笑いと喝采の渦・柳家さん喬さんのオーサービジット/秋田県横手市立朝倉小


(2019/12/13)印刷する

 「落語ってどういうものか、説明できる人?」すぐに「はーい」と声があがります。答えに耳を傾けるさん喬さん。「え、何? ブス? ボクの顔見てブスって言ったろう」。子どもたちはもう大笑い。「文化……そう、文化のことですね。落語は江戸時代、今から400年前から、庶民の芸能として色々と語り継がれてきたものです」

 秋田県横手市の市立朝倉小学校の体育館で11月28日、全校児童282人を前に、古典落語の名手、柳家さん喬さんの特別授業が始まりました。本の作者が学校で特別な話をする朝日新聞の人気企画「オーサービジット」のベルマーク版。最初の前振りで、早くも子どもたちの心をつかんだようです。

出演者自ら舞台設定
出来上がった高座
授業が始まりました

 授業のタイトルは「寄席文化まるごと」。落語だけでなく、お囃子や太鼓、曲芸なども含めて総合的に紹介しようという試みで、三味線の田村かよさん、さん喬さんの弟子で真打の柳家喬之助さん、太神楽(だいかぐら=曲芸や鳴り物を担当)の鏡味仙成(かがみ・せんなり)さんも来校。4人の講師による、とても豪華な授業になりました。

 授業は4部構成。最初は全員が舞台に上がり、三味線、太鼓、笛を使った「寄席ばやし」の説明と実演。そして喬之助さんの高座、仙成さんの曲芸と続きます。最後は、さん喬さんの演じる古典落語「初天神」です。

一番太鼓の最後は「入」の字を描く
わくわく見守るこどもたち

 最初の寄席ばやしでは、「日本の楽器はほとんど言葉で覚えます」と語るさん喬さんの案内で、太鼓や三味線の様々な音を聞きました。客を入れる時の一番太鼓は「どん、どん、どんとこい」と叩く、と言われると、そんな音に聞こえてきます。長唄などの伝統的な曲が紹介される一方で、「新しい曲も」と三味線で「ジングルベル」と「ミッキーマウス・マーチ」が奏でられ、子どもたちは大喜び。

 曲を聞くには場面を思い浮かべる想像力が必要だといいます。大きな川をゆったり水が流れていく場面などで試した後、「目をつぶって、自分がだれもいない墓場で一人立っている、と想像して下さい」。そこで演奏されたのが「幽霊三重」。お化けが出る時によく使われる曲です。子どもたちは「わあーっ」と声をあげ、一斉にざわめきたちました。

演奏を師匠が解説

 寄席ばやしの次は、喬之助さんが舞台に。まず「扇子と日本手ぬぐいだけ使って、着物を着て座布団に座って一人でしゃべる話を落語といいます」とあいさつします。子どもたちから助手を募って簡単なお芝居をしてみせ、「これを落語でやるとどうなるか」と実演。「顔の方向で役が切り替わる。聞き手も想像しながら聞く。それがコントやドラマと落語との違いです」。ここでも、想像力の大切さが語られました。そして喬之助さんは、物知りの隠居とおっちょこちょいの八つぁんが登場する「つる」を一席語りました。

喬之助さんは児童にお手伝いを依頼
扇子を使ってそばをすするポーズ

 一転して、太神楽の仙成さんのステージは、アクションの連続でした。空中で毬(まり)や曲撥(きょくばち)を空中に投げて自在に扱い、続てけ見事な傘回し。子どもたちは大喜びで拍手を送ります。ちゃわんを乗せた台を高く掲げ、あごの上でバランスをとる技では、「どこまでやるの~」「もう無理~」などの声が飛ぶ中、さらに高く、しかも間に毬や扇子をはさんでいきます。子どもたちは興奮し、会場は喝采の渦に包まれました。

仙鏡さんの傘回し
どんとん高く積み上げます

 トリは、さん喬さん。出囃子「鞍馬獅子」とともに登場して座布団に正座し、「寒いでしょう、頑張ってください」と語りかけてから、話を始めました。演目の「初天神」は、出店でにぎわう縁日の神社にお参りする父と子の、おかしくも温もりのある物語です。気が付けば、会場はすっかり静まり返り、笑う場面以外は、みな語られる一言一言に聞き入っています。この日は小雪もちらつく厳しい寒さで、体育館も冷え込んできましたが、見事な集中ぶりでした。

貫禄のさん喬師匠
柔らかな語り口です
話に引き込まれる子どもたち

 終演後、さん喬さんが「みんな面白かったですか」と問うと、一斉に「はーい」という元気な返事が返ってきました。児童を代表してあいさつした6年生の齊藤彬斗くんは「落語はちょっと難しいかなと思ったけど、面白かった」。特に最後のさん喬師匠の話には、さすがプロ、と感じたそうで「ダントツで面白く、腹を抱えて笑いました」と話しました。

みんなで記念撮影

 朝倉小のある横手市は冬のかまくらで有名。朝倉小でも校庭でミニかまくらをつくるそうです。ベルマーク運動には1966年に参加。これまでに累計270万点を集めています。オーサービジットへの応募は、あいさつをした彬斗くんが委員長を務める児童の図書委員会が中心に作業しました。昨年も応募したけど落選したそうで、「今年はさん喬師匠が来てくれてよかった」と彬斗くん。

応募活動を担った図書委員とさん喬師匠
図書委員にレッスン

 内藤佳史校長は「教師も日常的に話す仕事をしていますが、間の取り方や強弱など、子どもの興味関心を引き付ける上でとても参考になりました。大人でも触れる機会の少ない落語ですが、子どもたちも楽しめたと思います」と話しました。いま朝倉小では、自分を発揮するために「表現」というテーマに取り組んでいるそうで、とても役に立つ授業になったそうです。

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