私だけのプテラノドン、出来た!/和歌山・海南市立日方小で宮西達也さんのオーサービジット


(2020/10/23)印刷する

 「おっぱい、好きな人は?」「……」「あれ? みんなうそついてるでしょ」

 和歌山県海南市の市立日方小学校(西村充司校長、児童163人)で10月16日、作家が学校を訪ねて特別な授業をする朝日新聞の人気企画「オーサービジット」のベルマーク版が始まりました。講師は絵本作家の宮西達也さんです。

 宮西さんは、最初はスライドを使いながら自作を読み聞かせます。1990年発行の「おっぱい」をとりあげた際の問いかけに、聞いていた6年生28人はニヤニヤしつつも黙ってしまいました。そこで宮西さんは矛先を変えます。「先生、うそついちゃダメって教えてますよね。先生はおっぱいが好きですか?」。6年担任の森本浩輝先生は、苦笑いしながらも「はーい」と大きな声で元気よく答えてくれました。

 「おっぱいは、いやらしくないの。本当に素敵なんですよ」。宮西さんはこの作品が初めてヒットし、作家としての地歩を固めたといいます。人間だけでなく、ゾウ、ネズミ、ゴリラ、ブタなど様々な動物がおっぱいを求める姿が登場。とても心温まる絵本です。

 「はーい!」「うんこ」「おっぱい」「まねしんぼう」と、宮西さんは軽快なテンポで自作を読み進めます。「絵本は小さい子が読むだけのものではありません。人間が読むものなんです」。そんな宮西さんに、子どもたちはすっかり魅了された様子でした。

「おっぱい」を読む宮西さん
8年前、お母さんに連れられて宮西さんにサインしてもらった絵本を持参した子も


 エンジンが暖まってきたところで、いよいよ作品作りへ。何を作るのかは当日まで秘密でした。みんなの前に宮西さんが持ち出したのは――何と、ひもで吊るして飛ばせる翼竜のプテラノドン。「わあーっ」「おーっ」。子どもたちの間から歓声があがり、テンションが一気に高まりました。宮西さんらしい鮮やかな色彩の作品に、もうみんな夢中です。

 材料として用意されたのは、赤黄青緑の4色の画用紙。好きな色を2枚持ち帰り、1枚を丸めて胴体に、もう1枚で翼やトサカ、手足などを作ります。みんな早速、ハサミでチョキチョキと紙を切り始めました。貼り付けるためのガムテープも4色そろっています。

宮西さん作のプテラノドン
校長先生もお手伝い
宮西さんの前には列が


 あっという間に羽にとりかかる子もいれば、最初の胴体でずっと悪戦苦闘している子も。作業スピードは様々ですが、隣の子が羽を貼ろうとしたときに胴体をおさえてあげるなど、お手伝いも盛んで、和気あいあいとした雰囲気です。途中、宮西さんは何度も各テーブルを回り、作業のアドバイス。みんなが作るプテラノドンは実に個性的で、胴の太さ、口の大きさ、羽や手足の形など、どれひとつとして同じものはありません。指示とは違うやり方で進めている子もいましたが、それでも宮西さんは「これもいいねえ」と笑顔で応援します。

 1時間ほどして、ほぼ形が出来上がってきました。目は自分で白い画用紙に描き、宮西さんのところに持って行って接着してもらいます。予定時間を過ぎてしまったため、吊るための糸は先生の協力で後で付けることになりました。

記念写真だ
出来ました
わたしのはどう?

 最後に宮西さんは、自分が絵本作家を目指し、実際にそうなるまでの道のりを話しました。子どもの頃から絵が好きだったこと、美大に進みグラフィックデザイナーになったけど、絵が描きたくて会社を辞めたこと、大学時代のアルバイト経験をもとに絵本を描こうと思い、ありとあらゆる絵本を読んで学び、作品を出版社に持ち込んだら「帰れ!」と言われたこと、それでもある会社の編集者が「ヘンテコだけど面白い」と言ってくれたこと、ようやく出版された自作が並んだ書店で、お客さんに「買え、買え!」と心で祈ったこと……。

 「みんな、夢のために頑張ってください。助けてくれる人はいます」と宮西さん。とはいえ、あきらめてしまったり、頑張るのがいやになったりしたら、夢はかなわない、とも。そして「勉強は人と比べることができても、感性は比べられません。一人一人がいいものを持っています。作品を見てもみんな違っている。それが面白い。それを認め合ってください。感性が豊かな人は、人間関係を豊かに出来る人です。そうなるためには、物事に感動することです。本物を見て、感性を育ててください」

空中戦だあ
作品にサインする宮西さん


 最後に西村校長が「みなさんにとって今日は一生の宝物の時間になったと思います」と語り、児童代表の児玉結以奈さんが「なぜ作家になったか、という話が心に残りました。楽しくて、あっという間に時間が過ぎました。下級生にも今日のことを伝えたいと思います」とあいさつしました。

 終わってから改めて感想を聞くと、児玉さんは「オリジナルの恐竜が作れてよかった。自分の部屋に飾ります」、授業の冒頭であいさつに立った丸山尚子さんは「最初は緊張したけど、話を聞いて、また本が読みたいなあと思った。宮西先生は怖いかと思っていたら、めちゃくちゃやさしくていい人。作品は私の相棒として大切にします」。宮西さんは授業の後、子どもたちの作品すべてにイラスト付きのサインをプレゼントしました。宮西さんの前には、作品を手に順番を待つ子どもたちの長い列ができました。

日方小の校門
和歌山湾の夕日

 宮西さん人気は和歌山県でもとても高く、オーサービジットの前日には急きょ、海南市で講演会が企画されました。また翌日は隣の有田川町で絵本作り講座も。町で開催している絵本コンクールの審査委員長を務めているそうです。

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