2021年10月号 読んでみたい本


(2021/10/11)印刷する

  

児童文学評論家 藤田のぼる

  

絵本

 

『みつ』(timatima作・絵、金の星社)
 タイトルの「みつ」は、もちろん「密」。今もっとも避けなければならないと、多分子どもたちも毎日のように言われている「みつ」。動物たちが楽しそうに遊んでいて、みんなが集まってきます。そこに天の声のように(画面いっぱいの)「みつ」の文字。とたんに動物たちは退き始めます。コロナ禍を絵本にするのは難しかったでしょうが、子どもにとっては魔法の言葉のようでもある「みつ」をモチーフにして、今を取りまく不条理を吹き飛ばすようなエネルギーを感じさせてくれます。(低学年から、1300円+税)


『The Booyoo Tree』(斉藤隆介・作、滝平二郎・絵、アーサー・ビナード訳、岩崎書店)
 この欄でこの種の本を紹介するのは多分初めてだと思いますが、表紙写真をご覧いただければわかるように、『モチモチの木』の英訳版です。ぱっと見違和感がありますが、考えてみればわたしたちはグリム童話などを当たり前のように日本語で享受しているわけですから、豆太とじさまの物語が英語になってもいいわけです。訳者のアーサー・ビナードさんは日本語の達人でもありますが、翻訳する中でさまざまな発見があったと聞きました。また、日本語のテキストがかなり長いので、ぎりぎり短くするよう苦労したとも語っていました。教室の子どもたちに、日本語と英語両方の暗誦をさせてもおもしろいのでは、とも考えました。(中学年から、1800円+税)

 


低・中学年向け

 

『よみもの なないろどうわ』(真珠まりこ作・絵、アリス館)
 「あかいりんご」から始まり、「むらさきの時間」で終わる七つのお話。例えば五つめの「青い川」では、さるとうさぎとくまが川で舟に乗っています。「もしもわたしがすごくいじわるなかおになったら、どうする?」「もしも舟のそこにあながあいたら、どうする?」と質問ぜめのうさぎに、「やさしいかおになるまでにらめっこ」「ぼくのしっぽでふたをするよ」と答え続けるさる。オールを漕いでいたくまが大きなくしゃみをして、「くよくよごっこはもうおしまい」と、みんなでおやつを食べ始めます。『もったいないばあさん』の真珠さんの絵本『なないろどうわ』が、絵本だけではもったいない?と、幼年童話版になりました。一人で読んでも、大人が読んであげても、どちらでも楽しめそうです。(低学年向き、1400円+税)


『この世界からサイがいなくなってしまう』(味田村太郎・文、学研プラス)
 動物の世界で“最強”ともいえるサイですが、主な生息地のアフリカでは1970年からの25年間で、7万頭いたクロサイが2400頭にまで減り、このままでは20年後にはアフリカからサイがいなくなってしまう、とも言われています。その原因は密猟です。サイの角が薬として高く売れるのです。世界のサイの80%が生息する南アフリカ共和国で、NHKの記者として4年間滞在した著者は、こうしたサイの密猟の実態と共に、サイを守るための活動をしている人たちや、ips細胞を使って絶滅から救おうとしている試みなどを取材してきました。絶滅動物についての本はいろいろありますが、この本は「アフリカでサイを守る人たち」の副題が示すように、まさに最前線での戦いの現況を知らせてくれます。(中学年以上向き、1400円+税)

 


高学年・中学生以上向き

 

『ぼくらのスクープ』(赤羽じゅんこ・作、浮雲宇一・絵、講談社)
 5年生の井田敦也が学級新聞を作りたいと思ったのは、社会科見学で新聞記者から、自分が記者になりたいと思った子ども時代の話を聞いたからでした。クラスで提案したものの、新聞係に手をあげたのは、パソコンが得意でレイアウトに関心があるらしい堤奏太だけ。第1号の反応がいま一つだった敦也は、通学路の途中の家でピンポンダッシュの犯人にまちがわれたことで、真犯人をつかまえて2号の「スクープ」にしようと張り切ります。しかし、そのための張り込みが近所からの苦情という結果になってしまい、他にもネタを見つけるものの、肝心の当事者が書いてほしくなかったりと、うまくいきません。
 一つのできごとをめぐっての立場や見方の違いなど、5年生の子たちが新聞作りを通して今まで気づけなかったことに目を開かせていくプロセスにリアリティがあり、日常の陰にいろんなドラマがあることを実感させてくれる物語でした。(高学年向き、1400円+税)


『帰れ 野生のロボット』(ピーター・ブラウン作・絵、前沢明枝・訳、福音館書店)
 この作品の魅力をどう説明したらいいでしょうか。そもそも「野生のロボット」というのが形容矛盾ですが、読み進めていくと、確かにそう表現するしかないのがわかります。 主人公は、農場に配達されてきた一台のロボット。妻に先立たれた農場主のシャリーフさんは、二人の子どもを抱えて、ロボットを導入することにしたのです。ロズと名乗ったロボットは、早速完璧に仕事をこなし始めますが、実はロズは重大な秘密を抱えていました。ロズはかつて箱に入ったまま無人島に流れ着き、そこで動物たちの言葉を身に着けたばかりか、ガンのひなを育て、その“母親”になったのです。農業用ロボットとして蘇生したロズの願いは、だから再びあの島に戻ることでした。しかし、体の中の発信機のため、農場から出ることができません。ロズが協力者として選んだのは、シャリーフさんの二人の幼い子どもたちでした。
 前半は、農場で働くロズの姿、そして後半は農場を脱出したロズと“息子”のガンのキラリとの冒険行という構成ですが、自分は果たして何者なのか、自分の求める幸せは何なのかと悩むロズの姿に、哲学的ともいえる問いを感じました。前作『野生のロボット』の続編ですが、こちらから読んでもまったく大丈夫。でも、絶対前編も読みたくなります。 (高学年から、2000円+税)

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