2022年4月号 読んでみたい本


(2022/04/11)印刷する

  

児童文学評論家 藤田のぼる

  

絵本

 

『ちからもちのおかね』(中脇初枝・再話、伊野孝行・絵、偕成社)
 土佐の国に伝わる力持ちの女の子の話です。力持ちと評判の男の所に、力比べを挑む相撲取りがやってきます。そこに娘のおかねが臼を軽々と運んできます。動かそうとしても臼はびくともせず、逃げ帰る相撲取り。おかねの怪力は大人になっても変わらず、細い一本道で殿様の行列と会った時は、米俵を積んだ馬を持ち上げて土下座しました。これ以降、「天下御免」となったおかねの活躍は、母親になっても続きます。男のヒーローが多い中で、女の子が活躍する話に光を当てようとする作者の「女の子の昔話えほん」の一冊です。(低学年以上向き、1700円+税)


『ともだち』(内田麟太郎・詩、南塚直子・絵、小峰書店)
 内田麟太郎さんは「ともだちや」シリーズなどでおなじみの「絵詞作家」ですが、詩集を何冊も出しています。その中から「ともだち」をテーマにした詩を集めて、と言えれば簡単なのですが、そこが微妙。例えば、「きんぎょ」という詩の第一連は「きんぎょのなみだは/だれにもみえない/みずとおなじいろだから」というふうに、ちょっと寂しい詩もあるのです。友だちがほしい? 友だちって必要? そんなふうにも感じさせる詩が、南塚さんの陶板絵で見事に表現されています。教室で一つずつ読んであげて、詩の世界を子どもたちにも絵にしてもらったら、楽しいかもしれません。(低学年から、1800円+税)

 


低・中学年向け

 

『クスクスムシシを追いはらえ!』(赤羽じゅんこ・作、筒井海砂・絵、国土社)
 3年2組に、コンクールで優勝した虹ちゃんの絵が、イラストレーターのママに手伝ってもらったのではないか、といううわさが流れだします。沙帆は、親友の虹ちゃんを信じたいものの、今までの虹ちゃんの絵とはタッチが違うような気もするのです。煮え切らない沙帆に怒る虹ちゃんと、落ち込む沙帆。誰にもちょっと覚えのあるような展開ですが、ここからのストーリーは意表をつきます。下校途中で出会った不思議なおじいさんから、教室に発生しているクスクスムシシが変なうわさの元になっていて、それを退治するホンキ鳥を育ててみないかと言われます。「クスクスムシシ」という名づけが絶妙。同じような状況になった時、子どもたちは自分たちの教室にも「クスクスムシシ」がいるのでは、と考え始めるのではないでしょうか。(中学年向き、1400円+税)


『不思議屋敷の転校生』(藤重ひかる・作、宮尾和孝・絵、金の星社)
 4年生の優乃、あかり、翔太、克樹は、幼稚園からの友だちで、4人とも天文部に所属。このクラスに転入してきた八渡玲子はほとんど口をきかず、自分も人と話すのが苦手な優乃には、気がかりなことでした。町には子どもたちが「ばちあたり屋敷」と呼ぶ建物があり、学校の屋上で天文観測ができなくなった4人は、町の一番高いところにあるばちあたり屋敷に目をつけます。そして、研究所のようなその建物が、実は玲子の家だったことを知り、玲子を天文部に誘います。
 ネタバレになりますが、実は玲子は50年近い過去からやってきた少女でした。こうした設定は今までもありましたが、大問題だった公害を克服し、平和な時代が続いていることに驚きを感じている玲子の姿が印象的でした。(中学年以上向き、1300円+税)

 


高学年・中学生以上向き

 

『人魚の夏』(嘉成晴香・作、まめふく・絵、あかね書房)
 これも転校生の話。5年生の新学期に転校してきた海野夏ははっとするほど整った顔をしていますが、性別がわかりません。学校に提出された書類の性別欄にも記入がなく、先生も分からないという中で、一人だけ夏の〈秘密〉を知っているのは知里(ちさと)でした。実は夏は人魚で、大人にならないと性別が確定しないのです。知里がそれを知っているのは、知里の母親も小学生の時、人魚の転校生を迎えたことがあったからでした。というふうに、設定は思いっきりファンタジーですが、夏をめぐるクラスの反応やそこからの展開は、ほとんどリアルな物語を読んでいる感覚です。夏が次第にクラスに受け入れられていく中で、夏の秘密を知っていることの重さに悩む知里。男子・女子であることがそんなに決定的なことなのか? この物語からはそんな問いかけが聞こえてくるようです。(高学年以上向き、1300円+税)


『タブレット・チルドレン』(村上しいこ・作、かわいちひろ・絵、さ・え・ら書房)
 学校で子どもたちに一台ずつタブレットが配られるというのは、どこまで進められているのでしょうか。この物語の中学校ではとっくにそれが済んでいて、2年生のクラスでこれを使った課題が出されます。二人一組で、タブレットの中で「子育て」をしなさいと言うのです。ペアの組み合わせもAIが決めるということで、心夏(ここな)のパートナーは高橋温斗(あつと)。心夏いわく「私の顔がいちご大福なら、温斗の顔は焼きすぎたさつまいも」という、がっかりな相手でした。そして、タブレットの画面に現れた「子ども」は、マミと名乗る11歳の女の子で、その生意気な応答が心夏をいらだたせます。
 現実の心夏はクラスでは友だちがかろうじて一人、家にはマミと同じ6年生の妹がおり、母親は手のかかる妹にかかりきりで、そのことも心夏のストレスの大きな要因でした。マミとのやりとりの中で、自分の母親への感情に気づかされたり、温斗のマミへの対応に驚かされたりというプロセスもおもしろいのですが、このゲーム(?)に対するクラスの他の子たちの受けとめも様々で、いかにも今どきの中学生らしいと感じさせます。そうしたリアリティとやや近未来的な設定が微妙に交錯する、独特な味わいの作品でした。(高学年・中学生以上向き、1400円+税)

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