液体窒素などでサイエンスショー 三重・菅島小でエジソンの会
(2018/01/31)印刷する
伊勢湾の入り口に浮かぶ三重県鳥羽市の菅島にある菅島小学校(藤井英一校長、児童数21人)で昨年12月18日、ベルマーク財団主催の理科実験教室がありました。NPO法人「サイエンスものづくり塾エジソンの会」(華井章裕代表、岐阜市)の6人による液体窒素を使ったサイエンスショーや工作のワークショップを通じて、子どもたちは「なぜ」と考えることの大切さを学びました。
授業は風船割りの手品で始まりました。華井さんらが液体を塗った風船を子どものたちの間へ飛ばします。数秒後にパーンと割れ、悲鳴と笑いで大騒ぎ。
「何で割れたかわかる? ミカン油といって、夏ミカンやハッサクをむいた時に黄色い汁が手につくでしょ、あれを塗ってるんです。発泡スチロールを溶かすのでリサイクルで使われているけど、ゴムも溶かすんです」
説明を聞いて、「へえー」という声があちこちであがりました。
さらに、紙オムツなどに使われる高吸水性樹脂を利用した手品などを披露。子どもたちの知的好奇心を刺激して、気持ちをがっちりつかんだところで、メーンの液体窒素の登場です。
マイナス196度。先生と子どもたちが、サザンカの花や野菜の葉を液体に浸けてみました。瞬く間に凍って、手で触ると粉々に砕け散り、「うわー」「やばい!」の悲鳴が起きました。凍らせたバナナで板にくぎを打ち込んでみて、凍結のものすごさを実感しました。
「風船を浸けるとどうなるかな?」。華井さんらが問いかけながら、実験してみます。しぼんだあとで膨らんで元に戻りました。「なんでかな、と考えるのが理科なんだよ」。高学年の児童が手をあげて、「風船の中の空気が冷やされて体積が縮むから」と、見事に答えました。
液体窒素に二酸化炭素を入れた風船を浸けるとドライアイスができることや、水分のないティッシュペーパーはパリパリにならないことなどを、一緒に実験して確かめました。
工作では、ビー玉を魚眼レンズ代わりにして、見る対象ごとに多彩な模様が楽しめる「ビー玉万華鏡」と、カラフルな細長いテープがいろんな形で回ってきれいな「くるくるレインボー」を作りました。エジソンの会のメンバーらが4個のビー玉を接着剤でくっつけて、逆立ちして回るコマを作り、みんなで回して遊びました。
最後に、元高校教諭の華井さんはみんなにこう語りかけました。
「工夫するとおもちゃって、いくらでも作れるんです。理科の研究って全部そう。自分で工夫してやってみると、いい結果が出る。失敗してもいいんです。失敗する中で新しいことを見つけるんです。そういうことを期待して、おじさんたちはあちこちで授業をしています」
「ひょっとしたら、菅島からノーベル賞が出るのかな」
子どもたちは「面白かった」「ビー玉のコマも自分で作ってみたい」などと感想を述べ合い、児童会長の松口友哉くんが「とても楽しかったです。きょうはありがとうございました」とお礼のあいさつをしました。
藤井校長は「子どもたちにとっては本当に貴重な体験。きっと心に残ることと思います。これがきっかけで世界が広がっていくことを期待しています」と話しました。
「エジソンの会」は小学校のPTA役員の仲間で2004年に結成。現在約20人で、愛知、三重、岐阜を中心に出前教室を年間80回以上開いています。今回は華井さんのほかに、広瀬弘さん・美陽さん夫婦、杉山雅一さん、奥村雄二さん、日比野きみ江さんが講師を務めました。
【菅島】鳥羽港から約3km東にあり、定期船で15分ほど。面積4.52平方キロ。220世帯、590人ほどが暮らしています。漁業が盛んで海女も多く、「風の島」と呼ばれるほど冬は冷たい風が強く吹くため、干物づくりが盛んです。「伊勢えびの開き干し」は島のオリジナル商品。1873(明治6)年に建てられた菅島灯台は、現存する日本最古のレンガ造灯台で、就工式には西郷隆盛も出席したといわれています。
菅島小は1876年創立。子どもたちがガイド役となって観光客らを案内する「島っ子ガイドフェスティバル」が毎年1回催され、好評です。来年度の道徳の教科書にも取り上げられて紹介されます。島には中学校がなく、児童らは卒業後、船で本土の中学校に通います。