一人一人が主体的に考えて行動を/防災科研の成果発表会


(2022/03/31)印刷する

 ベルマーク財団の教育応援隊のひとつ「防災科学教室」を共催している国立研究開発法人「防災科学技術研究所」(防災科研)の令和3年度成果発表会が2月28日、東京国際フォーラムで開かれました。コロナ禍に配慮して、前年と同様に参加者を限定し、ウェブ配信とあわせたハイブリッド型で開かれました。当日の様子はYouTubeで視聴することが可能です。

 防災科研は大雨や地震、雪崩などの災害について、160人を超す研究者がそのメカニズムを調べ、予防や事後の復興に向けた研究を続けています。今年の報告会は「来るべき国難級災害に備えて」と題した3年シリーズの2年目。南海トラフ地震、首都直下型地震など大災害への備えを意識した取り組みです。

池上彰さん(写真はいずれもYouTubeの動画から)

 今の予防水準なら国難級の災害を「乗り切れる」「そうは思わない」――。リアルタイム質問システムを使った会場及びネット視聴者へのアンケートから、パネルディスカッションは始まりました。特別ゲストコメンテーターはジャーナリストの池上彰さん。結果は86%の人が「そう思わない」でした。池上さんは「乗り切れる、が多かったら、そもそも本日は成立しません」と笑わせつつ、「本当に国難にせず乗り切るためにはどうしたらいいか、考えていきましょう」と口火を切りました。

 研究者3人が事例発表した後、防災科研の林春男理事長も加わって討論が始まります。林理事長は「災害の予防は、単に施設を強くするだけの時代ではない」と強調。ハードとソフトとの密接な連携が必要だと話しました。災害時に人々がどう行動するか。それがポイントです。質問システムで参加者に「災害時にあなた自身がすべきことは何か」との問いが投げられ、「状況把握」「自分の身を守る」「安全な場所に移動」「想像力が大事」など様々な書き込みが返ってきました。これに対しパネラーからは「みんな抽象的」との批判も。具体的に何をどうするか、もっとリアルに考えるところから始めなければ、というのです。池上さんは「短時間で回答するのでどうしても抽象的になる」と擁護しつつも「抽象的、に逃げないことが大事」と話します。

パネルディスカッションのステージ

 研究者は考えるきっかけを提供していくことが役割だとの意見もありました。実際に災害に遭遇した際は、それぞれが主体的に考えて行動しなければなりません。その主体性はどう育めばいいか。林理事長は「納得できる答えを得るプロセスが大切」と説きます。池上さんは東日本大震災の津波避難を例に挙げながら、「たんに答えを求めるのではなく、一人一人が自ら問いを立てていく、ということを是非してほしい」とまとめました。

防災科研の林春男理事長(左)と池上彰さん

 パネルディスカッションに先立って、発表会の第1部では防災科研の最新研究成果が発表されました。「ノイズデータがお宝になる。」とのタイトルで、不要なデータと思われていた「ノイズ」部分に注目し、新たな発見が生まれた事例です。極小の揺れが長く続く「スロー地震」も、ノイズと思われていた地震計の記録を見直す中で発見されたそうです。また第2部では、あらかじめ研究者たちがウェブ上で発表していた研究成果の動画38件、ポスター95件から、各3点ずつが「動画賞」「ポスター賞」として表彰されました。

 2021年度の成果発表会は会場参加約130人、ウェブ参加は約570人でした。防災科研のYouTube公式チャンネルで会の全体を視聴できます。3月末までの視聴カウントは約3700回です。

 https://www.youtube.com/user/C2010NIED

 なお、次年度の成果発表会も「国難級災害」をテーマにして、2023年2月21日に開催される予定です。

会場には大型スクリーンが3台

 防災科研とベルマーク財団が共催する「防災科学教室」は、2022年度も15教室程度を開催する予定です。詳細は、財団HPのトップページ→ダウンロード→各種申込書にある教育応援隊のチラシをご覧ください。

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