◆◆◆ 海外援助特集 ◆◆◆



記事目次


■ 屋根のある幼稚園ができた   カンボジア
財団法人日本ユニセフ協会
■ 村に初めての女子寺子屋  アフガニスタン
社団法人日本ユネスコ協会連盟
■ 歌や劇、ゲームで楽しい保健教育    東ティモール
特定非営利活動法人「シェア=国際保健協力市民の会」
■ 奨学金贈りトラウマ研修も   インドネシア
財団法人ジョイセフ(家族計画国際協力財団)
■ 「つるのおんがえし」が好き  ラオス
社団法人シャンティ国際ボランティア会(SVA)
■ 植林し水やり、草刈り楽しみ    スリランカ
財団法人オイスカ
■ 本を読み国語の力がついた ラオス
特定非営利法人「ラオスのこども」


屋根のある幼稚園ができた   カンボジア

財団法人日本ユニセフ協会
 今年7月末、カンボジア中部コンポントム州サンコールコール村に幼稚園の園舎が出来ました。さび止め処理をしたトタン屋根に柱6本、コンクリートの基礎の上にレンガを置き、ビニールシートを敷いています。広さも26平方メートル程度ですが、これまでは建物すらなく、雨が降ると休み、という状態だったので子どもや親も大歓迎です。先生が研修で覚えた折り紙がつり下げられた園舎には、20人の子どもが通っています。
  国造りが進んでいるカンボジアですが、貧困のため子どもたちの健康・保健状態が悪く、東アジア・太平洋地域では子どもの死亡率が最も高いところです。先生たちは、幼稚園でゲームや歌を教え、話を聞かせたりして、読み書きの基礎を身につけるように指導すると同時に、トイレの後は手を洗う、などの歌を教えることで基本的な衛生教育もしています。
  「たくさん新しい友達ができた」(北部のオッダルミンチェイ州の5歳の男の子)、「建物が出来たので、多くの親が幼稚園での教育に真剣に取り組むようになりました。将来、トイレと井戸が出来ればありがたい」(同州の幼稚園の先生)などという声が届いています。
  日本ユニセフ協会は、カンボジアの6州の598の農村の3〜5歳の子ども約1万2500人を対象に、幼稚園支援事業をしており、2006年には、114カ所で幼稚園の園舎を建設、うち81の幼稚園では運動場が併設され、ブランコや滑り台も出来ました。この他、先生や担当公務員の研修や、親のための幼稚園説明会を開いたりしています。
  ユニセフ(国際連合児童基金)は、子どもたちの命と健やかな成長を守るため世界各地で活動しており、日本ユニセフ協会は、それを支えるための募金、広報など様々な活動を行っています。

<写真上> 折り紙がつり下げられた幼稚園で歌を歌う子どもたち
<写真下> 出来上がった屋根のある幼稚園=いずれもサンコールコール村で


村に初めての女子寺子屋  アフガニスタン

社団法人日本ユネスコ協会連盟
 アフガニスタンの首都カブールから北にあるパルワン県センジット・ダラ村に、6月末、女の子のための初めての寺子屋が開校しました。テントで夏の強い日差しを避けていましたが、村人の強い要望で、屋根のある焼いたレンガ造りの建物が出来ました。同国では女子教育への理解がないところがまだ多く、村の女性の識字率はほとんどゼロ。公的な場に女性が出席することもなく、開校式典に参加したのも男の長老ばかりだったそうです。
  世界遺産のあるバーミヤンでは、2つの村で識字教室が開かれ、250人の子どもや女性たちが読み書きを学んでいます。同国ではなお戦闘やテロが絶えず、不安な状況が続いていますが、支援をしている日本ユネスコ協会連盟では「寺子屋を通じた教育が平和の一歩になれば」と話しています。
  この他、カンボジアでは、昨年9月、世界遺産アンコールワットのあるシェムリアップ州チョンクニア村に湖に浮かぶ水上寺子屋が完成し、識字教室2クラスが始まっています。インド南西部カルナータカ州ベルガウム県では、2002年から45の村で始まった寺子屋運動により、32村で寺子屋が出来、5年間で約9000人の子どもが教育を受けました。このうち635人を公立の学校に編入することが出来たそうです。学校に行く機会がなく、読み書きが出来ない女性には18日間の識字の集中講座が開かれ365人が参加しました。一方、寺子屋に集まる貧しい村の女性たちが自助グループを作り、貯蓄や小口融資を受け、水牛のミルクを売ることなどで収入を増やしており、その結果、これまでより発言力が増し、立場が尊重される状況も出てきているそうです。
  日本ユネスコ協会連盟は、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の民間活動を推進することを目的に設立されたNGOで、世界寺子屋運動の他、世界遺産活動、青少年育成など多岐にわたる活動をしています。

<写真上> 村で初めての女子寺子屋に集まった生徒=アフガニスタンのセンジット・ダラ村で
<写真下> 水上寺子屋の前に集まった子どもたち=カンボジアのシェムリアップ州で


歌や劇、ゲームで楽しい保健教育    東ティモール

特定非営利活動法人「シェア=国際保健協力市民の会」
 「シェア=国際保健協力市民の会」は、アジア・アフリカの開発途上国で住民の健康改善やエイズに取り組んでいる保健医療専門のNGOで、現場に日本人の専門家を長期間派遣し様々なプロジェクトをしています。また在日外国人への出張医療相談など日本国内でも活動しています。
  その一つが「東ティモール保健教育活動」です。東ティモールは、インドネシア東部にあり、長野県ほどの広さで人口約90万人。ポルトガルの植民地、インドネシア占領を経て2002年5月に独立した21世紀最初の独立国ですが、独立反対派の民兵などにより学校、診療所などほとんどの公共施設が破壊されました。人口の半分が、川や泉、掘っただけの井戸水を飲むなど衛生状態はよくありません。子どもは風邪、下痢、マラリアなどで亡くなることが多く、5歳児未満の死亡率は出生1000人に対し61(日本は8)にもなります。出生率は世界で2番目の高さ(女性1人あたり7.79人)です。
  シェアは、東ティモール西部にある農村山岳地帯のエルメラ県で、住民に保健教育を行うため、看護師、助産師などの保健スタッフ、農村のリーダー、学校教師を対象とした「保健教育者養成研修」を2003年と04年に行ないました。06年には、こうして育成した250人により、住民ら4万1316人に対し1157回の保健教育が行われました。例えば、パネルに絵を貼り付けた芝居形式や歌で、水はわかして飲む、野菜は洗って食べる、ことなどを教えます。また保健教育者の意欲を高めるため、今年1月には、大会を初めて開き、全員に感謝状を贈り、優秀な人を表彰しました。
  東ティモールでは残念ながら小競り合いが時々ありますが、06年4月からの騒乱を受けてシェアは、首都ディリと近郊で、国内避難民キャンプでの巡回保健教育活動などを行いました。

<写真上> パネルを使って先生が子どもたちに衛生教育をしています
<写真下> 栄養ゲームをしながら、バランスの良い食生活を学んでいます=いずれもエルメラ県の小学校で


奨学金贈りトラウマ研修も   インドネシア

財団法人ジョイセフ(家族計画国際協力財団)
 インドネシアは、2004年12月に起きた大地震・大津波で、大きな被害を受けましたが、発生から2年以上たつ現在も、スマトラ島北部、西海岸などの住民の生活はまだまだ厳しい状態です。精神的な傷、トラウマ(心的外傷)を負い、立ち直れない子どもいます。アチェ州の州都バンダアチェとラングサ地区でジョイセフ(家族計画国際協力財団)が、子どもたちを励まし、勇気づけ、心の癒しと治療をする活動を現地NGOと協力して行っています。
  ひとつが、親を亡くし、義務教育を途中でやめる子どもが多いため小中学生に奨学金を贈っています。06年度は小学生20人、中学生12人の計32人に年間約1万4800円の奨学金を提供。学用品や制服などに使われています。
  また被災した小中学生が中途退学しないよう経済的に苦しい保護者を支えるのが小規模無担保融資です。説明のために、2日間の研修が2カ所で行われ、21人が参加しました。研修では、融資だけでなく母子保健や環境衛生についても話し合いが行われました。研修を受けた、5人ごとの4グループに9万2500円を貸し付けられましたが、カフェを始めたり、ケーキ作りの仕事を始めた女性たちもいるそうです。
  2年たった今も、物音におびえたり、家族が亡くなったことなどによるショックを引きずった子どもたちがいます。小学校の教師を対象に、子どもへ適切なカウンセリングを出来るよう、基礎的な研修をしています。子どもたちは、研修を受けた教師によりゲームを取り入れたりした授業を受けています。津波で心の中に大きな穴が開いたような気持ちになっていた、というアチェ州の小学校長は「研修を受けたことで、子どもたちを感情的に怒らずに、教えることが出来るようになった」と話しているそうです。
  ジョイセフは、人口、母子保健、HIV感染予防などの分野の国際協力を推進するNGOで、海外では再生自転車を草の根保健ボランティアに、不要になったランドセルをアフガニスタンの子どもたちに送る運動などを繰り広げています。

<写真上> 遊びを取り入れた小学校でのカウンセリング
<写真下> 小規模無担保融資を受けてケーキ作りの仕事を始めた女性たち=いずれもアチェ州で


「つるのおんがえし」が好き  ラオス

社団法人シャンティ国際ボランティア会(SVA)
 「家には絵本がないので図書室に来るのが毎日楽しみ。好きな絵本は『つるのおんがえし』です。結末は悲しいけど、感動しました。日本のみなさん、ありがとう」(ラオスの首都ビエンチャン市に住む11歳の女の子)。「『はじめてのおつかい』が好き。最初は字が読めなかったけど、図書室に来てだいぶ読めるようになりました。絵がきれいな日本の絵本をいっぱい読みたい」(カンボジア・バンテイミンチェイ州の10歳の男の子)。
  シャンティ国際ボランティア会(SVA)「絵本を届ける運動」にこんなお礼が届きました。同会では、日本で出版されている名作絵本に、カンボジア語やラオス語の翻訳シールを貼り付け、届ける運動をしていますが、2006年度には、日本国内の小中高等学校90校の他、企業や団体、個人が協力しました。こうして集まった絵本は、今年3月、カンボジアに1万2448冊、ラオスには3558冊が届けられました。
  カンボジアやラオスでは、絵本を初めて見る先生が多いため、先生向けに、絵本の効果や読み聞かせのやり方などを学ぶ研修会が開かれ、図書室のないところには移動図書館が巡回しています。まだ識字率が低いのですが、絵本を読むことで自然に字を覚えている例もあります。絵本は、子どもたちによってボロボロになるまで繰り返し読まれているそうです。

<写真上> 先生の読み聞かせに聞き入る子どもたち=ビエンチャン県の寺院で
<写真下> 「おおきなかぶ」の読み聞かせを子どもたちが楽しんでいます=コンポントム州で


植林し水やり、草刈り楽しみ    スリランカ

財団法人オイスカ
 「オイスカ」は農業を通じた人づくり・国づくりを目指し、アジア太平洋地域などの開発途上国で環境保全、農村開発などを推進している国際NGOです。森林の破壊が大きな環境問題となっていますが、学校単位で木を植え育てる活動を通じて、次代を担う子どもたちに森の大切さを知ってもらいながら、地球の緑化を進めよう、という運動「子供の森」計画をインド、フィリピン、バングラデシュ、ブラジル、ケニアなど世界26の国・地域で進めています。
  スリランカ(旧名セイロン)は、インド半島南東にある北海道よりやや小さい島国です。世界第3位の紅茶栽培が有名ですが、放置された紅茶畑がはげ山になったり、反政府ゲリラとの紛争が20年続き、都市部以外では、燃料材や生活用材確保のための深刻な森林伐採が進んでいます。
  こうした中、「子供の森」計画では、子どもたち自身が学校の敷地や周辺に植林。先生や近所の人たちの協力を得て水をあげたり、草を刈ったりするなど、森作りに取り組んでいます。自らの手で植え、育てるという一連の流れを実際に体験することで、森の大切さと緑を愛する心を理解してもらうよう指導しています。2006年度は33校が参加、9935本の木を植え、植林面積は8.5fに及びました。1993年のスタート以来、今年3月末までに植えた木は累計で47万本を超え、参加校は222校に上ります。友愛援助からの支援は苗木代、クワや移植ベラなどの植林用具代、ノートや鉛筆などの学用品購入にあてられています。
  子どもたちは植林活動を楽しみにし、木を植えた後も、どのくらい大きくなったのかと、よく見に行っているそうです。

<写真上> 「子供の森」計画では、子どもたちが植えた木に水やりをしたり、草刈りをします=ゴール州ウルビティケ町の学校で
<写真下> 木にぶら下がって遊ぶ子どもたち=ゴール州エダンダ町で


本を読み国語の力がついた ラオス

特定非営利法人「ラオスのこども」
 ラオスでは、子どもの本が慢性的に不足し、教育環境の整備が遅れています。多くの子どもたちは、小学校で初めて文字に触れます。が、文字の習得が大きな壁となり、授業についていけず、学校に来なくなる例も多いそうです。1年生の落第は、他の学年に比べ最も高い約30%にもなります。
  子どもたちは本が好きです。絵本の読み聞かせをすると、子どもたちがだんだん身を乗り出し、見入ってくるそうです。サイヤブリ県の小学校の先生によると、「本を読むようになって、教科書しかなかったときより、国語の力がついています。退学する子が減ってきました」ということです。
  また、地域の図書館がほとんどないので、学校図書室は村人にも開放しています。積極的な学校は、村や他校へ出向いて読み聞かせをしたり、市場でも貸し出しをしています。図書室ボランティアの生徒によると、市場で働いているおばさんたちには、恋愛物が大人気とか。家庭文庫を開いたビエンチャン県の先生は、「朝8時から夜9時まで毎日開けており、子どもも大人も来ています。大人は農作物の作り方の本を取り合うようにして借りていきます」と話しているそうです
  「ラオスのこども」は、読書推進や識字教育などを中心に子供の教育について幅広い活動を続けているNPOです。読書の習慣を広めることで、読み書きや表現力を高めようと、学校に図書袋や図書箱、図書室など状況に合わせた方法で本を届け、先生たちにも読み聞かせの仕方などの研修を行っています。2006年度末までに開設した学校図書室は161、ベルマークの友愛援助を通じて開設された図書室は昨年末で33校になりました。入口の看板には寄付をした学校名が英語で書かれ、室内には図書を寄付した学校名を書いたプレートを掲げています。また友愛援助により06年度は40校に新しい本のセットが届けられました。ラオス人作家によるラオス語の本の出版にも力を入れています。

<写真上> 出来たばかりの図書館で本を読む生徒たち=ボリカムサイ県の中学校で
<写真下> ひとつひとつの文字を声に出しながら読書する子ども=ビエンチャン県の小学校で