福島と熊本の中学生が「ふるさとの未来」描く


(2023/09/06)印刷する

 福島と熊本の中学生が交流する「中学生未来サミットin熊本」が、8月7日から10日の4日間、熊本県芦北町の「あしきた青少年の家」で開催されました。東日本大震災による原発事故と水俣病を互いに学びながら、ふるさとの未来や人としての生き方について話し合いました。

 福島と熊本の有志でつくる実行委員会主催。コロナ禍の影響で5年ぶりの開催となりました。福島県からは福島市、伊達市の中学生36人、熊本県からは水俣市、芦北町、津奈木町の中学生11人が参加しました。

 ベルマーク財団は、この活動を支援しています。

不知火海を背に

熊本城の前で

 1日目、福島の中学生たちは、熊本地震による被害の復旧工事が進んでいる熊本城を見学し、穏やかな不知火海を見渡せる「あしきた青少年の家」に入りました。

 開講式のあと、ふたば未来学園高校の伊藤珠弓さんと佐久間暖さんが、福島県双葉郡の魅力を多くの人に知ってもらうためにパンフレットを手作りする、といった取り組みを発表。

 中学生の時に交流事業に参加したというVivAceの渡邉羽由さんが、自分たちで福島を盛り上げていこうと、高校生や女子の目線から様々な事業にチャレンジした経験などを話されました。

ふたば未来学園高校生の発表はクイズで盛り上がりました

サプライズ登場したくまモンと

 2日目は、水俣病の語り部として活動されている杉本肇さんの講演がありました。5人兄弟の長男として水俣の網元の家に生まれ育った杉本さんは、祖父母と両親が水俣病の認定患者でした。「病気の苦しみより差別の方が怖かった」と打ち明けた母親の言葉が忘れられないという杉本さん。正しく知ることが差別をなくす最大の武器になる、と訴える杉本さんの一言一言に、中学生たちは耳を傾けていました。

 このあと水俣病資料館を訪れ、水俣病の歴史を学びました。

杉本肇さん

水俣病資料館の提示資料に見入る生徒たち

 2日目の夜と3日目は、中学生たちが8班に分かれて、「ふるさとの未来にどう貢献できるか」をテーマにしたアクションプランを考えました。

 「それ、いいね」

 「ちょっと聞いて」

 研修室には、賑やかな声が飛び交います。

 〝熟議〟は延べ7時間にも及びました。

熱を帯びる討議

先輩のアドバイスも

 最終日は、場所をホールに移しての発表会です。

 8班それぞれの持ち時間は5分でしたが、様々なアイデアが飛び出しました。

 桃と水俣のデコポンを使った新しいお菓子、福島と熊本の人たちに正しい知識と前向きなイメージを持ってもらうための施策、東日本大震災と水俣病の絵本、特産品食べ歩きツアー、福島と熊本の特産品を集めたカフェ、くまモンと赤べこを合体させた新キャラクター「くまべこ」、福島特産の桃を使った新感覚ジュース、架空の街「カントリータウン」……

 どの班も、7時間の熟議を凝縮した素晴らしい内容でした。

大型スクリーンを使って発表

新キャラクターの誕生!?

 最後に、この交流会の生みの親である水俣市の中村慶治さんが講評。

 交流期間中に中学生の電話を受けた家族が「誰の声か分からなかった」との反応を示したというエピソードを交えて、「みなさんは、自分では気付いていないかも知れませんが、この4日間でものすごく成長しました」と話されました。

 引率された先生たちも感極まった様子でした。

空港行きのバスに乗り込んだ福島の生徒たちを熊本の生徒たちが見送りました

 この4日間を、生徒たちは様々な思いで受け止めました。

 「今まで、ただ起こってしまったこと、として考えていた水俣病や震災が、グループワークや資料館の見学によって自分ごととして捉えることができました」(福島市・中2)

 「福島と熊本の共通の課題を見つけて、それを解決するためのアクションプランを本気で考えました。これらの学びや人との出会いを心にとどめ、今後の福島と熊本の復興と活性化に向けて自分が出来ることを見つけて取り組んでいきたい」(福島県伊達市・中3)

 「教科書だけでは学ぶことのできない水俣の人々の思いや当時の様子を知り、改めて水俣病について深く考えました。今回のサミットは自分自身の成長に大きくつながったと感じます」(福島県伊達市・中3)

 「熊本以外の中学生と実際に会って話す初めての機会で、同年代の人の多様な考え方に触れることができて良い刺激になりました。伝えることの難しさ、いくらいい考えがあっても伝え方が悪ければ意味がないことに気づきました」(熊本県芦北町・中3)

 「もう参加する前の自分には戻れません。素晴らしい話し合いや生活ができて、仲間と協議する大切さがよく分かりました。熟議を通して、新しくできた友達の仲も深まりました。この4日間で自分を大きく変えることができたのが、一番うれしい」(熊本県水俣市・中1)

7年前の交流事業で資料館近くの公園に植樹されたベルマークの桜。すくすくと育っています

 福島と熊本の中学生のよる交流は、東日本大震災翌年の2012年から始まりました。原発事故の風評被害にさらされている福島と、水俣病の差別に長年苦しめられてきた水俣。それぞれの中学生同士が交流し、将来のリーダーが郷土のことを考える機会にしようと、水俣第一中学校PTA会長だった中村さんが中心となり、提案されました。

 今回で13回目になります。

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