土の塔を作って土砂崩れを学ぼう/広島・郷原小で防災科学教室


(2024/11/12)印刷する

 広島県呉市にある市立郷原小学校(大塚加奈校長、児童186人)で10月19日、防災科学教室が開かれました。ベルマーク財団と国立研究開発法人防災科学技術研究所(防災科研)が、運動参加団体向けに共催している教室で、講師は防災科研の研究者が務めます。

 郷原小の保護者と、郷原地区子ども会連合会が企画する「リーダー研修会」のプログラムのひとつとして、児童と保護者合わせて約70人が授業を受けました。

お話をする防災科研研究員の檀上徹さん
檀上さんの問いかけに手を挙げて答える子どもたち

 講師は、水・土砂防災研究部門の主任研究員、檀上徹さん。土砂崩れの予測に向けた研究が専門です。実験や現場での計測を通して、雨が降ったときの地中の変化を予測技術の開発に生かす仕事をしています。今回の教室開催にあたって、郷原小から「呉市は西日本豪雨で被害を受けるなど土砂災害の起こりやすい地域のため、災害の備えを考えられる子になってほしい」と要望があったため、土砂災害のしくみや備える方法を檀上さんのお話と実験を通じて学ぶことになりました。題して「土は強くもなり弱くもなる 土砂崩れがなぜ起きるのか一緒に考えよう」です。

授業が進むにつれ、積極的に発言する子が増えてきた

 教室は、動画を見て、「土砂崩れとは何か」を考えることから始まりました。大量の土砂が山から流れ出る現場を映した動画です。大きな力が働いていることが見てとれます。檀上さんの解説を聞くと、土砂崩れには種類があることが分かりました。がけ崩れ、土石流、地すべりの3種類です。

 次に土砂崩れがなぜ起きるかをクイズで学びます。子どもたちへの質問は「雨、地震、風、風化の中で、土砂崩れが一番起きる要因はどれでしょう?」。答えは「雨」です。その後もクイズを通じて、雨粒の形や大きさ、落ちる速さを学びました。大きい雨粒が落ちる速さは、秒速8.3m。これは原付バイクの走るスピードと同じくらいです。その雨が、山地に降り続けて起こるのが土砂崩れ。日本は世界でも有数の多雨地域であるだけでなく、梅雨や台風などでまとまって降る特徴があり、そのことが土砂崩れ発生の頻度の高さに影響しているそうです。

 ここからは実際に手を動かして、土の塔「ソイルタワー」を作る実験です。ねらいは「土が水によって強くなったり弱くなったりすることを体験してもらうこと」。7班に分かれて、5段積み上げることを目標に実験スタートです。

乾燥した土に水を注ぐ
注ぐ水の量を増やしていく
容器にぎゅっと詰める

 バットに入った乾燥している土に、少しずつ水を足していきます。初めから勢いよく水を注ぐ子もいれば、「どこまで水を足せばいいの?」と心配そうにしている子もいて、班によって作戦はさまざまです。混ぜたら、円柱の容器に詰めて固め、逆さにして取り出します。1回目から上手く形作るのは難しいようでしたが、何度か繰り返すと、水の量や詰め方によって土の強さが変わることが分かってきました。ある児童が「追い水しよう」と言うと、その言葉をヒントに、他の班も続々と水を足し始めました。水を入れすぎた班は土を足して調整します。

 強い土が出来上がると、最初は不安がっていた子どもたちも積み上げることに夢中になりました。見事5段の土の塔を作った班もありました。

うまく容器を抜けるかな
上手に積み上がった
4段目を慎重に積み上げる

土の塔を作って土砂崩れを学ぼうgif

 実験によって、適度に水分を含んだ土は強く、水分が多すぎると弱くなってしまうことを理解できました。実際の山でも同じように、たくさんの雨が降ると地面が弱くなります。雨が降り続けて、「滑ろうとする力」が「抵抗力」を超えてしまうと、土砂崩れにつながるのです。

7班に分かれての実験は大いに盛り上がった

 最後に檀上さんが伝えたのは、土砂崩れから命を守る方法です。子どもたちと一緒に確認したのが「ハザードマップ」。ハザードマップの「土砂災害警戒区域等」は特に危険性の高い場所を表しており、約7割の土砂災害がその区域内で発生しているそうです。

 しかし、土砂災害警戒区域に設定されている斜面の中で、すでに工事などの対策が済んでいるのは約2割にとどまっているといいます。だからこそ、日頃からハザードマップを確認し、危険な場所を避けることが大切になるのです。

 授業を受けた児童は「抵抗する力と滑る力の関係は知らなかったので、勉強になりました」「自分の家が土砂災害警戒区域だったので、非常食を準備しようと思いました」と感想を話してくれました。楽しい実験と、檀上さんの分かりやすいお話を通じて、災害に備える必要性を学べた授業でした。

 現在、防災科学教室の開催希望校を募集しています。災害の起こる仕組みや備えなどを学ぶ教室で、費用は無料です。希望する参加団体は、財団ホームページにある開催申込書に必要事項を記入し、希望日の1ヵ月以上前までに、ファクスまたは郵送で財団に送ってください。講師のスケジュールと合わせるため、実施日は調整させていただく場合があります。お問い合わせはベルマーク財団(03-5638-2320)まで。

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