自由に。好きに。表現することが力になる/岩国市立修成小でオーサー・ビジット
(2026/01/09)印刷する
山口県岩国市の市立修成小学校(梶田勝彦校長)で昨年12月10日、ベルマーク財団の教育応援隊事業のひとつ「オーサー・ビジット」が開催されました。本の著者(オーサー)が学校を直接訪ねて(ビジット)特別な授業をする取り組みで、朝日新聞社との共同の企画です。絵本作家で、映画や舞台でも活躍する宮西達也さんが同校を訪問しました。
市中心部から車でおよそ40分。周囲には田園風景が広がります。校庭の中央には大きなクスノキが立ち、学校の象徴として、全校児童16人を見守っています。
廊下の突き当たりにあるオープンスペースに集まった子どもたちに、まずは宮西さんが大きな声で「ぼくが有名な宮西さんだよ!」とユーモアたっぷりに自己紹介をすると、笑い声に包まれました。
子どもたちの回りでは先生や保護者たちも耳を傾けています。スクリーンにパンダの写真を映し出しながら、クイズを出します。「パンダの尾は白色、黒色のどちら?」。子どもたちから歓声が沸き、一気に心をつかんだようです。音楽家の坂本龍一さんと一緒に撮った写真を映し出し、交友を振り返ると、大人たちも興味深そうに耳を傾けていました。
まずは読み聞かせの時間です。作品のひとつ「にゃーご」は、教科書にも掲載されています。同校の先生も読み聞かせる側に参加しました。
宮西さんは子どもたちにこんな言葉を投げかけました。
「自由に、好きにやっていい」
「いろんな経験が、人生の糧になる」
「夢に向かって進もう」
宮西さんが熱を込めて語ると、子どもたちは静かに聴き入ります。大谷翔平選手の例を挙げながら、夢を持つこと、一生懸命続けることの大切さ……。宮西さん自身、特別な才能があったからではなく、恵まれた環境ではなくても諦めずに努力を続けることで、周囲の助けを得て絵本作家への道が開けたこと。夢を追う中では、家族や友だち、先生といった、支えてくれる人の存在を大切にすること。「普通の努力では足りない」という厳しい言葉も、子どもたちの胸にストンと落ちたようです。
宮西ワールドに引き込まれたところで、図書室に場所を移し、段ボールを使ったワークショップの時間になりました。子どもたちがそれぞれ思いのまま、段ボールを材料に、絵を描き、切り抜き、組み立てていきます。
考えてから動き出す上級生、迷うより先に手を動かす下級生。それぞれの個性が、最初からはっきりと表れていました。段ボールに黒とオレンジのペンで描かれたキャラクターたちは、平面から少しずつ立体へ。子どもたちは次々と、独自のキャラクターを生み出しました。
「恥ずかしがらなくていい」
「正解はない。誰でも表現していい」
宮西さんの言葉に背中を押され、子どもたちはのびのびと想像力を広げていきます。
「絵が苦手」と感じていた子も、立体にしたり配置を工夫したりする中で、自分の得意な表現を見つけたようです。また、絵が苦手でも、工作が好きな子は、そちらで力を発揮しました。宮西さんは一人ひとりのためネームプレートを作成しており、それを各自が作品に貼り付けました。全員が作品を完成。一人ずつ前に出て、宮西さんに作品を講評してもらいました。子どもたちの作品への思い入れはさらに深まったようです。
最初は「描けない」「やりたくない」と言っていた子どもたちも、丸や三角といった簡単な形をきっかけに制作を始めると、次第に夢中になり、最後にはそれぞれの個性がはっきりと表れた作品を完成させました。高学年になるほど周囲の目を気にして表現をためらいがちですが、拍手や言葉で認められることで自信につながり、「またやりたい」「楽しかった」という気持ちが生まれます。
オーサー・ビジットを終え、学校からの帰路、宮西さんはこんなことを話していました。
「表現には、うまい・下手だけでは測れない価値がある。立体や配置、発想など、さまざまな形で力を発揮できることを認め合う。子どもを認め、自由に表現させることが、確かな成長と自信につながる」
その思いは子どもたちにしっかり伝わりました。


