水が凍る瞬間に夢中/浜松市立水窪中で理科実験教室


(2019/12/25)印刷する

 静岡県浜松市の最北部にあって林業で栄えた水窪(みさくぼ)町は、信州と遠州を結ぶ「塩の道」の中間に位置しており、交易の大切な中継地でもありました。町の南には、中世に築かれ戦国時代まで使われた山城の高根城が復元されています。この町にある浜松市立水窪中学校(負田和徳校長)は1947(昭和22)年創立。生徒が数百人いた時期もあるそうですが、今は1~3年生合わせて19人です。12月19日、その全校生徒を対象に、ベルマーク財団のへき地支援ソフト事業のひとつ、理科実験教室が開かれました。講師は北海道立オホーツク流氷科学センター学芸員で、「クリオネ先生」として知られる桑原尚司さん。天使とも妖精とも例えられる姿の海洋生物クリオネを研究し続け、3年前には100年ぶりの新種発見に成功しました。

高根城から見た水窪町。右下の白い建物が水窪中

 桑原さんは、まず北海道の冬をスライドで紹介します。最高気温が氷点下6度、という日もある寒さだそうです。写真に写っていたのは、ブランコが雪に埋まっていたり、大きなつららができていたりと、見たこともない風景ばかりです。氷の上にアザラシが何頭もいる写真には「カワイイ~」の声が上がり、それが港のすぐそばで撮影されたとわかると今度は「えーっ!」。流氷が漂着するオホーツク海沿岸では、アザラシは人間の生活圏のそばにいる身近な生き物のようです。

原寸大のオオワシ。こんなに大きいのにカラスには追いかけられるそう

 そんな北海道の寒い朝に見られるのがダイヤモンドダスト。大気中の水蒸気が一気に固体になってできる氷の結晶ですが、これを実際にみんなで作ってみます。ドライアイスで周囲から冷やした空き缶に息(水蒸気)を吹き込み、ライトを照らしてのぞきます。細かい結晶が反射して光る……はずですが、なかなか見えません。でも時折「あっ、見えた」「光った」と声が上がります。

ダイヤモンドダスト、見えた

 次は「過冷却」の実験。水や氷はみんな当然のように普段目にしていますが、では「水が氷になる瞬間を見たことがあるか」と桑原さんが聞きます。みんな「そういえばないなあ」という顔になりました。

 小さなバケツに氷を細かく砕き、水と食塩を入れます。するとバケツの中の温度はぐんぐん下がります。マイナス10度くらいになったら、水を入れた試験管を浸すのですが、中の水は凍りません。でもそこに氷を一粒落とすと、あっという間に白く凍りました。あちこちで「おおっ」「すごい」「今の見た!」と声が上がります。試験管の中身をお茶や炭酸水に変え、違いを確かめます。面白がって休み時間になっても実験を続ける生徒もいました。

温度計を見ながら、氷と水と塩で冷たい水をつくる
試験管に氷の粒を入れると…凍った!
慎重に海水と真水を混ぜる
学校の先生も夢中
生徒の質問にていねい答える先生

 オホーツク海は流氷がくる海の中で最も南に位置しているそうです。その流氷が出来るのは、シベリアから流れ込む川の真水が海面近くに層を作って凍るからだと、桑原さんは断面図で説明します。本当に海水と真水は混じらないのか、みんなで実験して確認します。青い色をつけた海水を真水の入った試験管にスポイトで入れたところ、青い色が下に沈み、確かに二つの層ができました。

ペットボトルの中の小さなクリオネを見つめる

 授業の最後は、いよいよ桑原さんの専門、クリオネです。桑原さんはペットボトルに入れたクリオネを持参してきました。でもクリオネは、なんと学校の近くのスーパーで売っていたことがあったそうで、見たことのある生徒もかなりいました。ともかく観察します。じっと動かなかったり、パタパタ泳いでいたり。どれも小さくてかわいい姿ですが、時には8センチもある大きなクリオネが見つかることもあるそうです。先生が発見した新種のクリオネの写真や、エサを捕食する様子を撮った、ちょっと怖い動画も紹介されました。ちなみにクリオネはたった一種類の貝しか食べない大変な偏食家ですが、飢餓には強く、何も食べなくても長期間生きられるそうです。

お礼のあいさつをする山下さん

 クリオネについての説明が終わり、授業もおしまいになりました。生徒会副会長の山下梨音さんが「今日は、ふだんできない実験や、見られない実験ができました。とても貴重な経験でした」と、桑原さんにお礼のあいさつをしました。

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