みちのくの秋は深まって、南部富士と地元で親しまれている岩手山はうっすらと雪を頂いています。この山の登山口近くにある岩手県滝沢村の柳沢中学校(阿部郁子校長、26人)で、11月11日、今年3回目の「ベルマーク走り方教室」が開かれました。

講師は元オリンピック選手の遠藤司さんと、NPO法人日本ランナーズのヘッドコーチ、齊藤太郎さんです。2人は早稲田大学競走部の先輩と後輩の間柄。遠藤さんは箱根駅伝で2年連続区間賞をとっており、現在は、勤務するエスビー食品株式会社の「ちびっ子健康マラソン」を担当。齊藤さんはお年寄りから小学生まで幅広い層にあらゆるスポーツにおける走り方を指導するスペシャリストです。
氷点下の朝は、教室が始まる9時過ぎには気温を上げて穏やかな小春日和になりました。

教室は、遠藤さんの話でスタート。「高校生になって本格的に陸上競技を目指してから走ることは楽しさ以上に苦しかったけど、本気で取り組んだことがオリンピック出場につながりました。皆さんも何かをする時は本気で取り組んでほしい」と話すと、生徒たちは真剣な眼差しで聞いていました。盛岡市で行われた「ちびっ子マラソン」に出場したという生徒もいて、講師と生徒たちはすぐに打ち解けた雰囲気に。講堂で軽いジョギングと準備体操、続くストレッチで体をほぐしてから校庭へ出て、実技に移りました。
齊藤さんは、走る基本は「姿勢」「股関節」「肩甲骨」だと生徒たちに教えます。黒板に図を描き骨格模型を使って、ひとつずつ理論的に説明した上で実際に走る練習に移るので、生徒たちにはよく分かるようです。

仰向けで上に伸ばした足をさらに上へあげると股関節の筋肉を鍛えると教えられ、トレーニングのあと走ってみると、「足が軽くなって走りやすくなった」と生徒たちはうれしそうです。ラダーを使ってリズムの取り方、手足の振り方や上げ方などを習っていると、リズムが乱れてピタッと動きが止まった生徒に、周りから「頑張って!」と声援が飛ぶ光景も。2人1組で相手の動作に機敏に反応したり、後ろ向きから走り出す短距離走など、多彩な練習に生徒たちは笑顔いっぱいで取り組んでいました。
最後に遠藤さんが「長距離は練習しただけ早く走れるようになるので、これからも頑張ってトレーニングに励んでください」とアドバイス。齊藤さんは「皆さんの上達が早いうえ、走るのには股関節が大切だ、と言い当てたひらめきに驚きました」と話していました。

3年生の最上拓君が生徒を代表して「ありがとうございました。今日習ったことを陸上大会や部活などに生かしていこうと思います」と、お礼を述べました。
同校は小学校(39人)との併設校。休み時間には、小学生がベルマーク運動から贈られた一輪車を元気いっぱいに乗り回していました。近くに陸上自衛隊の演習場があるため、校舎は防音設備と暖房システムが整備されています。また、酪農地帯で地域が広いために上水道がなく地下水をくみ上げていますが、岩手山でろ過された水はおいしくて学校の自慢です。登校時に車で送ってもらう子どもたちが多く、「都会の子どもより軟弱なのでは」と先生たちは心配しますが、昨年度のスピードスケート東北大会で5000メートルに1位、今年は卓球の岩手地区新人大会で女子団体1位など、生徒たちは対外試合でも大活躍しています。
《写真上から》
・齊藤さんの後についてハードルで身体を慣らす生徒たち
・足を上げ手を振って走るリズムを習う生徒。後には雄大な岩手山が間近見えました
・遠藤さんと一緒に短距離走。生徒たちは力いっぱい走っていました
・気持ちよい汗をかいた後は全員で記念写真=いずれも岩手県滝沢村柳沢中学校で
(2008/11/28)
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