2018年6月号 読んでみたい本


(2018/06/11)印刷する

  

児童文学評論家 藤田のぼる

  

絵本

 

『とびますよ』(内田麟太郎・文、にしむらあつこ・絵、アリス館)

 「とびますよ とびますよ ほらほら そらを とびますよ」と、まるで呪文のような軽快な言葉で始まる、この絵本。小鳥が空を飛び回るのを、ぶたがうらやましそうに見上げています。こうなれば、次のページでは、もちろん……。こうして、ことばと絵に誘われるように、いろんなものが飛び上がります。次になにが飛んで、それからどうなるのか。ページをめくるごとにドキドキできる、絵本の醍醐味満点の一冊です。(低学年から、1300円+税)


『めしくわぬにょうぼう』(常光徹・文、飯野和好・絵、童心社)

 飯をくわない女房ならほしい、と思うけちでよくばりな男のもとに、「飯はいらないから家においてくれ」とやってきた美しい娘。確かに一口も食べませんが、なぜか家の米が減っていきます。不審に思い、仕事に出るふりをしてそっとのぞいてみると……。おなじみの民話が、飯野和好さんの絵で新たな命を吹き込まれました。怖い、おもしろい、おかしい、怖い……。5月の節句の由来話という結末ですが、そうした枠組みを越えて、読む者のさまざまな感情をひきださずにはおかない、存在感抜群の絵本です。(低・中学年から、1300円+税)


『とってもなまえのおおいネコ』(ケイティ・ハーネット作、松川真弓・訳、評論社)

 はなさき通りの家々を渡り歩く1ぴきのネコ。グリーンさん宅ではアーチ―と呼ばれ朝ごはんをもらい、ホスキンズ夫妻の家ではオリバーと呼ばれ、お茶をいただく。家ごとにいろんなことをして、いろんな名前で呼ばれます。ネコが姿を見せなくなり、みんながやっと見つけたのは、この通りでただ一軒ネコが行かなかったはずの、一人暮らしのマレーさんのお宅でした。ネコが主人公のようで、この通り自体が、そしてそこに住む人たちが主人公のような、ほほえましい世界です。(低・中学年から、1400円+税)

 


低・中学年向け

 

『コクルおばあさんとネコ』(フィリパ・ピアス作、前田美恵子・訳、徳間書店)

 これもネコの話。こちらはコクルおばあさんと暮している黒ねこのピーター。コクルおばあさんはロンドンの町の風船売りで、高い高い家の最上階に住んでいます。部屋の天井にはね窓があり、そこから屋根に上がって町を眺めるのが、コクルおばあさんもピーターも大好きでした。ところが、悪天候が続き、生の魚を食べられなくなったピーターは家出をしてしまいます。心配のあまりやせてしまったおばあさんは、風船を持ったまま風に吹き飛ばされて、思いがけない冒険に。『トムは真夜中の庭で』などの作者の、ちょっとユーモラスで味わい深いストーリーです。(低・中学年向き、1300円+税)


『消えた時間割』(西村友里・作、大庭賢哉・絵、学研プラス)

 真子や明日香の4年生のクラスの池田先生は、毎週金曜日に翌週の詳しい学習予定を載せたプリントを配ります。ところが先週の金曜日、ロッカーの上にあった墨汁が配る前の予定表に垂れてしまって、何人かは黒いシミのついたプリントを受け取ることになりました。真子は、月曜日の持ち物の「絵の具」のところに、明日香は木曜日の「地図」というところに墨汁が垂れたのですが、本当に絵の具や地図を使わないことになったのです。この話を耳にした子たちにも同様のことが起こるのですが、この墨汁は妙法寺の前で拾われたもので、実はこの寺には墨汁に関わる言い伝えがあるのでした。ちょっとした不思議がまるで墨汁のシミが広がるようにじわじわと広がっていくプロセスにリアリティがあり、さまざまなドラマが生まれていきます。(中・高学年向き、1300円+税)

 


高学年・中学生向き

 

『さよなら、おばけ団地』(藤重ヒカル・作、浜野史子・絵、福音館書店)

 老朽化や高齢化などの問題に直面している団地も少なくないようですが、この作品の舞台の桜が谷団地も、すでに取り壊しが決まっています。特に「旧番地」と呼ばれる奥側の三十棟は、とっくに無人となっていて、新番地の住人もあまり足を踏み入れることはありません。ここは別名「おばけ団地」とも呼ばれていますが、実はまだにぎわっていた頃からいろいろなうわさがあったのでした。新番地に住む結衣が久しぶりに旧番地に「探検」に行き、不思議な子どもたちと出会う第一話「おくりっこ」、子ども時代をここで送り、小学校の先生として戻ってきた里村先生が、かつての思い出と出会う「黒マントの男」など、5話からなるオムニバス風な構成になっています。時間の記憶が「物語」になっていくプロセスを目の当たりにするようで、この作品は大人にも子どもにも読んでほしいと思いました。(高学年以上向き、1400円+税)


『わたしの空と五・七・五』(森埜こみち・作、山田和明・絵、講談社)

 中学に入学したものの、クラスでなかなか友だちができず、部活の選択にも迷う空良(そら)。下駄箱に入っていたチラシに誘われて文芸部の部室に行ってみると、3年生が二人だけで廃部の危機。先に1年生の小林静香が入部していましたが、空良は踏み切れません。さらに入部者を増やそうと、句会が計画され、空良も無理矢理3点の俳句を作ることになります。近年流行りの「部活もの」なのですが、空良や他の子たちの心の風景と、彼らが作る俳句とが実にマッチしていて、3年生による講評も含めて、俳句を作ったり、読まれたりするドキドキ感がストレートに伝わってきます。テレビの某番組で、芸能人の作る俳句への切れの良い評が話題になっていますが、あえてその中学生版といっても、この作品は許してくれそうです。(1400円+税)

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