4年生、「難民」について考えた/東京・品川の立会小、難民支援のシャンティ国際ボランティア会が出前授業


(2015/12/04)印刷する

 「難民って、どんな人だと思いますか?」

――「その国に居られない人」「お金や食べ物が豊富になくて食べられない人」「戦争で困っている人」

 東京都の品川区立立会小学校(星野豊校長、591人)で、シャンティ国際ボランティア会の鈴木淳子(あつこ)さんを講師に迎え、「難民について考える」出前授業が行われました。ベルマーク財団の海外援助事業を理解してもらおうと、初めて開催されました。

 シャンティ国際ボランティア会は、ベルマーク財団が支援する団体のひとつです。アジアで図書館の運営や学校建設などの教育・文化支援事業や災害救援・復興活動などをしています。講師の鈴木さんは、これまでアフガニスタンやラオス、ミャンマー難民キャンプで活動してきました。

東南アジアの地図を背に説明する講師の鈴木淳子さん

 10月28日午前中にあった授業は、4年生3クラス(100人)が参加し、1クラスずつ計3回行われました。水や保存食、ラジオ、家の権利書など38のアイテムが載ったワークシートが配られ、4人1組で難民を体験するワークショップに臨みました。

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 日本ではない世界のどこかの小さな国の、小さな町に住む家族という想定です。

 ある日戦争が起こり、戦車が襲ってきて、このままでは殺されてしまいます。カバンに必要なものを詰めて今すぐ逃げなければなりません。

「これはどう?」「こっちの方が大切だよね」

 児童たちは、命を守るために必要なものを15個選び、さらに船に乗るため7個に絞り込みました。「命を守るために必要なもの」――ふだん考えたことなどありません。頭をくっつけるようにシートをのぞきこみ相談を始めますが、大切と感じるものは人それぞれ。なかなか意見がまとまりません。

 制限時間が迫る中、「要る」「要らない」の大騒ぎです。シートの上はマルとバツがいくつも重なり、ため息をついたり、頭を抱えたり。班によって選択に違いが出ました。

 現金は「船に乗るのに必要」な班もあれば、「他の国では使えないから要らない」班、「売ってその国のお金に換える」と宝石を選んだ班。薬は「感染したら大変だから必要」「配給されるから要らない」と分かれ、「家族」で「命だから」とペットを選択した班もありました。

最初はゲーム感覚で楽しそうだった児童も次第に真剣に

 パワーポイントを使ったワークショップは続きます。

 乗りこんだ船はぎゅうぎゅう詰め。立ちっぱなしで、お風呂もトイレもない、水や食べ物も底をつきそう。どこに進んでいるか分からないまま、1日目、2日目……もう何日目か分からないころ、ようやく陸が見えました。どうやら日本という国のようです。

 ホッとした顔を見せる児童に、鈴木さんはパスポートの有無を尋ねると、さらにこう告げました。「入国するにはこの入国審査という書類に正しく記入しなければなりません。皆さんは違う国から来た人なので、この書類に何が書いてあるのか全く分かりません。だから皆さんは日本に入国できません」

 パスポートを選び喜んでいた班も静まり返ってしまいました。

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 「5000人分の11人」――。昨年度、日本に難民申請をした人数と難民として認定された人数です。

 「えぇー、ひどい」「少ない」と叫ぶ児童に、鈴木さんはタイ国境にあるミャンマー難民キャンプのことを話してくれました。難民たちは、ぐちゃぐちゃ、デコボコの荒れた道を進んだ山奥に、葉っぱで作った粗末な家に30年以上も暮らしていると話すと、児童たちは神妙な顔つきで写真に見入っていました。

 難民を取り巻く状況は変化しています。今回は難民キャンプでの鈴木さんたちの活動の話まで至りませんでした。でも、鈴木さんは「難民について考えるきっかけになり、関心をもってくれたら嬉しいです。そして自分は何が出来るか考えてほしい」と話しました。

私たちが選んだ「命を守るために必要なもの」
アレも必要、コレも必要……迷いました

   

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 児童たちは、命を守るために必要なものを選ぶのが「とても大変だった」そうです。

 「あとの4989人」や「自分の国にも他の国にもいられない人」に胸を痛め、「かわいそうだけど、受け入れてあげられない人の気持ちもわかって複雑な気持ち」になりました。

 「難民キャンプで何を食べているの?」「戦争をやめれば難民がでないから、世界で武器をすべてなくせばいい」「難民の国を作ればいい」という感想も聞かれました。

 担任の先生が話しました。「かわいそうと思った人がいるかもしれません。でも日本が難民を受け入れないのは理由と事情があるはずです。なぜこういう状況が生まれてしまったのか。ここで答えは言いません。難しいけれど、これからみんながそれぞれ考えていってください」。児童たちは大きくうなずいていました。

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 立会小学校は2年前に改修した人工芝のグラウンドが自慢です。ベルマーク運動には1962(昭和37)年からの参加で、2010年にはマークの総累計が300万点に達しました。学校備品の購入だけでなく、東日本大震災以降、毎年援助寄付をしています。

 立会小学校のある品川区では道徳・特別活動(学級活動)・総合学習を統合した「市民科」という新しい学習科目を学んでいます。出前授業はこの市民科の一環として行われました。

夢中で相談する児童たち

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