2022年8月号 読んでみたい本


(2022/08/10)印刷する

  

児童文学評論家 藤田のぼる

  

 昨年の7月に亡くなられた那須正幹さんを偲ぶ会が、7月14日に都内でありました。開会あいさつをした僕の画像もネットのニュースに出ていたので、ご覧いただいた方もあるかもしれません。那須さんといえば、なんといっても「ズッコケ三人組」ですが、3歳で被爆した那須さんには、『絵で読む広島の原爆』(福音館書店)などの著書もあり、ぜひこの機会に手に取っていただければと思います。

 さて、では例によって絵本から紹介を始めます。

絵本

 

『こうもり』(アヤ井アキコ・作、福井大・監修、偕成社)
 ちょっと不気味なイメージもあるコウモリですが、その生態はあまり知られていないように思います。体の重さは一円玉5枚から10枚程度ですが、一晩で体重の半分ほどの蚊などの虫を食べるといいます。哺乳類ですから、もちろん子どもはお乳で育てます。種によっては20年から30年も生きるというこうもりの暮らしぶりが、手に取るようにわかる一冊です。(低学年以上向き、1500円+税)


『バスが来ましたよ』(由美村嬉々・文、松本春野・絵、アリス館)
 病気のため失明した〈わたし〉は、1年の訓練の後、市役所の仕事に復帰しましたが、通勤のバスに乗るのが大仕事です。ある朝、「バスが来ましたよ」という女の子の声。さきちゃんというその子は、それから毎日バスの乗り降りを手伝ってくれるようになります。やがて、さきちゃんの卒業と共に妹やその友達が、後を引き継ぎます。和歌山の町で、全盲の男性が定年まで10年以上も子どもたちに助けられた実話をもとにした絵本。「バスが来ましたよ」という声が聞こえてきそうです。(低・中学年以上向き、1400円+税)


 


低・中学年向け

 

『いもうとなんかいらない』(ロイス・ダンカン作、小宮由・訳、平澤朋子・絵、岩波書店)
 メアリー・ケイには、スザンヌという小さな妹がいます。かわいいけれど、「いつでもすき」というわけにはいきません。大事なクレヨンを折ってしまったり、人形たちとのお茶のパーティをじゃましたり……。お母さんのお友達のトゥルーディおばさんに、「ペットとこうかん」をもちかけたら、いいというのです。おばさんのことが大好きなスザンヌも喜んでおばさんの家に行ってしまいます。
 ある種テッパンのストーリー展開ですが、メアリー・ケイに共感する読者は少なからずいるでしょう。「二度とスザンヌをだれかにあげようなんて、思いませんでした」というラストと共に。(低学年向き、1300円+税)


『すごいゴミのはなし ゴミ清掃員、10年間やってみた。』(滝沢秀一・文、学研プラス)
 「マシンガンズ」というお笑いコンビの芸人さんでありつつ、ゴミ清掃員を10年間続けてきたという著者。粗大ゴミで出された電子レンジに土がぎっしり詰まっていて、清掃車の3人であれこれ推理した、という話から始まります。清掃車は一日でゴミ集積場と清掃工場を6往復。一回で2トンですから、一台だけで10~12トンのゴミを処理するわけです。その量に圧倒されます。水気をしっかり切るだけで、どれだけそれが減らされるかという話にも説得力があります。
 ゴミ問題の本は結構ありますが、まさに〈現場〉からの声が聞こえてくる感じで、「すごいゴミのはなし」というタイトルに納得でした。(中・高学年以上向き、1300円+税)

 


高学年・中学生以上向き

 

『すこしずつの親友』(森埜こみち・作、講談社)
 伯母さんに「親友って、どうやったらつくれるの」と聞くと、「親友は、つくるものじゃなくて、出会うのよ」という答。「かならず出会える?」という問いには、「すこしずつの親友になら、すぐにでも出会えるわよ」と言われ、話が聞きたかったら泊まりにいらっしゃいと誘われた姪が、一晩かけて聞いた話、という設定です。七話まであって、ほとんどが旅先、それも外国で出会った人たちにまつわるエピソード。姪の〈わたし〉からすれば淡い一度限りの交流なのですが、「すこしずつの親友」という意味も、じわっと伝わってくるように思えるのです。どの話に感応するかは読者次第、そこから読者は自分の「すこしずつ」の物語を紡いでいけるでしょうか。(高学年以上向き、1350円+税)


『5番レーン』(ウン・ソホル作、ノ・インギョン絵、すんみ・訳、すずき出版)
 漢江(ハンガン)小学校水泳部エースのカン・ナルは、全国ジュニア大会の女子50メートル自由形で、ライバルのキム・チョヒに完敗します。姉の影響で早くから水泳を始めたナルでしたが、このところキムに歯が立ちません。姉のように体育専門の中学校に進めるのか……。悩みが深まるナルを中心に、幼なじみで男子自由形のスンナム、転校してきたバタフライのテヤン、中学生になって高飛込に転向した姉のボドゥルなど、それぞれの思いが交錯します。韓国の小学校の「部活」事情は日本とはかなり違うようで、スポーツもののおもしろさに加えて、ナルとスンナム、テヤン、さらにはキム・チョヒをめぐる「恋愛」ドラマの趣もあり、日本の若い読者の関心を呼びそうな魅力にあふれています。(高学年・中学生以上向き、1600円+税)


『「ヒロシマ消えたかぞく」のあしあと』(指田和・著、ポプラ社)
 2年前の読書感想文コンクールの課題図書になった『ヒロシマ消えたかぞく』という本をご記憶の方もいらっしゃると思います。両親に4人の子どもたちの家族全員が、原爆で亡くなったのです。たまたま親族の方が保存していたアルバムから、このご家族の日々を再現した写真絵本でした。この絵本がどうしてできたのか、そして6人は、それぞれどこでどんなふうに死んでいったのか。絵本出版時点ではわからなかった様々なことを追いかけ続けた著者の、本をめぐる〈探検〉の物語です。(高学年以上向き、1600円+税)

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