「防災とは、災害から生き残ること」/山口・下関市立江浦小で防災科学教室


(2022/12/05)印刷する

 国立研究開発法人防災科学技術研究所(防災科研)とベルマーク財団が共催する「防災科学教室」が10月4日、山口県下関市の市立江浦小学校で開かれました。子どもたちの防災リテラシー向上を目的として2018年度に始まった事業で、今年度4校目の開催でした。防災科研広報・ブランディング推進課の今野公美子さんから届いたレポートを紹介します。

 講師は、宮城県栗原市にある栗駒山麓ジオパークの専門員、鈴木比奈子さんです。9月末まで防災科研の研究者として、災害事例をまとめたデータベースを作る仕事などをしていました

 教室は、全校児童数253人を低学年と高学年の3学年ずつに分けて実施。地域で起こりやすい災害をハザードマップで調べる方法や、防災リュックに入れておきたいグッズなどを紹介しました。

講師を務めた鈴木比奈子さん

 「防災とは、災害から生き残ること」。鈴木さんの強いメッセージから講話が始まりました。日本は自然災害の起こりやすい国です。陸と海の4つのプレートの境目にあるため地震が多く、津波に見舞われることもあります。温暖で多湿なので風水害は毎年のように起こり、冬には雪も降ります。「みなさんには、どんな場所で、どんな災害にあっても、生き残れる人になってほしいです。死んでしまったら、どうにもなりません。さまざまな災害のことを、しっかり勉強してください」

 地域によって起こりやすい災害は異なるため、住んでいる地域、旅行先などの情報を知ることは大切です。どこで、どのような災害が起こりやすいか調べる方法の一つが、地図を見ることです。鈴木さんは、彦島地区の地形がわかる地図を見せました。江浦小の高さ(海抜)は3.9mで、山に囲まれた平らな土地に建っており、洪水や高潮で水に浸かりやすい土地であることが読み取れます。

 具体的にどの地区で被害が起こりやすいのか、どこに避難したらいいのか、などを調べるのに役立つのが「ハザードマップ」です。鈴木さんは、市役所から提供してもらった彦島地区のハザードマップを広げて子どもたちに見せながら説明しました。下関市では高潮、土砂災害など、複数種類のハザードマップを発行しています。ハザードマップによると、同校のある地域は、高潮では1~2mの浸水深が想定されていること、校区では土砂災害が心配な場所もあることがわかりました。


 注意が必要なのは、災害が起こりそうなときに避難する場所です。江浦小は、土砂災害のときは避難場所に指定されています。しかし、高潮のときは、避難場所には指定されていません。「高潮のときは江浦小学校ではなく、もっと高いところに避難してください。災害の種類によって避難場所が違うことも、ぜひ覚えてください」

 最後に、避難するときなどのために備えておくグッズを説明しました。鈴木さんはぬいぐるみ型のリュックの中から、さまざまなグッズを取り出します。ラジオ、ヘッドライト、電池、水、ラップ…。「自分の好きなリュックの中に、必要なものを入れてください。トランプなど遊ぶ道具もあるといいですよ」。「ラップは何に使うの?」という質問がありました。「避難所でおにぎりなどが配られるかもしれないから、汚れた手で触らないようにするために使えます。避難所で使う食器にラップを敷けば、洗い物も少なくなるので便利です」

 避難所で過ごすとき、危ない目にあわないようにするための注意もありました。「プライベートゾーンといって、水着でかくれる部分はほかの人に触らせてはいけません。男の子のような服装をするほうがいいです。トイレに行くときは一人では絶対に行かないで『連れション』してください」

 授業後、5年生の子どもたちに感想を聞くと、「当たり前のことだけど『死なない』ということを改めて実感した。防災グッズを持っても、対策をしても、死んでしまったら意味がない。教えてもらった以外のグッズも調べてみたい」、「驚いたのは、『ぬいぐるみ』に心を癒したり、落ち着く効果があったりすること。こういう備えも必要なんだなと学んだ」との声がありました。講話を通して、防災を「自分に関係のあること」として認識できたようです。

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