被災校への備品寄贈が地域をつなぐ/国際医療福祉大学


(2020/09/08)印刷する

 2014年からベルマーク運動に参加している国際医療福祉大学(栃木県大田原市)が6月、栃木県立栃木工業高校(近藤正校長)に大型扇風機3台を寄贈しました。同大の活動は災害被災校などに備品を寄贈することが目的で、自校のためにベルマーク預金を使ったことは一度もありません。これまでに東日本大震災や九州北部豪雨などの被災校を支援しており、今回で6校目となります。

 活動の中心は大学にあるIUHWボランティアセンター。でもマークの収集などには学校や企業などさまざまな組織が協力し、地域社会を広範囲につないだ活動になっています。コロナ禍のさなか、Web会議システムを使ったミーティングを8月24日に開催していただくなどし、関係者12人から話を聞きました。

左から福田規予子さん、大井工さん、木村一翔さん、大橋理乃さん。IUHWボランティアセンターからWeb会議に参加してくれた

 今回の寄贈先、栃木工高の近藤校長によると、昨秋の台風19号で近くを流れる永野川が氾濫し、校舎の1階が浸水しました。「浅いところで1.6m、深いところで2mも水に浸かり、多くの備品が使えなくなりました」。復旧工事は進んでいますが、グラウンドは今も使用できないそうです。被害を知ったIUHWボランティアセンターから支援の申し出があり、体育館は使える状態だったことから、大型扇風機を希望しました。

 栃木工高は以前から、車いすをアジアの国々に贈る「空飛ぶ車いす活動」、小中学生へのプログラミング教室などのボランティア活動に力を入れていました。今回の寄贈でできた縁を生かし、今後は同大とも連携してユニバーサルデザインをテーマにした研究を進めるそうです。

上段左から時計回りに大石剛史准教授、細貝良行教授、野澤拓夢さん、近藤正校長、大島雅彦さん、和田るみ子教頭


大石剛史准教授(上)の講義が運動参加のきっかけ。専門は、地域福祉やボランティア、福祉教育論

 国際医療福祉大がベルマーク活動を始めたそもそものきっかけは、学内にある保険代理店の株式会社セイフティケアからの提案でした。同社は、ベルマーク協賛会社のあいおいニッセイ同和損害保険(ベルマーク番号92)などの商品を扱っています。社員の橘久人さんによると「かつての上司が、学生向け商品に付いているベルマークを有効活用したいと考え、それを大学に伝えたことから始まりました」。

 その提案を大学側は受け入れ、ベルマーク収集に取り組むことを決定。学生の主体的な活動を促すため、講義で取り上げることから始めました。それが、ボランティアセンター長で、医療福祉・マネジメント学科の大石剛史准教授による「ボランティアコーディネート論」の講義でした。“東日本大震災の現地に行けなくても出来る支援”として、収集がスタートしたのです。

 セイフティケアは現在、ベルマークを効率よく回収するため、春に新入生に配るプリントで証券がベルマーク付きだと案内しています。「親御さんの協力は、欠かせません」と橘さん。同時に欠かせないのが、グループ全体の協力です。“国際医療福祉大学・高邦会グループ”は、国際医療福祉大以外に5つの法人をもつ大きな組織です。グループは、全国で約60の施設を運営し、職員1万2000人、学生1万人を有します。橘さんは「マークを回収することで、陰ながら学生の活動を応援している。運動に関わることが出来てとても嬉しいです」と話しました。

2018年、福島県富岡町立富岡第一中学校に竹馬やボールなどを寄贈した
左から、大井さんと木村さん。ともに豊富なボランティア経験を持つ


 大学のある大田原市に隣接する那須塩原市の市立三島小学校もマークを届けています。自校としてのベルマーク活動は休止状態だったそうですが、IUHWボランティアセンターが活動への協力を要請。趣旨に賛同し、今では5、6年生の福祉委員16人が毎週金曜の朝にマークを回収しています。和田るみ子教頭は、「校内にはボックスを常に置き、気付いたときに入れられるようにしています」と教えてくれました。

 那須塩原市の社会福祉協議会も協力しています。20年ほど前、まだ合併前の黒磯市だった時代からベルマークを収集しており、マークを持ってきてくれる常連の人も多いそう。職員の石崎修裕さんは「コロナ禍でも出来る活動として、10月の社協だよりにベルマークのことを掲載する予定です」。

 文房具や学校用品を販売する有限会社大島くじや(本社・栃木県大田原市)も心強い味方です。全ての取引先に呼びかけ、販売したインク・トナーカートリッジの回収をしています。「企業は本来、利潤を求めるもの。“永続的”にしないと意味を成さない社会貢献活動にはなかなか手を出せませんでした」と社長の大島雅彦さんは振り返ります。しかし東日本大震災を契機に「何かの役に立ちたい」という気持ちが強まり、活動に加わりました。「取引先にも『社会貢献ができている』という意識を持ってもらいたい」と、独自の報告書も作っています。大島さんはこの活動を、“買い手よし、売り手よし、世間よし”の「三方よし」だと例えました。


「人のために何かしたい」と実際に行動する学生が多いそう

 各所で集まったベルマークはIUHWボランティアセンターに集約し、学生ら有志が仕分けます。放射線・情報科学科4年の大井工さんは「センターは入りやすい雰囲気で、授業の合間やお昼によく行く」、同科4年の木村一翔さんは「細かい作業は苦手だけれど、友達となら楽しめた」。薬学科4年の大橋理乃さんは、初めて参加したときには集まったベルマークの量の多さに驚いたそう。理学療法学科2年の野澤拓夢さんは「栃木工高での寄贈式に立ち会いました。とても良い経験になりました」と語ってくれました。

 大石准教授によると、同大は「ボランティアに強い関心を持つ学生が非常に多く、センターがまだなかった1995年の開学直後から自主的な活動が続いている」とのこと。その伝統はしっかり引き継がれているようです。学生のほか、放射線・情報科学科の細貝良行教授も仕分け作業に参加しています。「意外と、黙々とやれて、気分転換になる」と笑います。

2019年、宮城県山元町立山下小学校での寄贈式。「先生から震災時のお話を伺いました。私たちには想像もできない経験をされていた」と福田さん

 収集から寄贈までの一連の流れを支えているのは、ボランティアコーディネーターの福田規予子さん。福田さんは、「ベルマークを通して得られたのは、寄贈先、地域の方々、学生や先生方といったたくさんの人とのつながり」だと強調します。つながりを得るために、自ら動くことも大切にしています。たとえば、三島小は大石准教授や福田さんのお子さんたちの母校で、“ベルマーク自然災害支援活動”への協力を提案したことからつながりが生まれました。

 実は福田さん、いつか孫が生まれたら、学校に行ってベルマーク活動をしてみたいと思っているそうです。「お年寄りが社会の役に立つことを実感でき、コミュニケーションのツールにもなり得るのではないでしょうか」。

 みなさん、お忙しいところ、貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。


(左)仕分けをする細貝良行教授。福島原発事故一時帰宅の際には、福島県内に1カ月間泊まり込み、専門家として被ばく量検査のボランティアをした

(右)2018年の寄贈先、福島県富岡町立富岡第一小学校とは交流が続いている。交流にはミャンマーからの留学生も参加。ミャンマーにはベルマークのような仕組みはないそう

ベルマーク商品

プチポテトコンソメ味

ベルマーク検収

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