復興の陰で居場所なくす子どもたち


(2014/09/01)印刷する

岩手県・三陸沿岸の小中学校を訪問

 来年度からの東日本大震災の被災地支援をどうするかを探るため、ベルマーク財団は8月中旬、岩手県・三陸海岸沿いの小中学校2校を訪問しました。震災から3年5か月。津波に流され野原となった町跡では宅地造成のためダンプカーがひっきりなしに走り、復興への息吹が感じられました。しかしその陰で居場所をなくした子どもたちの生活がありました。

  

夏休みも毎日登校で全員ランニング

 震災に負けず生き残った「奇跡の一本松」があった陸前高田市の市立気仙中学校は、津波に飲まれた校舎が使えなくなり、約15キロ離れた廃校の中学校の校舎に移転しました。現在、84人の生徒はスクールバスで登下校し

手を振ってスクールバスを見送る気仙中の先生
ていますが、遠い人だと片道約1時間もかかります。
 「夏休みはずっと皆さんといっしょでした。全校トレーニングにはびっくりです」。20日の始業式で、鈴木利典校長が全校生徒を前にあいさつしました。各学年代表も夏休みの思い出を披露しましたが、そろって「みんなでグラウンドを走ったこと」をあげました。
 同校では、夏休みに入ってもふだん通りバスで登校し、毎日、全員でグラウンドを走りました。炎天下、多い人で毎日、5キロをこなしました。その後、1、2年生はクラブ活動、3年生は教室で受験勉強に励みます。時には学校前の清流で、全員が水着に着替えて泳ぐこともありました。夕方にはバスで下校しますが、教職員15人が玄関に並び「またあした」とバスの生徒に手を振ります。
 夏休みの登校やランニングは、生徒が数年前から自発的に始めたそうです。今春、赴任したばかりの鈴木校長は「ほかの被災地では聞いたことがない。生徒にとっては学校にいる時が一番、楽しいのでしょう。半面、仮設住宅の自宅には居場所がないとも言えるのでは」。
 鈴木校長が単身赴任で利用している学校裏の仮設住宅を見せてもらいました。4畳半2部屋に狭いキッチン、ビジネスホテル並みのユニットバス。これに両親や兄弟と住むとなると、中学生が生活を送るのは難しいでしょう。「学校と仮設住宅を往復する生活を送ると社会性が失われます。生徒にはもっと広い世界を見せてあげたい」。鈴木校長の願いです。

  

ボールを思いっきり蹴りたい!

 陸前高田市から北へ100数十キロ離れた宮古市の赤前小学校(児童数27人)にはテニスコートが1面しか取れないほどのグラウンドしかありません。校区の赤前地区は震災時、津波が襲い26人が犠牲になり、住民の半数

傘をひろげて元気な赤前小の子どもたち。ここがグラウンドです
以上の約400人が同小の体育館に避難しました。その後、グラウンドに仮設住宅が建てられ、移転先が決まらないまま、現在66世帯196人が暮らしています。そのため児童が使えるのは40メートル×10メートルの広さしかなくなったのです。
 さらに学校近くには、被災者用の宅地造成が始まり、工事のダンプカーが学校近くの生活道路を走り出しました。登下校時には通学の児童の安全のため、保護者が道路脇にたって児童を見守っています。
 海を見渡せる小高い農村部の赤前地区の子どもたちは、それまでのびのびとした生活を失いました。体育の授業は主に体育館で、マット運動やバスケットボールなどに限られています。高学年の児童は休み時間に狭いグラウンドでサッカーボールで遊びますが「思いっきり蹴りたい」との表情を見せるそうです。代替のグラウンドができましたが、坂道の下にあり移動が容易ではありません。低学年の児童もそれまでの遊び場だった道も危険いっぱいになりました。
 松舘悦子校長によると、子どもたちは、仮設住宅の自宅に帰っても集会場に集まりおしゃべりなどをして過ごしているそうです。そのため児童の体力は全国平均を大きく下回ってしまいました。松舘校長は「子どもたちは数人で固まってしまっている。思いっき体を動かすことができる環境を作ってあげたい」と願っています。

  


  

 今回のベルマーク財団の訪問には、大阪事務所長も参加しました。被災地訪問は初めてです。今も関西の企業や労組などから「東日本大震災の支援に」と多くのベルマークが大阪事務所に寄せられます。ほとんどの人が「阪神淡路を経験した私たちに出来ることはないか」と話します。阪神淡路大震災から来年1月で20年、神戸や阪神間の街は震災などなかったような賑わいを取り戻しました。
 しかし人々の脳裏に、いまだ生々しい記憶が消えていません。阪神淡路でも、学校のグラウンドの仮設住宅の移転が決まらなかったり、仮設住宅の狭小さが子どもたちのストレスになったりしたことが問題になりました。東北では今後、子どもたちの心のケアの問題がますます重みを増すと思います。せめて子どもたちの心の居場所を作る支援ができないか。東北を訪れひしひしと感じました。

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