ナレーター(茂森晶子) 昔々、と言ってもベルマーク活動が始まってから、50年程度なので、さほど昔ってことも無いんですから、ちょっと昔ですかね、あるところに、子供さんたちのために、日々ベルマーク活動をとても熱心に行っている、美しい娘「ベルさん」と、油ばっかり売っている「マークさん」がいました。2人は、それぞれ住む村の住人たちにお願いしてベルマークを集め、集計したものを持ち寄って、財団に送っていました。
ベルさん(恒藤涼子) 大分ベルマーク集まったけど、仕分けは出来ている?
マークさん(尾西亜佳音) あ、あたりまえやん!出来てるで。
ベルさん そう、じゃ、明日集計をしましょうか。
マークさん あ、明日やね、ええでぇ。
[ベルさん上手から(客席から見て右手に)退場。残ったマークさん顔面蒼白‥]→スポット
マークさん ガァーン!ど、どないしょ〜。ついつい面倒くそうて、ほっとっとたら、えらいことになってもうたわぁ。しゃあない、肌にはよおないけど、今夜は徹夜でもしたろか。
〔マークさん下手に退場〕→照明少し落とす
ナレーター そして次の日。2人は、それぞれ待ち合わせの場所に向かっています。最初にやってきたのは、マークさん。
〔照明戻す〕
マークさん あぁ、こんなにクマが出来るまで頑張ったけど(★熊の切り抜き・普通のクマとツキノワグマ・を目の下に持ち)いっこも出来んかったわ。困ったなあ、どないしょお。
<BGM>水、滝の音 〔マーク滝つぼに気付き〕
マークさん そや!ええこと思いついたわ、この滝つぼに捨ててもたろ!ベルに落としたゆうたらかまへんやろ。
<BGM>ドッボーン!
ナレーター まあ!なんて悪知恵が働くのでしょう!どんどん沈んでいくベルマークを満面の笑顔で眺めているマークさん。せっかく村の人たちから頂いたベルマークなのに。さぞ、ベルさんはがっかりすることでしょう。そう言っていると向こうからベルさんが歩いて来ましたよ。
〔ベルさん上手から退場。マークさん小枝を持って隠れる〕
ベルさん 今回も村の人たちのおかげで、こんなにたくさんのベルマークが集まったわ。1枚1枚仕分けするのは大変だったけど、子供たちのためになるなら‥きゃあ!!
〔ベルさん、滝の横でつまずいてしまい、その拍子に持っていたベルマークの箱を滝つぼに落としてしまう〕<BGM>ボチャン!
ベルさん どうしましょう!!大切なベルマークが‥。
ナレーター 悲嘆にくれるベルさん。すると不思議なことが。
<BGM>〔何か幻想的な曲で 滝つぼの精が登場〕
滝つぼの精(湯本浩一) これこれ何を泣いているのですか?
ベルさん 〔ビックリして〕あ、あなたわ?
滝つぼの精 私は、滝つぼの精。そろそろ昼寝でもと思っていたら、なにやら落ちてきたのです。
ベルさん ごめんなさい。きっと私が落とした箱です。返していただけますか。
滝つぼの精 そうでしたか。では、お前が落としたのは、この金の箱ですか?それとも銀の箱ですか?金なら1枚、銀なら5まぁ〜い。
ベルさん そんな箱じゃないんです!私が落としたのは、ただの箱です。
滝つぼの精 まあ、なんと欲の無い正直者なのでしょう。そんなお前には、この金の箱と銀の箱をあげましょう。それからこの秘密道具も特別につけてあげましょう。
<照明落とす>
ナレーター 渡された金・銀の箱を見たベルさんはビックリ!
〔ここからプロジェクターを使いながら〕
金の箱に入っていたのは(写真)協賛会社毎に同じ点数で10枚ずつホッチキスで留められたたくさんのベルマーク。(写真)銀の箱に入っていたのは、同じ点数ごと10枚10段できちんと台紙に張られたたくさんのベルマーク。
<舞台の2人にスポット>
ベルさん まあ、これなら計算しやすいわ。ところで、滝つぼの精さん、これは?
滝つぼの精 それはね‥
〔ナレーターに代わり〕→舞台上照明落とす
ナレーター これは、収集袋(写真)。チャックつきのナイロン袋にハトメ鋲(びょう)を付け、カードリングに通したものです。協賛会社1社につき1枚用意し、袋には会社名を書きます。財団から送られてきた一覧表を切って張りつければ、なお分かりやすいでしょう。これを回覧用の袋に名簿と一緒に入れて(写真)、各クラスで回してもらいます。子どもたちは、各家庭で集めていたベルマークをそれぞれの袋に仕分けして入れ、次の友達に渡します。そして集計日に回収されたベルマークを、(写真)ナイロン袋から直接協賛会社ごとの箱に移し換え集計していきます。小宅小学校は、児童数が900人を越えるのでかなりの枚数が集まりますが、この袋を使うことで、ベルマーク担当役員が仕分けをしなくても良くなり、作業がかなり軽減されます。
<照明戻す>
ベルさん まあ、なんて便利な道具でしょう。これを村の人たちで回してもらえればよいのですね。滝つぼの精さん、ありがとう。
〔ベルさん上手に退場〕
滝つぼの精 〔見送りながら〕頑張るんですよ。
〔滝つぼの中に消える〕
〔マークさん下手から登場〕
マークさん は、は、は、見たでえ見たでえ、ええなあ、私も欲しい!
〔マークさん、湖に向かって〕え〜っと、誰だっけ・・。た・たた、たこ焼きの精さあ〜ん。
たこ焼きの精(内海武彦)
〔★たこ焼き頭のたこ焼きの精登場〕へい、らっしゃい!
マークさん だ、誰やねん!
たこ焼きの精 たこ焼きの精でんがなぁ〜。
マークさん ちゃうちゃう!あんたとちがうがな。はよ帰って。
〔たこ焼きの精・退場〕えらいもん呼んでもたがなぁ。え〜っと誰やったかなあ‥。た・た・た、そや!蛸壺(たこつぼ)の精さあ〜ん。
蛸壺の精(田渕和幸)
〔★蛸壺をかぶった蛸壺の精登場〕たこたこ、つぼつぼ〜。
マークさん またなんや、変なのが出てきてもうたぁ。あんたは誰やねん!
蛸壺の精 滝壺の精でんがな。
マークさん あんたもちゃうがな!はよ帰れ!
〔蛸壺の精・退場〕なんや変なのばっかり呼んでしもうた。よ〜思い出そ。「た」で始まるんは間違いないねん。た・た・た・た‥。そや!滝つぼの精!滝つぼの精さあ〜ん、出てきてぇ。私も落し物をしましたぁ〜。
滝つぼの精 〔滝つぼの精、かなり面倒くさそうに登場〕誰です。やっと昼寝が出来ると思ったのに‥。
マークさん 私ですぅ。この滝つぼの中に落し物をしました。返していただけます?
滝つぼの精 とっても聞きたくないんだけど‥、仕方がないから聞いてあげましょう。お前が落としたのは、この金の箱?それともこっちの銀の箱?
マークさん どっちもでえ〜す。ついでに収集袋も落としましたぁ
滝つぼの精 まあ、なんて強欲なうそつきヤローでしょ!そんなお前には、お前が捨てたバラバラのベルマークを100倍にして返してあげましょう。1人で仕分けなさい。それと、滝つぼに捨てられたゴミもあげるから、持ってお帰り!
〔と、滝つぼの裏から★ベルマークのたくさん入った袋を取り出し、マークの頭の上にドサッと!落とし、すました顔で滝つぼに消える〕
マークさん いやあ〜!!!
→マークにスポット→フェイドアウト
<その後、舞台に全員集合>
=5月14日、姫路キャスパホールで
関西弁で掛け合い、たこ焼き、蛸壺の精も
小宅小の寸劇に会場大爆笑
たつの市立小宅(おやけ)小学校PTAが5月14日、兵庫県姫路市で開かれたベルマーク運動説明会で、ベルマーク活動をテーマにした寸劇を披露し、絶賛されました。ベルマーク活動の体験発表をイソップ寓話の「金の斧」をモチーフにした芝居に仕立てたもので、予想外の展開にお母さんたち220人もびっくり、そして爆笑、と会場は大いに沸きました。
物語は脚本(別稿)の通りですが、ベルマーク活動に熱心なベルさんと油ばかり売っているマークさんを主人公に展開します。滝つぼの精から正直者のベルさんに、整理されたベルマークの入った金の箱、銀の箱と秘密道具が贈られ、怠け者のマークさんにはお仕置き、正直者が報われる、というお話です。
ポイントは滝つぼの精からベルさんに贈られた秘密道具。舞台が突然暗くなりスクリーンに秘密道具の映像が現れるのも、それを強調するためです。秘密道具とは小宅小独特の収集袋のことで、子どもたちは自宅で協賛会社ごとの袋にベルマークを入れ、翌日学校に持ち寄り次の児童へとクラスで回覧していきます。仕分けされた状態でPTA側に戻り、担当者は協賛会社ごとに集計するだけでよいのです。児童900人を超え収集量も多い小宅小で、お母さんたちの作業を軽減するために生み出された方法です。

脚本を書き監督を務めたのは、ベルマーク担当のPTA事業部長を08年度に務めた寺田ゆかりさんです。寺田さんは「一度別の脚本を書き上げたのですが、自分でも納得いかず、悩んでいたときに、突如、天からなにかが降りてきたように、(このストーリーが)ひらめいたのです」。
「2年前のことがあるので大変なプレッシャーでした」と寺田さん。2年前のこととは、小宅小が2007年、ベルマーク運動説明会姫路会場で今回と同じく体験発表をしたことを指しています。このとき、寺田さんは参加していませんが、テレビのクイズ番組「アタック25」を模したベルマーククイズの舞台が全国的に評判を呼びました。
脚本が出来たのは開演1週間ほど前。出演者らの要望を入れて最終稿が完成したのが前日。その夜、学校の体育館で通しけいこを1時間半ほどし、説明会開始直前の10分間ほど、初めて舞台で音響、照明、声合わせをして本番を迎えました。
出演者、スタッフは湯本浩一PTA会長ら9人(うち5人は女性)。2年前の経験者は約半数で、その一人が09年度書記の内海武彦さん。消防署に勤め、ゴレンジャーの格好をして子どもたちに防火の啓発活動をしており、小宅小学校出演チームの団長格です。
大道具小道具は広報部長の三宅揚子さん。ダンボールなどで滝つぼのセット、たこ焼き、蛸壺などの扮装などを作りました。08年度会長の真殿雅彦さんは映像、BGMを担当。尾西亜佳音さん演じる怠け者のマークさんがお仕置きを受ける場面で「ヒュールリ ヒュールリララ ききわけのない女です」と、森昌子さんの「越冬つばめ」が流れ、会場大爆笑。
一種の教訓劇ですが、そこは関西人、遊び心は満載です。たこ焼きの精が「へい、らっしゃい」とたこ焼き姿で登場したり、蛸壺(たこつぼ)の精が踊りながら「たこたこ、つぼつぼ」と奇声を発したりすると、会場は大笑い。
「だ、誰やねん あんた!」「たこ焼きの精でんがなぁ〜」「ちゃうちゃう、あんたとちがうがなあ、はよ帰って」。
寺田さんの「アドリブを、がんがんと」の指示の通り、関西弁というか播州弁というか地言葉がボンボン飛び出し、なにやら吉本新喜劇の趣も。あちこちに見せ場をつくり、しっかりと笑いをとっていました。
約10分間の寸劇といえ筋立て、セリフ、演技とも本格的で、BGM、ピンスポット照明などきめ細かく、ぶっつけ本番とは思えぬ秀逸な出来栄え。尾西さんやベルさん役・恒藤涼子さん、ナレーター・茂森晶子さんら女性陣は「本番に強いですから」。フイナーレには全員が勢ぞろいし、万雷の拍手を受けていました。姫路市のおかあさんは「抜群に面白かった。それにしても、すごお〜い!」と感心していました。
寺田さんは「(ベルマーク説明会に)せっかく来てくれたのですから、お母さんたちに楽しんで帰ってもらわなくちゃ、と思いました」と話していました。
《写真上から》
・滝つぼの精から、ごほうびにベルマークの秘密道具を受け取るベルさん
・フィナーレで出演者勢ぞろい=いずれも5月14日、姫路キャスパホールで
・前夜13日は小宅小学校体育館に集まり練習。脚本の寺田かおりさん(左から2人目)を中心に熱心に打ち合わせが行われました |