2021年12月号 読んでみたい本


(2021/12/10)印刷する

  

児童文学評論家 藤田のぼる

  

絵本

 

『あかいてぶくろ』(林木林・文、岡田千晶・絵、小峰書店)
 お母さんが編んでくれた赤い毛糸の手ぶくろ。いつも一緒だった手ぶくろの、右手の方を落してしまいました。それを拾ったのはきつねでしたが、次にうさぎ、のねずみの手に渡ります。お母さんはもう一度右の手ぶくろを編んでくれたのですが、ラストでその手ぶくろたちが出会います。詩人でもある作者(はやし・きりんと読みます)のふんわりとした文章も手伝って、文字通り、温かくなる絵本でした。(低学年以上向き、1600円+税)


『マイロのスケッチブック』(マット・デ・ラ・ペーニャ作、クリスチャン・ロビンソン絵、石津ちひろ・訳、すずき出版)
 マイロとお姉ちゃんが電車に乗る場面から始まります。毎月第一日曜日、二人は出かけるのです。「そのたびに、どうしようもないくらい きんちょうしてしまう」マイロ。緊張を解くために、電車に乗っている人たちをスケッチします。ジャケットを着てナイキのシューズをはいた男の子の絵は、王子様の絵になりました。電車から降り、列に並ぶと、さっきの男の子が列の前方にいたのでびっくり。その列は刑務所で面会を待つ列だったのです(「刑務所」という言葉は出てきませんが)。日本ではまずありえない設定ですが、絵本としてとてもしっくりくることにも驚かされました。(低学年から、1500円+税)


『学校が大好き アクバルくん』(長倉洋海・写真・文、アリス館)
 長倉さんの写真絵本は、これまでも紹介したことがありますが、今回の舞台はアフガニスタン北東部の山の中の小学校。一年生のアクバル君の一日を追っています。一年生は16人で、半数近くは女の子、先生も女性です。外国人である写真家が、どうやってこんな〈日常〉の子どもたちの表情が撮れるのだろう、と思ってしまいます。そして、アクバル君たちが無事に勉強を続けられることを願わずにはいられません。(低学年から、1400円+税)

 


低・中学年向け

 

『ねこのふくびき』(木内南緒・作、よしむらめぐ・絵、岩崎書店)
 学校に向かう途中、みゆに声をかけてきた男の子、「ぼく、ルークだよ」というのです。ルークはみゆの家の飼い猫です。そんなはずはないと思うみゆですが、よく見るとほっぺにうっすら猫のひげ。猫の町のふくびきで一等賞に当たり、変身できたのだといいます。学校についてきたルークを、なぜか校長先生は教室に入れてくれます。ルークの飛び入りでいつもの教室が違って見えるみゆに、読者の子どもたちも共感できるのではないでしょうか。(低学年向き、1100円+税)


『命を救う 心を救う』(ふじもとみさと・文、佼成出版社)
 ミャンマーを中心に、貧しくて治療を受けられない子どもたちの治療に25年以上あたってきた吉岡秀人さんの歩みを追ったノンフィクション。30歳で単身ミャンマーに乗りこんだものの、あまりの条件の悪さや、医師としての経験不足を痛感し、しかしそこから再び日本で研鑽を積み、改めて医療活動を開始した吉岡さん。それを支えるNPOジャパンハートを立ち上げた組織力と共に、吉岡医師の歩みは、「一人で何ができるのか」という問いに答を出し続けている人のありようとして、確かに読者の胸に響いてくると感じました。(中学年以上向き、1500円+税)
 ※吉岡さんの「吉」は、土に口です。

 


高学年・中学生以上向き

 

『ひまりのすてき時間割』(井嶋敦子・作、丸山ゆき・絵、童心社)
 ひまりと真由、幼馴染みにして同級生の二人の6年生が物語の中心です。朝の登校時、真由は表紙に「ひまりのすてき時間割」と書かれたノートを渡されます。ひまりが自分の一日のスケジュールをまとめようとしたもので、この日書かれていたのは「はじめに」の部分だけ。その中で、かかりつけの和子先生に改めて診断してもらい、過集中、多動などの症状を伴うADHDと診断されたことが明かされていました。何かに夢中になると他のことが耳に入らなくなるひまりの姿は真由には見慣れたものでしたが、それを障がいと思ったことはありません。ただ、ひまりはむしろそれを前向きに受けとめて、この機会に、自分の一日の過ごし方を整理して、トラブルを少なくしようとしていたのです。書き進められるごとに渡されるひまりのノートは、まゆにとっては親友の再発見の記録でした。
 著者は現役の小児科医で、発達障がいについて考えさせられる本であることは確かですが、ひまりと真由の人物像がそれぞれに魅力的で、二人の友情物語として心に迫ってきます。(高学年向き、1300円+税)


『りぼんちゃん』(村上雅郁・作、フレーベル館)
 こちらも6年生の二人の女の子をめぐる物語で、「心内ファンタジー」とでもいった、不思議な持ち味の作品です。朱里はクラスで一番身長が低くて、女の子たちから「朱ちゃん」などと呼ばれ、良くいえばマスコット的存在。6年生になって転校してきた理緒だけは朱里を「染岡さん」と呼んでくれ、二人は行動を共にするようになります。朱里には『魔法使いのアルペジオ』という愛読書があり、読んでいて疑問に思ったことなどを考える、秘密のしかけがありました。それはあかずきんちゃんが出てくる想像の世界に入り込んで、そこでおばあさんとの対話で疑問を深めていくのです。理緒と一緒に行ったマーケットで店員にどなっている男の人を見かけ、その時から朱里の心の世界にオオカミが登場するようになります。やがて、その男が実は理緒の父親だったことが分かり、理緒が抱えていた問題が浮かび上がってきます。
 子どもめぐる〈現実〉と、子どもの心で起こっている〈現実〉との不思議な関係性を感じさせてくれる、若い作者のユニークな作品でした。(高学年以上向き、1400円+税)

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