7校一緒に被災校支援「にじの風プラン」/統合前に瀬戸市の小中学校、マーク収集


(2019/11/01)印刷する

 愛知県瀬戸市で2020年に統合される7つの学校(祖母懐小・東明小・古瀬戸小・深川小・道泉小・祖東中・本山中)が一体となってベルマークを集め、東日本大震災の被災地校に希望の品を贈る計画を進めています。題して「にじの風プラン・7校の力をひとつに!」。きっかけとなったのは、地元FM局のパーソナリティーの活動でした。

左から、早川寿校長、伊藤由美さん、古舘満根教頭、高橋智子さん


 名古屋から北東に約20キロにある瀬戸市。最近では将棋の高校生棋士、藤井聡太七段の出身地として有名になりましたが、古くからの陶磁器の産地で、「瀬戸焼」の名で知られたところです。「この辺りの学校には、窯がありますよ」と祖東中の早川寿校長。実際、祖東中には電気窯、本山中にはガス窯があり、作陶の授業もあるそうです。

 7校が統合する主な理由は、少子化による児童生徒数の減少です。創立から73年の歴史を持つ祖東中も、最大700人超だった生徒数は現在171人。中には、ここ15年で児童数が半分以下になった学校や、学年の在籍者が0人の学校もあるのが現状です。

 統合後は、市立の小中一貫校「にじの丘学園」(にじの丘小学校、にじの丘中学校の総称)が新たに発足します。2020年4月の開校に向け、祖東中の隣にある公園内で新校舎の建設が進んでいます。

祖東中の校長室に飾られている焼き物の作品
本山中にあるガス窯

にじの丘学園新校舎は建設中

 新しい学校名の一部を取った「にじの風プラン」が始動したのは2018年4月。提案者は祖東中の生徒に本の読み聞かせ活動をしている伊藤由美さん。親子3代揃って同校の卒業生です。

 当時の校長が、合併前に7校で何かやりたいと模索しているところに、伊藤さんはベルマークによる合同の復興支援を提案し、快諾してもらえました。7校の中にはベルマーク運動の未参加校や活動休止中の学校もあったため、心配する声もありましたが、伊藤さんは発起人として「やります!」と力強く宣言。他の6校に打診したところ、みな賛成してくれたそうです。

 活動にあたっては、まず2リットルのペットボトルの上部を切り取ってベルマークを入れる容器をたくさん作り、7校の各教室や職員室、学区内にある3カ所の公民館に置きました。集まったマークは祖東中に集約し、校長室を使って7校から集まったボランティアが仕分け・集計しました。他校の校長・教頭もマークやテトラパック容器を持参して作業に参加するのだそう。テーブルの上に整理袋を並べ、みんなで和気あいあいと行いました。その一方で毎月7日を「にじの風Day」とし、各学校で啓発活動を行いました。

 子どもたちも関心を寄せ、「マークを筆箱に入れて持ってきたよ」「どれだけ貯まったの?」といった声が聞かれたといいます。地域の高齢者が、集めたマークを近所の子どもに託して届けたこともあるそうで、伊藤さんは「地域の人が気軽に学校とつながることができました」と話します。

祖東中での仕分け・集計の様子


 この活動を伊藤さんが思いついたきっかけは、街で東日本大震災の被災地支援のためのベルマーク回収箱を偶然発見したことでした。マークを集めたい気持ちをずっと心に溜めていたという伊藤さんは、その時の心情を「衝撃的でした」と語ります。

 それは瀬戸市のコミュニティーFM「ラジオサンキュー」でパーソナリティーを務める高橋智子(ちえこ)さんが2013年から始めた「ちー姉のベルマーク大作戦」という活動でした。

 高橋さんは番組の取材で被災地の復興が進んでいないことを知り、遠くからでも子どもたちを支援できる方法としてベルマークの寄贈を思いつきました。スタジオは人の集まる複合施設パルティせとの1階にあるので、ここに回収箱を置き、同時に自分の担当する番組でベルマークを集めるよう呼びかけました。仕分けと集計は、番組リスナーのラジオネーム「山田2号」さんがボランティアとして担当してくれました。

 集まったマークは、宮城県東松島市にある市立矢本東小に、高橋さんが毎年出向いて手渡しています。現地に出向経験のある瀬戸市職員に相談し、津波で校区の半分が被害を受け、校舎が避難所にもなったこの学校を選んだそうです。これまでに6回訪問し、合計7万点以上を贈りました。呼びかけに応じて集まった使用済みインクカートリッジも訪問時に渡しました。「マークを集めることが大きな力になることを、矢本東小の子どもたちも感じていると思います。子どもたちにとっても生きた学びになるでしょう」と高橋さん。矢本東小は、高橋さんからの寄贈分も含めたベルマーク預金で2016年に一輪車9台を購入したそうです。

「ラジオサンキュー」スタジオ前のマーク回収箱
矢本東小にマークやカートリッジを届ける高橋智子さん(右)
リスナーの「山田2号」さんが集計した用紙
矢本東小が購入した一輪車


 「にじの風プラン」も、高橋さんの活動にならい、寄贈先を矢本東小として、集めたマークで同校が希望する品を購入しようとしています。7校で集めたマークは、今年度の1学期分まででいったん集計を終えましたが、その合計は9万点を超えました。年度内には贈呈を行おうと、現在準備が進んでいます。地道な活動が、七色の虹を架けるように、実を結びつつあるのです。

 仕分け・集計にも参加した祖東中の古舘満根教頭は「細かい作業で労力がかかるのに、力が結集するのはすごいこと。絆や地域の力に希望を持っています」。一方、早川校長は、今年4月の赴任でしたが、活動を通じて人と人のつながりが新たに生まれたことを感じたそうです。

 「ちー姉のベルマーク大作戦」は現在、毎週木曜午後に放送され、ベルマークについての情報や被災地の情報などを発信中です。もちろん「にじの風プラン」についても。取材した日は、高橋さんもスタッフと共に祖東中に来て、校長・教頭や伊藤さんにインタビューしていました。

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