「中学生九州サミットinみなまた」


(2019/01/29)印刷する

「いいねー!」を合言葉に議論を重ねた4日間

 「中学生九州サミットinみなまた ~我が地域に勇気の一歩を!~」が、熊本県芦北町の「あしきた青少年の家」で12月22日から25日の3泊4日で開催されました。今回は熊本県・水俣市・福島県・福島市・郡山市・伊達市・国見町の各教育委員会が後援しました。

 水俣市と福島県の交流が始まったきっかけは東日本大震災です。風評被害にさらされた福島県に対し、水俣病で同様の経験をした水俣市PTA関係者が提案し、双方の中学生同士が復興や地域貢献に関して話し合う機会が設けられました。その後、水俣市と福島県の有志で構成された福島・水俣教育交流実行委員会(委員長・中村慶治さん)が主催し「中学生九州サミット」となりました。ベルマーク財団もこの活動を支援しています。今回は福島から29人、九州は水俣・佐賀から21人、計50人の中学生が参加しました。

 参加した中学生の参加理由はそれぞれですが、時間が経つほどに打ち解けていき、自分が生まれ育った故郷の大切さを再発見し、地域のために自分は何が出来るのかを探りました。

中村慶治さん

 サミットは、専門家や経験者らの「講話」を聴き、それをもとに話し合う「熟議」が繰り返される形で進行します。今回は5人の方が「講話」を行いました。福島第一原発の現状、現在行われている防災教育、震災時に大船渡市立第一中学校で作成された学校新聞「希望」、中学生が発案し地域を巻き込んで作成した松川カルタ、水俣でお茶の無農薬栽培に挑戦する農家の取り組み、水俣病語り部の方の話など、様々なテーマが用意されました。

 原発について話したのは郡山市からの引率者であり、実際に第一原発に足を運んだ天野良文さん。原発が今置かれている状況そのままの写真を見せながら、「水俣病はうつりますか?放射線はうつりますか?」と問いかけ、“無知”であることが風評や差別につながることを訴えました。

 水俣病の語り部として活動する杉本肇さんは、祖父母と両親の発病、そして“奇病”と言われていた時期に“患者のウチ(家)”とレッテルを貼られたことのつらさを伝え、そんな中でも希望を捨てずに生きることがいかに大切かを語りました。

熟議を重ねます
休憩時間には福島県産りんごの差し入れも
水俣病資料館に入る中学生たち


 講話を聴いた後は、班ごとに意見をまとめていきます。個々の意見を付箋紙に書き、模造紙にグループ分けしながら貼っていき、議論の流れを整理しようとしますが、これがなかなか難しかったようで、調整役として参加した高校生や大学生の力を借りながら知恵を絞っていきます。

 大勢の前で話すのが苦手な人や、自分の意見をまとめるのに苦労する人もいましたが、意見を聞いたあとは、合言葉「いいねー!」を使って元気よく反応することで場の雰囲気を盛り上げました。大学生の高橋莉子さんは「サミットを通じて中学生のみんなそれぞれが、何かを起こそうとする力をつけてほしい」と期待していました。

 最終日は「壮行会」と銘打ち、一人一人がみんなの前で、自分の言葉で「決意表明」します。班単位での発表にすると、自分の意見を他の人の意見に合わせることになってしまうかもしれないので、こういう形にしたそうです。「みんなのこれからの一歩を応援し、送り出してあげるという意味を込めました」と高校生の鈴木小春さん。


 全行程を終えて、水俣第二中学校2年の濱田佳子さんは「中学生に出来ることは限られていると思っていたけれど、講話を聞いて、私たちにも出来ることがあって、それを実行していくことが大切だと分かりました。所属する生徒会でいろんな意見を出していきたいです」とこれからの抱負を教えてくれました。

 主催した実行委員会委員長の中村さんは、あいさつで「正しい情報を発信する、と言葉で言うのは簡単ですが、自分の目や耳で確認する作業を怠ると、その情報はデマや風評となり新たな被害者をつくることになります。水俣病も福島の原発事故もそれが原因で、ありもしないイメージが人々を傷つけ、未だに傷が癒えません」と話しました。中村さんは保護者としてPTA活動をしている際に水俣と福島の共通点を見出し、故郷に誇りを持つことの大切さを伝えたいと思って、中学生交流の実現に尽力してきました。そうした思いがあふれたのか、あいさつの途中では感極まった表情をみせていました。

サプライズでくまモン登場

 プログラムは他に、水俣病資料館に行ったり、高校生グループの発表“ユージン・スミスと水俣”を聞いたり、クリスマス期間にも関わらず頑張る参加者のためにくまモンが登場したり、小学生から手作りの松ぼっくりツリーのプレゼントがあったりと盛りだくさんでした。23日には、水俣エコパーク内にある親水公園の慰霊碑で黙とうを捧げ、近くの公園に記念の植樹をしました。植えた桜は「繋桜(つなぎざくら)」と名付けられ、10年後にまた同じ場所で再会することを皆で誓い合いました。

 サミット会場を後にして、それぞれ帰路のバスに乗る生徒たちは、笑顔がキラキラしていました。初めて出会った他校の生徒と共に4日間生活し、新しい知識を蓄え、新しい友達も作って、大満足だったようです。中村さんを始めとするこのサミットを支えた大人たちの思いはしっかりと生徒の心に届いたことでしょう。


親水公園の慰霊碑
大きく手を振ってお見送り
記念植樹
寄せ書きをしたクリップボードを持って
あしきた青少年の家から見える夕日

ベルマーク商品

プチホワイトチョコラングドシャ

ベルマーク検収

今週の作業日:4/15~4/19
2/14までの受付分を作業中