3年弱でマーク仕分け累計300万点/イールド桜木町
(2021/07/19)印刷する
横浜市中区にある事業所「イールド桜木町」は、企業に対して「障がい者雇用補完サービス」を提供しており、ベルマークの「仕分けボランティア」も活動内容に取り入れています。約3年前から始め、今までに仕分けた点数は300万点超。どのような仕事の内容で、どんな風に作業をすすめているのかを知ろうと、事業所を訪れてみました。
運営する合同会社ガイヤイールド(本社・横浜市中区)の端野健一代表は、かつて18歳以下の知的障がい者のためのデイサービス施設を運営した経験があります。そこで「保護者の抱える最大の不安が高校卒業後の進路」であると知ったことが、この事業の立ち上げにつながりました。
事業所では、就職希望者を2年間研修します。社会人としてのマナーを身に付ける座学や簡単な事務作業、社会貢献活動といった内容です。研修を終えると、ガイヤイールドと契約を結んでいる企業の社会貢献・CSR部門に正社員として採用・配属されます。でも勤務地は引き続きイールド桜木町のままで、社会貢献活動を続けることが日々の業務になります。つまり、就職後も慣れ親しんだ環境で今までと同じように働ける、というわけです。
イールド桜木町は、知的・精神障がいを持つ人の自立、高齢化する保護者の安心、企業の障がい者雇用目標達成という3つの目的の実現をうたっていますが、いまのところ継続率・定着率ともに100%を達成しているそうです。
社会貢献活動の一つがベルマークの仕分けボランティアです。2016年の事業所発足当初の活動メニューは、人手不足が慢性化している農家を支援する「農作業」だけでした。知的・精神障がいを持つ人との作業適性がマッチングしていたからです。しかし、雨で農作業ができない日はどうするかという課題が生まれました。そこで、ゼネラルマネージャーを務める刈谷鉄平さんが、室内で気軽にできるボランティアをネットで検索し、ベルマークに辿り着いたそうです。「ベルマークの認知度は高く、働いているみんなも馴染みがあったようです」と話してくれました。
早速仕分けボランティアに名乗り出て、初めて作業をしたのが2018年8月。作業手順の効率化や、小さなマークに見合う入れ物探しなどを手探りで進めました。回数を重ねるにつれ、くじ引きで担当するベルマーク番号を決めたり、二重チェックを取り入れたりするなど独自の工夫が出来てきました。作業が軌道に乗った現在は、天候に関係なく毎日仕分けに取り組んでいます。
事業所に伺ったのは6月25日。7人の就業者が黙々と仕分けをしていました。朝礼などを終えた10時から16時頃まで、適度に休憩を挟みながら作業するそうです。室内を見渡すと、作業方法を説明した手引や、これまで仕分けた点数結果、脱退・無効マークの一覧が壁に貼ってありました。これらを作成しているのはT.T.さん。聴力に障がいがあるのですが、筆談で「ひと目で分かるように工夫しました」と教えてくれました。分かりやすい色使いやイラストが特徴的です。また、Tさんは「最近はコロナでマスクをしているので口話(口の動きを読み取って会話する方法)が出来ません。もっとコミュニケーションがとりたい」と考えているそうです。
「学校でベルマークを回収していて、自分も持っていったことがあります」と話してくれたのはS.Y.さん。どちらかと言えば細かい作業は苦手だそうですが、イールド桜木町の和やかな雰囲気が好きなこともあり楽しく仕事できていると言います。「毎日マークに触れていたら、何番がどの会社か覚えちゃいました」と笑うのはS.W.さん。スーパーに行ったとき、ご両親との会話のネタとなっているそうです。
端野代表は、障がい者の皆さんとベルマーク仕分けの相性について「今日の何時までにこれを仕上げるという『納期』が厳しくないことが大きい」と分析します。端野さんによると知的・精神障がい者の離職理由のひとつに、企業が「生産性」を厳しく求めることが挙げられるそうです。「世の中に役立つことをしたくても、例えば被災地に行くのは身体的に厳しい人が多いです。障がいのある人の自立を支援することはもちろん、ベルマーク仕分けや農作業といった活動も継続し、社会に貢献していきたい」と話してくれました。
障がい者の就労には、障害者総合支援法で様々なサービスが定められていますが、対象となるには条件があったり、人によって特性が異なる知的・精神障がい者は安定就労が難しかったりと、なお課題があるのが現状です。イールド桜木町が提供する「障害者雇用補完サービス」は、利用企業が最低賃金以上の賃金と社会保険を提供することになっていて、障がい者の側も安心して働くことができるため、企業にとっての雇用「補完」という本来の意味に加えて、障がい者にとってのサービス「補完」という意味も持っているといえそうです。