情報でつなぎ迅速な災害対応を/防災科研の令和4年度成果発表会


(2023/04/27)印刷する

 ベルマーク財団で人気のソフト支援事業「防災科学教室」で協力していただいている国立研究開発法人「防災科学技術研究所」。その防災科研の成果発表会が2月21日、東京国際フォーラムで開かれました。昨年と同様、会場参加とウェブ配信のハイブリッド型開催です。

会場に展示された研究成果のパネル

 今年のテーマは「情報でつなぎ、災害対応を変える。」。南海トラフ地震や気候変動による大規模な水災害などの「来るべき国難級災害に備えて」と題したシリーズの3年目です。一昨年の「予測・観測」、昨年の「予防」に続き、今年は「災害対応」に焦点をあてた3部構成で、特別ゲストコメンテーターは4年連続出演のジャーナリスト、池上彰さんです。

 「防災科学教室」では防災科研のみなさんから、子どもたちにも分かりやすく丁寧に防災の意義などを教えていただいています。その専門家が、昼夜、どのような研究をしているのか、今年の発表会の様子をご紹介します。

〈第1部〉

 4人の研究成果が発表されました。建物の窓枠などに内蔵したLEDライトで、「地震の大きさや建物の損傷度合いを表示するシステム」「ドローンを使った迅速な災害状況の把握と被災場所の写真地図を共有する技術」「2022年1月に発生したトンガ火山噴火による日本の潮位変化に関する研究」「湿雪が電力、鉄道設備などに付着する着雪を防ぐための予測手法の開発」などを、映像を交えて紹介しました。

 防災科研研究主監の岩波越さんは、「災害を自分ごととして捉えることが大事です」と話します。池上さんはこう語りかけます。「この発表会によって、自治体の防災担当者が採り入れることに役立ち、研究者は世の中にどのように役立つのか問題意識をもって研究をしていただければと思っています」

兵庫県にある実験施設E-ディフェンスから中継をつないだ

〈第2部〉

 成果発表の方法として、研究者一人ひとりによる約3分の研究紹介動画を12月からウェブで公開しています。その動画66本の中から、一般視聴者の高評価数により、上位3位までを研究紹介動画賞として発表しました。1位は「IOT生活家電によるフェーズフリー防災」(防災情報研究部門・取出新吾主幹研究員)。災害に対する備えが出来ていない家庭や企業が多いというアンケート結果をもとに、空気清浄機やエアコンなどの生活家電から、警報や避難などの防災情報の発信ができないか実証実験をしていることが紹介されました。視聴者に分かりやすく、興味をもって伝える工夫や姿勢を感じられる動画1点には研究主監賞が表彰されました。

第2部で総評を話すプレゼンターの岩波越さん(左)

〈第3部〉

 国レベルで実施してきた災害対応の情報を、市町村の現場で使えるように整備していく取り組みなどについて、4人の研究者が話題を提供。防災科研の林春男理事長、池上さんとパネルディスカッションをしました。

 臼田裕一郎さんは、SIP4Dについて解説。SIP4Dは、気象観測・予測データ、衛星画像、道路や停電の被害状況などの災害対応に必要な情報を収集し、異なる組織が同じ情報を共有できるシステムです。そのSIP4Dを活用しているのが、ISUT(災害時情報集約支援チーム)。内閣府の防災担当と防災科研による協働チームとして2019年から稼働し、現地の災害対策本部に派遣されています。ISUTはSIP4Dの情報と、現場で発生する倒木、孤立集落など様々な被害情報を集約。災害対応機関が閲覧できるISUTサイト上で地図化し、情報提供をしていると遊佐暁さんは話します。

 地球を周回している人工衛星を活用する「衛星ワンストップシステム」と呼ばれる技術を紹介したのは田口仁さん。これにより、発災時刻、被災エリアを早期に特定し観測を指示、観測されたデータから情報を抽出し、SIP4Dにインプットすることができるといいます。

 池上さんは、こうした災害情報を「一般の人達にいざという時にすぐ見てもらえるにはどうしたら良いでしょう」と問いかけます。臼田さんは、SIP4Dの情報を採り入れた「防災クロスビュー」について触れ、「熱中症なども災害予想になるので、使ってもらえるように情報発信をしていく」と答えました。

 井ノ口宗成さんは、災害発生時に市町村をどのようにサポートをしていくか、開発を進めているクラウドサービスについて解説。そのクラウドは、天候や被害状況の他、災害対応の作法、一手先を見据えた意思決定に必要な情報が揃い、災害対応の過程を記録。その記録を使ってシュミレーションや訓練に活用することができ、自治体ごとの能力格差の解消、相互支援、国・都道府県との連携で迅速な応急対応ができることを目指しているといいます。

 林理事長は、このクラウドサービスについて「様々な自治体に使ってもらうことで実践の事例が蓄積されます。その積み重ねから、少しずつ能力アップできるのではないかと期待しています」と話しました。

パネルディスカッションの様子(YouTubeの動画から)

 最後に池上さんは、「来るべき国難級災害に備えて」の3年を振り返り、「どのように防災力を維持するのか、また、強めていくのかが大変深刻な問題と知らされました」と感想を述べました。来場者に、「どれだけの意志を持って自分たちのことを守っていくのかという課題が浮き彫りになったと思います。皆さんの宿題として持ち帰っていただければ」と締めくくりました。

 発表会の様子は以下から見ることができます。3月末時点で再生回数が3800回を超えました。

 研究者の成果発表動画はこちらから。

https://www.bosai.go.jp/info/event/2022/seika/kenkyudogaposter/index.html#videoa

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