「紙のまち」で生まれ変わるテトラパックの紙容器
(2017/03/22)印刷する
リサイクル工場を見学しました
協賛会社の日本テトラパック(ベルマーク番号17)の紙容器が再処理される工場を見学しました。回収箱にいっぱい詰まった紙容器は、静岡県富士市にあるテトラパック回収センターで計量され、市内にある「コアレックス信栄」の工場でトイレットペーパーやティッシュペーパーに生まれ変わります。
冬の澄んだ青空に、白い雪を抱く富士山が目に鮮やかな2月中旬。新幹線の新富士駅からテトラパック回収センターに向かいました。センター内には約500箱もの回収箱が積み重なる様子は壮観です。1日に150箱分の紙容器が宅配業者2社から搬入され、スタッフ2人が向かい合って、手作業で箱から取り出して、秤で計量します。
繁忙期には1日200箱分をさばくそうです。作業の様子はカメラで撮影しているので、問い合わせがあっても根拠を示して答えることができます。アルミ付き紙容器とアルミなし紙容器が混ざっていると、ここで分け直します。
計量が終わると、車で10分ほどの「コアレックス信栄」のリサイクル工場に搬入されます。
「コアレックス信栄」は「製紙のまち」静岡県富士宮市に1961年に設立しました。2015年10月には旧社名信栄製紙からコアレックス信栄に改称、富士宮市から富士市に移転し、新たなスタートをきっています。4万980平方㍍に屋内テニス場のような白と濃緑の社屋は、富士山や周囲の山並みの景観を損なわないための配慮だそうです。従業員は現在135名。古紙100%の再生家庭紙メーカーです。
同社はじめグループ会社の直営工場が国内4カ所、ベトナムに1カ所あり、提携工場は7カ所に散在しています。全国に工場を散在させているのは、製品が生活必需品なので災害時にも安定供給できるための地域災害対応がまず一点。次に流通の利便性、そして地産地消によって輸送時のCO2を削減する意図があります。防災面では、同市の民間企業としては初めて市・地元地区と防災協定を結び、工場が避難所となります。大会議室横には、避難した地域住民ら約200名が3~4日分をしのげる水・食糧等の災害備蓄品が蓄えられています。
国内で生産されるトイレットペーパーは年間100万㌧。その約60%は古紙から作られていて、その内同社グループは47%のシェアを占めます。同社の強みは、ビニールによる防水加工やアルミ加工など、通常は焼却処分されているリサイクルに回らない、いわゆる「難再生古紙」を数回の工程で除去し、扱えることです。
「紙パックは原料としてはトップクラスなので、大切にさせて頂いています」と岡田忠太郎・総合企画室担当課長は言います。
搬入された紙容器は、まずパルパーという機械で溶かします。約8時間~12時間熟成させた後、ビニールや金属などの異物を何度もフィルター装置を通して除去し、出来上がったパルプから紙として巻き上げられます。牛乳パック6枚で1ロールのトイレットペーパーになります。同工場は1日に200~220㌧の古紙から、重さにして150㌧の紙を製造し60mのトイレットペーパーに換算すると130万ロールになります。4人家族が一年間に使うのは約200ロールですから、6500世帯の一年分を一日に作る計算になります。家庭、事業所、公共施設などに納入しています。
総合企画室の後藤和也さんに案内されて、工場内を見学すると、各工程で驚きの連続でした。大型トラックで搬入された古紙は溶解処理されて、約8時間~12時間熟成されて金属類、ポリエチレンなどの合成樹脂類、インクなどが除かれて古紙パルプとなって紙に巻き上げられていきます。トイレットペーパーの大きさに整えられ、梱包、包装されて、ベルトコンベアの終点には、パレタイズロボットというクレーンで持ち上げられて、パレット積みし、コンベアで出荷用倉庫に運ばれます。
「搬入されるテトラパックの紙容器は年々増えています。ペーパーレス化で、材料の確保が難しいなか、大変ありがたいことです」と後藤さんは言います。
工場内は3交替制で24時間フル稼働していて、「ラインが止まっているのは、ほとんど見ることがありません」と後藤さんは言います。
地域貢献やリサイクル意識の浸透のため、地元の小、中学校や企業、自治体の見学を幅広く受け入れており、年間1万人の見学者があるそうです。
ベルマーク運動で集められたテトラパック社の紙容器はこうして環境と地域社会に配慮されて、生まれ変わっています。