「自由」ってなんだろう?/茨城・鹿嶋市立鹿島小で山崎聡一郎さんのオーサー・ビジット


(2020/12/08)印刷する

 茨城県鹿嶋市の市立鹿島小学校(山口久弥校長、639人)で11月18日、オーサー・ビジットが開かれました。本の著者(オーサー)が学校を訪ねて(ビジット)特別授業をするプログラムで、講師は、子ども向けに法律を分かりやすく解説したベストセラー「こども六法」の著者、山崎聡一郎さん。マルチな活躍をしている27歳の気鋭の教育研究者です。

 5、6年生229人を対象に、まずは自己紹介。「聡一郎」という名前は「総」や「朗」と誤記されることも多いそうですが、ある日衝撃的な手紙が届きました。なんと「恥」一郎。「誰が恥ずかしいじゃ!」と山崎さん。くだけた話術に子どもたちは大爆笑です。

 「自由ってどんなイメージ?」「皆さんはいま自由だと思いますか。自由になったら何をしたいですか」と山崎さんは問いかけます。子どもたちからは「ずっと寝たい」「大統領になりたい」「お金持ちになりたい」といった声が聞こえてきました。

 「いま答えた内容は誰かに禁止されている? それは法律ですか」と質問が続きます。子どもたちがやりたいことは、法律で禁じられてはいないようです。「法律で禁止されているのは、普通はやらないし、やってほしくないことだよね」と、山崎さん。

 「では、法律に違反しなければ何をやってもいいと思う?」。子どもたちはざわつき始めました。答えに迷っているようです。しかし山崎さんは「法律に違反しなければ何をやってもいい、というのは、あり得る答えです」と言い切ります。

山崎さんが質問を投げかけると、子どもたちは元気に手を挙げた

 「法律」や「刑罰」は何のためにあるのか。その答えのひとつが「秩序を守るため」。山崎さんの考える「秩序」とは、「お互いの信頼関係」のことです。これがなければ、学校で隣の席の友達にいきなり殴られるかもしれません。スーパーでお金を払っても商品を売ってもらえないかもしれません。それらを防ぐために、犯罪をした人に「刑罰」を与える「刑法」があり、「安全な生活が守られる」のです。

 しかし、山崎さんは「刑罰には人権侵害という側面もある」と続けます。刑罰は大きく生命刑、自由刑、財産刑に分かれます。「命や自由、財産を奪うことは人権侵害。矛盾していませんか?」。本当は犯罪をしていない人に刑罰を与えてしまったら「それは一方的な人権侵害」です。こうした「冤罪」を防ぐために「罪刑法定主義」という原則があります。どのような刑罰を与えるか、法律で定めなければならないというルールです。「言い換えると、刑法に書いていないことは犯罪にならない」と山崎さんは説明します。

 では、なぜそうなったのでしょうか。昔は王様だけの考えで気に食わない人を抑圧できる状況がありました。「気分次第で勝手に刑罰を与えることができる。難しい言葉では『恣意的』といいます」。罪刑法定主義には「恣意的な刑罰」を防ぐ意味もあるのです。

授業前には山崎さんのプロフィールが紹介された

 一方、山崎さんは「自由には責任が伴う」とも話します。もし、ジャングルジムでゲームをしていて、負けたのが悔しくて友達を突き落としてしまったら……。刑法に定められている責任年齢は14歳。なので小学生に刑罰はありません。「裏を返せば、14歳になれば犯罪になる」のです。選んだ行動の結果、相手がケガをしたら責任を負う。これが「故意責任の本質」なのです。

 子どもたちはこの先、進路や就職、近くはどの部活に入るか、といった選択を迫られます。例えば、両親に勧められた会社に入ると仮定します。「でも、親は自分より先に死ぬ。その会社がどうなろうと責任は取ってくれません」。体育館はシーンと静まり返りました。「でも法律で責任があると見なされる14歳まで、みんなにはもう少し時間があります。選択した結果が失敗だとしても、反省を次に活かせばいいのです。自分の人生を、自分で決めてください」。山崎さんは主体的に選択していくことの大切さを訴えました。

子どもたちからは次々と質問が投げかけられた

 質疑応答では、子どもたちの手が積極的に挙がりました。「学校に行くことは義務だと思いますか」と聞かれた山崎さんは「法律上では『権利』」と説明。悩みがあって行きたくないときに大切なのは、大人と話し合うことで、「無理して行く必要はない」とアドバイスしました。「苦しいとき、何をすれば楽になりますか」という質問には、「大切なのは、歩き続けようと思わないこと」と回答。ただし自身ではその際に「後ろには下がらないこと」を心がけているそうです。「勉強や学校が嫌になったら、いったんやめて、ぼーっとして心の栄養をためてみよう。それからまた歩き始めよう」

新型コロナ感染症対策のため、ビニールを挟んで授業が行われた

 全体授業が終わってから、応募のための色紙を書いた図書委員28人向けの補足授業がありました。そこで提示されたのが、「『法律に違反しなければ何をやってもいい』というわけではない」という話。さきほどの内容とは正反対にも聞こえます。

 「法律は『ルール』。もうひとつ守らなければいけないのは『マナー』、つまり道徳」と山崎さん。例えば、挨拶はすれば気持ちよく過ごせますが、しなくても誰も傷つきません。それが「民事不介入の原則」です。山崎さんによると、物の貸し借りや買い物には、原則となるルールがありますが、本人同士が納得していたら法律通りではない契約を結んでも良いという幅があるそうです。法律は「私たちの自由を保障することを一番に考えている」のです。

 続いて、法律は欠陥だらけ、という話。なぜなら「法律は世の中で問題が起きたとき、解決のために『後追い』でつくるから」。例えば、自動運転の車が事故を起こした場合、責任の所在を明確にするのが難しく、法律の整備が追いついていないそうです。インターネット上でみかける誹謗中傷も「表現の自由」の権利とのバランスが難しく、現状はまさに「法律に違反しなければ何をやってもいい」といえる状態なのです。

 山崎さんは「学校で習う事は○か×だけれど、世の中のいろんなテーマはそうではない」と言います。伝えたかったことは「自分の主張を伝え、相手の主張を受け入れる力」を身につけ、「対立する意見とバランスを取ること」。補足授業を聞いた図書委員たちは、他のみんなとは法律についての見解が対立するかもしれません。「明日から、みんなでしっかり話し合いをしてください」と山崎さんは結びました。

授業終了後、山崎さんと図書委員会で記念撮影

 図書委員の坂本幸香さん(5年)は、友だちに勧められてこども六法を読み、法律に興味を持ちました。「一番勉強になったことは『自分の人生は自分で決めていくこと』です」。川端皐月さん(5年)は、「法律で決めるかどうか迷っている分野があることに驚きました」と話してくれました。

 応募用の色紙は、子どもたちと学校司書の松本奈緒美先生、司書教諭の久保典子先生が「『山崎さんに来てほしい』という熱意を伝えよう」と一丸となって書き上げたそうです。鹿島小はこれまで8年連続で様々な著者に応募し続け、今回やっと念願の開催となりました。色紙にあった言葉の中には「たくさんのお仕事をやって、疲れないですか」という質問もありましたが、山崎さんは「僕の仕事は『遊びの延長』にあり、好きなことに取り組むことが出来ています」と笑顔で答えてくれました。

4、5、6年の各クラスにある「こども六法」にサインをする山崎さん

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