 「わあー、すごい、すごい」「先生!早く開けて見せて」――鹿児島県の徳之島にある伊仙町立馬根(ばね)小学校の図書室に、子供たちの興奮した声が響きました。へき地校援助で希望した品物がベルマーク教育助成財団から届き、9月9日に披露されたときのことです。
馬根小学校(竹崎俊一校長)は児童8人、複式学級の学校です。今回、へき地援助で贈られた設備品は、卓球台と用具一式、一輪車4台、サッカーボールやソフトバレーボール、絵本セット、竹馬6組、DVDレコーダーと多種多彩です。「これまで自分で買った一輪車を持って来る子がいたり、卓球台も古くなったりして……。それで今の時勢では町の設備予算ではなかなか買ってもらえないものを、と先生たちで話し合って決めさせてもらいました。」と校長先生。
だから子供たちは、どんなものが届いたのか知りません。授業が始まる前、図書室に集合した子供たちの前には「お母さんとおともだちからの贈りもの」のベルマークシ  ールが張られた箱が並んでいます。「今日はうれしいお知らせがあります。学習や運動に役立ててほしいと、ベルマークからたくさんの品物が届きました。今から開けてみましょう」。校長先生のお話のあと、いよいよ開封が始まりました。
先生が箱を開くと、すぐに「あっ、タイヤだ、一輪車だ」。待ちきれずにかけより、一緒に引っ張り出してみんなで組み立て作業が始まりました。「ペダルはどうやってつけるん? 難しいなー」「そっちを抑えといて」。大騒ぎです。一輪車の組み立てが完成すると、次は竹馬です。1組を組み立ててさっそく交互に乗ってみます。続いて絵本。真新しいサッカーボールが出てくると、男の子たちの目の色が変わりました。「すごい、すごい」の連発です。もう抱きしめて放しません。
最後は卓球台のお披露目。隣接する馬根幼稚園の遊戯室にみんなで移動です。幼稚園は、いま入園者がおらず休園中、格好の卓球室になります。ここでもみんなで荷ほどきです。あっという間にネットも張られて準備OK。「やってみるか」。先生の声に「やるやる」。代わる代わるラケットを持って、挑戦です。1人がサーブで空振りすると、みんながおなかを抱えて大笑いです。
「こんなに子供たちが喜ぶとは……。想像以上でした。子供たちのニーズにあった品物だったようです。よかった」と校長先生。休み時間には、さっそく思い思いの道具を持ち出して元気いっぱいに遊び、笑顔がはじけていました。
伊仙町は、鹿児島から飛行機で約1時間、徳之島の南西部にある人口約8000人の「長寿と闘牛のまち」です。馬根小学校は少し山間部にあり、周囲にはサトウキビ畑がたくさんあって風に揺れていました。学校でもサトウキビを栽培していて、子供たちも秋には刈り取りから黒糖づくりまで体験するそうです。校庭の真ん中に「バネバネの木」と名付けられた琉球マツの大木がどーんと立ち、木陰は青空読書の教室になったりもします。
 ピーク時には100人ほどの子供たちが通っていたそうですが、今は2年生がおらず、来年は今のところ新入生の予定もないそうです。でも、子供たちに暗さはありません。みんな仲良しで明るく、元気いっぱいです。下校時には、子供たちが職員室や教室に声をかけて帰ります。「教頭先生!ジャンケン」、「校長先生!ジャンケン」。先生たちも「ぽい!」と応えます。全員とかわすジャンケンが、「さようなら」のあいさつ代わりになっているそうです。
《写真上から》
・組み立てた新しい一輪車にまたがり、にっこり
・卓球台でさっそく試し打ち
・思い思いの道具を持って勢揃いした8人の全校児童
・馬根小学校の全景。運動場の真ん中にシンボルのマツが立っています=いずれも鹿児島県伊仙町馬根小学校で
(2009/09/15)
|