Dr.ナダレンジャーと松川杏寧さんの防災科学教室/京都府立盲学校


(2022/09/06)印刷する

 納口恭明さんは防災科学技術研究所を退職されましたので、現在は授業のお申し込みを受け付けておりません。

 お申し込みの際は開催内容(希望されるテーマ)をご提案ください。

 ベルマーク財団と国立研究開発法人 防災科学技術研究所(防災科研)が共催している防災科学教室が7月12日、京都市北区にある京都府立盲学校(山下融子校長、児童・生徒36人)の体育館で開かれました。この教室は、防災科研の研究者が講師となり、自然災害のための備えなどを学べるもので、2018年から開催しています。

 今回は小学部の3人と中学部の6人に、雪崩研究が専門のDr.ナダレンジャーと助手のナダレンコ、災害過程研究部門に所属する松川杏寧さんが授業をしました。

 授業は50分間ずつの2部制。前半はDr.ナダレンジャーこと納口恭明さんと、助手のナダレンコこと罇(もたい)優子さんが講師です。金色とピンクのかつらをそれぞれ身に付け、メガネに地下足袋というあやしい出で立ちで登場するのがふたりのお約束。「全身真っ黒で、金髪とピンクのアフロヘアですが、かつらです。絶対に言っちゃダメですよ。内緒ですからね」と細かく説明すると、笑いが起こりました。弱視や全盲の子どもたちにも「変身」している姿が伝わったようです。

Dr.ナダレンジャーこと納口恭明さん(左)と助手のナダレンコこと罇優子さん

 子どもたちと距離を縮めるためにいつも披露するのが皿回しです。ナダレンジャーが子どもたちに細長い棒を渡し、まっすぐに持ってもらうと、その上に回した皿を移していくのです。子どもたちは慎重に受け取り、見事全員が成功。ナダレンジャーの不思議な世界に引き込まれていきました。

皿回しをしてコミュニケーションをとる

「突風マシン」を使えば、簡単に突風を起こせる
ナダレンジャーが発明した「ナダレンジャー0号」を使って雪崩の疑似体験

 突風や雪崩の実験もしましたが、特に反応が大きかったのは地震の実験。1人につき1本、細長いスポンジが渡されました。スポンジを建物に見立てて、手で揺らして地震を起こすことで揺れの周期を学ぶ実験です。スポンジには下から「ゆ」「は」「う」という赤い字と、その位置に合わせた黒い線が書き込まれています。赤い3文字は異なるリズムの頭文字で、ゆっくりとした「ゆーらーゆーらー」、リズミカルな「はいはいはい」、激しく揺らす「うぃー」を意味します。一方の黒い線は、そこが大きく揺れる場所です。

 「ゆ」の黒い線を持って高層ビルを再現し、「ゆーらーゆーらー」と揺らして観察すると、大きく揺れました。スポンジを建物に置き換えると、高いビルは周期の長い揺れのときに、低いビルは周期の短い揺れのときに大きく揺れることが分かります。地震の揺れの周期と、建物の固有周期が一致すると起こる「共振現象」を体感しました。

スポンジを使って「共振現象」を学ぶ実験
発泡スチロールのブロックを積み上げて、大きく揺らしてみよう

 後半の授業は、中学部の生徒向けです。講師の松川杏寧さんは、災害が起きたときなどに、どうすれば安全・安心に過ごせるかといったテーマを専門としています。授業は、阪神・淡路大震災で火災が発生した街の2つの映像を見比べることから始まりました。建物の上から街を広く見渡した映像と、燃えている街の中を歩いた場面です。松川さんが「音を聞き比べてみて。大きな違いは何でしょうか」と問いかけると、「パトカーの音」「人の声」と生徒が予想。正解は消防車の音でした。もう一度聞いてみると、建物の上だとサイレンの音が聞こえますが、街中にいるとその音は聞こえないことが分かりました。

 松川さんによると、このとき、街の約60ヵ所で火災が発生していたそうです。このことから分かるのは、一気に火事が起こると、消防車はすぐに到着できないこと。自然災害が起こると、「普段当たり前に使っている交通機関が止まったり、必要なものが手に入りにくくなったりと生活が大変になります」と松川さん。だから大切なのが「災害発生時に行動できるよう、あらかじめ準備しておくこと」と説明しました。

松川さんの話に、生徒は真剣に耳を傾けていた

 準備に使うのが「自分でつくる 安心防災帳」です。国立障害者リハビリテーションセンター研究所が作成した教材で、災害時に使える備えを確認することができます。家具の転倒防止、予備のバッテリー・充電、避難場所、避難訓練への参加、避難生活について地域の人と話し合いをしておく、災害伝言ダイヤル、助けを呼ぶ笛、そして非常用持ち出し袋 ……。松川さんの説明を子どもたちは真剣な表情で聞いていました。

災害時の備えについて説明する松川杏寧さん
30cmは自分の足だとどれくらいだろう?

 松川さんは、大雨の被害についても取り上げ、「水の高さが30cmになると、救急車が走れなくなり、50cmになると家の床より高くなり、浸水します」と説明。どれくらい浸水したら動けなくなるのかを体感するため、実際にメジャーを使い、自分の足で高さを確認しました。

 授業の最後には、生徒代表として染谷さん(1年)と中村さん(1年)が感想を発表しました。染谷さんは「映像や分かりやすい説明で、災害への意識がしやすくなりました」、中村さんは「体を使って測ることで、浸水したときの高さがよく分かりました」と話してくれました。

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