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自作の万華鏡のぞいて「わぁ〜奇麗!」 根室市花咲港小学校で実験教室

 9月14日、「本土最東端のまち」北海道根室市の市立花咲港小学校(佐藤弘樹校長)で、今年初めての実験名人ベルマーク「理科実験教室」が開かれました。零下193度の液体窒素にマシュマロを漬けたらどうなるか? 楊枝に刺して5秒間漬けて・・・こわごわ口に入れた子は、「冷たくて、とっても美味しかった。もう一つ食べてもいい?」「生徒数130人規模を想定して、1989(平成元年)年に完成した」という校舎は大きくて立派ですが、ここにも過疎化の大波が押し寄せているらしく、1973(昭和48)年度に294人が在籍したのをピークに生徒数は年々減少。今は、わずか16人(1年4人、2年2人、3年3人、4年4人、5年3人、6年ゼロ)。しかも、うち1人はロシア人の男の子、「少人数教育を受けたい」と学区外から来ている子が2人。「1、2年組」「3、4年組」「5年」の3クラスに分かれ、6人の先生の指導を受けています。
 「根室市もご他聞に漏れずの財政難で、18ある小中学校の統廃合が話題になっています。でも、『少人数だからこその良さ』もあるハズ。今はそれを徹底したいと思っています」と、佐藤校長(56歳)。「この『理科実験教室』をお招きしたのも、その一環です」。
 この日の講師は、島根大学名誉教授で「出雲科学館」館長の曽我部國久さん。ベルマークの「理科実験教室」ではすっかり有名ですが、「個人的には全国の小学校でこれまで850回ほどやったかな。優秀な理系大学志願者探しで高校回りした折、高校生では遅すぎる、小学生段階で科学に興味を持ってもらわないと、ノーベル賞受賞者を生み出せないなと痛感。それがキッカケで始めました。あの『でんじろう』は、弟子のようなものです」と、曽我部さん。
 66歳というのに、元気、元気。この日も会場となる体育館で、「実験教室」の始まる2時間前から準備開始。まずは、「宅急便で送っておいた」大き目のダンボール箱6個を次々と開いて荷物の点検。「大物」は、電子レンジ、ヘリウム入りボンベ、液体窒素入りボンベなど。ゴム風船にヘリウムや水素、空気を詰めて膨らませ、それらを並べたあとは、さまざまな小道具を机の上に。風船、バナナ、ジャイロボール、マシュマロなどなど・・・机の上はたちまち「おもちゃ箱をひっくり返した」ようになりました。
 こうした小道具を使って、何をするのか? ――それは、実際に見てのお楽しみ。
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 午前10時から始まった「実験教室」には、ロシアに帰国中の1人を除く15人の生徒全員が参加。何が始まるのか興味津々の生徒を前に、まず曽我部さんが披露したのは「液体窒素マジック」。「万華鏡作りは、鏡の合わせ具合が肝心。先生の言うとおりにやりなさい!」。曽我部先生の厳しい言葉に、ビニールテープにハサミをいれる顔も真剣そのもの液体窒素入りのビーカーに漬け込むとバナナはたちまちカチカチになり、校庭で摘んだ花は手で揉むとバラバラに――それを見せたうえで、曽我部先生はおもむろに聞きます。「この中にはマイナス193度の液体窒素が入っています。ハイ、この中に手を入れる勇気のある人いますか?」。
 ほとんどの子がひるむ中、曽我部さんが指名した子に手を突っ込ませてみせて、「ほら、大丈夫!」。子供たちからは「えっ、うっそ〜」の声。そこで曽我部さんは「3秒以内なら液体窒素の中に手を入れても大丈夫なんです。誰かやってみたい人?」。
 今度は数人から手が上がるが、「他人がやってみて大丈夫だったから、自分もやってみたいではダメ。何にでも興味を持って、率先して挑戦してみることが大切なのです」。曽我部さんにとって、「理科実験」は理科教育の小道具なのです。
 以下、ヘリウムガスを吸っての「声変わり」を体験させたり、水素ガスを詰めた風船に火を着けて大音響を発生させたり、水満杯のコップに紙でフタをして水がこぼれないようにひっくり返したり。子どもたちから「えっ、なんで〜」「うわっ、驚いた」「えっ、ほんとう」と驚きの声があがったあとで、曽我部さんは一つひとつ「科学のなぞ」を解いてみせるのです。
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 そして最後は、「万華鏡作り」。参加者全員が一人一つずつ、万華鏡の自作に挑戦です。まだ幼稚園気分の抜けきらない1年生もいますから、作業は遅々として進みませんが、いよいよ完成した万華鏡を初めてのぞく。口々に、「わぁ〜、奇麗!」の歓声が漏れます。およそ1時間かけて、自分だけの手で作り上げただけに、喜びもひとしお=いずれも根室市立花咲港小学校で曽我部さんの厳しい指導は続きます。「人の言うことをちゃんと聞きなさい!」「他のことに気をとられているから、ちゃんと出来ないんだ!」「アンタ、なんで人の話を聞かないの!」・・・。
 万華鏡一つ作らせるのに、なんでこれほど厳しくするのか――それは、全員が完成させた後で分かります。「完成したら、穴からのぞいてごらん」と曽我部さん。子どもたちからは一斉に「うわぁ〜奇麗!」と歓声が上がります。そこで曽我部さんが言います。「この万華鏡は一つとして同じものが無いように作ってあります。あなたにとって『世界でただ一つの万華鏡』なのです。次に、隣の人と交換して覗いてごらんなさい。どっちが奇麗かな? 隣の人の万華鏡の方が奇麗だと思えても、そんなことを気にすることはありません。人も同じ、性格や能力は人それぞれ違うけれど、どこかで花を咲かせればいいのです。それを実現するために君たちは学校に来ている。失敗することを恐れるな。間違うのも勉強。そうして勉強すれば、この万華鏡のように、君たちの人生はバラ色です。頑張って下さい」。
 「実験教室」はスタートから2時間40分後に終わりました。曽我部さんが学校を発つとき、生徒たちは大幅に遅れた「給食の時間」の最中でしたが、「先生が帰られますよ」の声に全員が駆け寄り、見送ってくれたのでした。「少人数教育って良いいな」と感動した一瞬でした。
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 小学生には、「少人数教育」がいいか?「多人数教育」の方が望ましいのか? 「(少人数の方が)児童一人ひとりの個性や性格に応じた教育ができる」というのにも頷けるし、「少人数だと内気で消極的な子供が育ちがち。いずれ『多数』の中に入らざるを得ないのだから、早く慣れておいた方がいい」という意見にも説得力がある。さて、当の子供たちにとって、本当にいいのはどちらか?――そんなことを考えさせられた一日でした。

《写真上から》
・零下193度の液体窒素にマシュマロを漬けたらどうなるか? 楊枝に刺して5秒間漬けて・・・こわごわ口に入れた子は、「冷たくて、とっても美味しかった。もう一つ食べてもいい?」
・「万華鏡作りは、鏡の合わせ具合が肝心。先生の言うとおりにやりなさい!」。曽我部先生の厳しい言葉に、ビニールテープにハサミをいれる顔も真剣そのもの
・いよいよ完成した万華鏡を初めてのぞく。口々に、「わぁ〜、奇麗!」の歓声が漏れます。およそ1時間かけて、自分だけの手で作り上げただけに、喜びもひとしお=いずれも根室市立花咲港小学校で

(2009/09/25)

熱心な指導と懸命な練習で上達
          福島県金山小学校で一輪車講習会

リズミカルな曲に合わせての、浮谷さんの模範演技です JRの只見線沿いに延々と続く濃い緑の林を抜けると、黄色になって収穫を待つ稲田が見えてきました。
 今度の一輪車講習会の会場は、新潟県境の福島県金山町。面積の90%が森林という緑豊かな町ですが、人口は減少の一途をたどり、50年前1万人あった人口は4分の1ほどに減って、高齢化が進み、65歳以上の町民は54%にもなっているそうです。手すりにつかまって、少しでも前進ですかつて8校(このほかに分校が2校)あった小学校も2校になってしまいましたが、3日朝、町立金山小学校(高橋賢司校長、児童48人)を訪ねると、佐藤博美教頭や子供たちが、明るい笑顔で迎えてくれました。
 同校は、一輪車が盛んで、体育館での挨拶のときから、どんな講習会になるのか、子供たちの目がきらきらと輝いていました。これに応えるように、全国大会でも優勝経験豊富なインストラクター浮谷奈菜さんが、リズミカルな曲に合わせて模範演技。アイドリングも背筋を伸ばしてね一輪車に乗りながらの連続縄跳びには、みんなビックリしていました。続いて津田稚奈さんの優雅な模範演技、最後には目が回るようなスピン。この難しい技にも盛んな拍手が送られました。
 このあとは、校庭に出ての指導。補助なしでは乗れない1,2年生の10人ほどは、手すりにつかまりながら、少しでも前進しようと汗をかきながら直進の練習。それ以外の児童は、横乗り、飛び乗り、蹴り上げ乗車、アイドリングやバック走行などに挑戦していました。
校庭を軽快に走る子どもたちは笑顔です=いずれも福島県金山町立金山小で 浮谷さんと津田さんの熱心な指導と、それに懸命に応える子供たちの懸命な練習。その結果、めきめきと上達、講習会が終わるころには、それぞれがどんどんレベルアップしていきました。


《写真上から》
・リズミカルな曲に合わせての、浮谷さんの模範演技です
・手すりにつかまって、少しでも前進
・アイドリングも背筋を伸ばしてね
・校庭を軽快に走る子どもたちは笑顔です=いずれも福島県金山町立金山小で

(2009/09/10)
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