2018年4月号 読んでみたい本


(2018/05/14)印刷する

  

児童文学評論家 藤田のぼる

  

 絵本から中学生向きまでのさまざまな本を紹介してきたこのコーナー、ネット化に伴い、パターンが少し変わります。

 掲載はこれまでの年4回から、隔月の6回になります。その分、1回ごとの紹介する本の冊数は減りますが、やはりある程度の数は確保したいので、1冊当りのコメントはやや短めになるかと思います。また、これまでは毎回冒頭で、時々の子どもの本に関わるトピックスを取り上げていましたが、今回からは毎回ではなく紹介したい話題がある時に、というふうにしていきます。いずれにしても、この欄を通じて、子どもの本のバリエーションの豊かさを、少しでもお伝えできればと願っています。

  


  

 

『ワタナベさん』(北村直子・作、偕成社)

 ワタナベさんは、鍋。なべ一つでいろんな料理を作る名人。おでんはもちろん、もつなべ、煮込みうどん、シチュー、ポトフなどと多彩で、お客さんの注文に応じて作ります。ある日やってきた男の子に、「ナポリタン3人前ください」といわれて、さあ困った。でもいっしょうけんめい考えて、ナポリタンに挑戦、無事に男の子にわたします。 絵本の最後に、なべ一つで作るナポリタンのレシピが載っています。子どもから大人まで楽しめる絵本です。(低学年から、1200円+税)


『かたあしの母すずめ』(椋鳩十・作、大島妙子・絵、理論社)

 椋鳩十(むくはとじゅう)といえば、日本の動物児童文学の第一人者で、「片耳の大鹿」「大造じいさんとがん」などの作品で知られています。その椋さんの5作品が一気に絵本になり、これはその1冊で、「わたし」が語る形式の、エッセイ風なタッチの作品です。わたしの家の屋根のひさしにすずめたちが巣を作りますが、そのうちの一羽がかたあしであることに気づきます。このすずめは、他のすずめたちと違って白い羽毛ばかりで巣を作り、しかも巣作りが一番早いのです。その巣の中に小さな卵を見つけてまもなく、卵がへびに食べられてしまいます。今度は隣の空き家の煙突に巣を作ったかたあしすずめ、ところがここに人が住み始め、火が燃やされてしまいます。まだまだ先があるのですが、かたあしのすずめと共に、それを見守る「わたし」の姿に共感を覚えずにはいられません。(低・中学年から、1500円+税)


『しらとりくんはてんこうせい』(枡野浩一・文、目黒雅也・絵、あかね書房)

 転校生の物語はたくさんありますが、しらとり君は、なかなかビミョーにユニーク。ひょろっとした色白で、めがねをかけ、「算数とシュークリームがすきです」と自己紹介します。隣の席になった「おれ」が放課後野球に誘うと、一日目は「ピアノの先生がくるから」、二日目は「妹のめんどうをみなくちゃいけないから」、次の日は「お母さんがシュークリームを作る日だから」と断るしらとり君。特別な事件が起こるわけではないのですが、新しい出会いにまっしぐらの「おれ」の姿の向こうに、やはり確かにユニークなしらとり君の姿が、浮かび上がってきます。(低・中学年向き、1300円)


『となりの火星人』(工藤純子・作、講談社)

 6年生の水野かえで。成績はいいのだけれど、典型的「空気の読めない」子。クラスの派手グループの美咲たちが今教室にいないゆみのことを、人から借りたものをなかなか返さないと言い合っているのを耳にし、教室に戻ってきたゆみに「貸したものは返さないとみんな怒ってるよ」と美咲たちの前で口にします。絶句する美咲たち。かえでには、なにがいけなかったのかわかりません。このかえでや美咲、かえでの幼なじみで、今も小さい子のような心根の湊、なにかあるとすぐ切れて乱暴を働く和樹、それぞれに自分との向き合い方に揺れる子どもたちの姿が、リレー式に描かれていきます。人とどう接していけばいいのか、もちろん正解などないわけですが、この物語の中で、どの子も少しずつ自分との折り合いのつけ方を発見していきます。とりわけ、まず気の合うことのなさそうなかえでと美咲の“接近”のプロセスは見事です。(高学年以上向き、1400円+税)


『こんぴら狗』(今井恭子・作、いぬんこ・絵、くもん出版)

 江戸時代、伊勢や四国金毘羅山への参詣は庶民の夢。「代参」という形があることは知っていましたが、飼い犬に託すケースがあったとは知りませんでした。この物語では、江戸の商家の娘・弥生の病状がはかばかしくなく、これを心配した近所のご隠居が、犬のムツキを連れての金毘羅参りを申し出ます。捨て犬だったムツキを立派に育ててきたのが弥生でした。ところが、旅の途中でご隠居は病を得、亡くなってしまいます。それでもムツキの旅は終わりません。こんぴら狗は首に結わえた書付などでわかるので、ムツキを見かけた人たちは、次々に手を貸すのです。ムツキがついに金毘羅参りを成し遂げて江戸に戻るまで、どれだけの人たちと出会い、その人たちがこんぴら狗であるムツキに対してどんな思いをかけたのか、そこが見事に描かれ、読者もムツキと共に旅をしている気持ちになります。そして、この物語のおもしろさを確かなものにしているのが、「主人公」であるムツキの描かれ方で、なるほど犬であればこのように考えるだろう、このように行動するだろうというリアリティに満ちています。児童文学の歴史ものの、新たな可能性を感じさせてくれた作品でした。(1500円+税)

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