持ちが集中できる。何度も触って興味を持った部分から書き始めるといいよ」と喜田川さん。子どもたちは明るい歓声を上げて大胆に、または細かいところまでしっかりと絵に仕上げていきました。袋に入っていたのは、タワシ、ジョウロ、砂時計、茶こし、などでした。2回戦は野菜・果物に全員で挑戦です。ゴーヤの質感を生き生きと描いたのは今野隆晴くん(5年)。「見ないで描くのは難しかったけど、とっても面白かった」そうです。レモン、リンゴ、ニンジン、レンコンも、みんなしっかり描けていました。
次に、この教室初めての企画、漢字からイメージを膨らませていく「感字絵」に取り組みました。ひとつの漢字のまわりに心に浮かんだ景色を描いたり、字の一部を何かに見立てて描くことで、絵と文字が溶け合った楽しい作品が生まれます。テーマの字は自由選択。  「大」「犬」「木」「元」などの易しい字のほかに、「泳」「金」などの画数の多い字を選んだ子どももいました。自分の名前の1字「咲」にチャレンジしたのは大類美咲さん(2年)。「きれいな花や小さな家を描いて、明るくかわいい絵になりました」とうれしそうです。象、クジラ、小鳥、タコなどの動物たちのほか、木の根、小川、地球などの自然や、元気いっぱいの友達や先生方などが登場しました。「木」の左払いの一画を小川の流れに見立てたのは結城沙耶さん(4年)。牛房野の豊かな自然の匂いが感じられる作品に仕上がりました。佐藤永一くん(3年)は、波間に船を浮かべ、潮を吹くクジラで大海原を表現するスケールの大きな絵を描きました。「皆さん、目をつけるところがとてもいいですね。飾りに選んだ絵柄から、その人が大事にしたいものが見えてきます」とは喜田川さんの言葉です。
最後はアニメに挑戦です。たった2枚の絵を交互に見せることで、意外なほど動きが出てきます。まず先生の見本を模写して動きの見え方を確認し、そのあとで自分なりの絵で簡易版のアニメーション作りを体験しました。まき割り、鳥のさえずり、大きな笑顔、流れ星などのアイデアが生まれました。志村崇斗くん(2年)は「アニメで口を開ける動きがうまく出来て、うれしかった」とのこと。動きを見せるには、動かない部分をきちんと書き込むのがいいそうです。
「絵には唯一の正解はありません。皆さんの心が表れるのが絵で、どれもが正解です」という喜田川さんの言葉で、2時間のお絵かき教室は終了しました。子どもたちが作品作りで見せてくれた素直な明るさと人懐っこさが、とても印象的でした。
牛房野小のある尾花沢市の牛房野地区は「ほたるの里」と呼ばれています。同校にはゲンジボタルの飼育水槽があり、廊下には生育記録が張ってありました。6月ごろには学校の周りが幻想的な灯りに包まれるそうです。また、尾花沢市はスイカの産地として全国的に有名で、花笠踊り、花笠音頭の発祥の地でもあります。自然環境は素晴らしく、学校と地域の人たちとの交流が盛んで、子どもたちも元気いっぱい。「保健室はほとんど使わないんですよ」と渡辺校長。
同小は1874年(明治7)年創立で、今年で135周年という長い歴史がありますが、児童数が増えず、残念ながら来年3月で閉校になることが決まっています。来春からは尾花沢小にバスで通うことになるそうです。
喜田川さんをはじめ大人たちは、お絵かき教室を通じて子どもたちから元気をもらいました。学校を引き上げるときは、別れを惜しんで全員と握手やハイタッチ。子どもたちは、少し車を追いかけながら、長い間手を振って見送ってくれました。
《写真上から》
・喜田川さんの作品説明を真剣に聞き入っています
・「うさぎさんの耳、動いたよ」アニメに驚く佐藤日向子さん(1年)
・作品を掲げる全校児童。喜田川さんを囲んでみんな笑顔です=いずれも山形県尾花沢市の牛房野小学校で
(2009/10/02)
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