奥深いクモの世界を知ろう/兵庫・母子小で理科実験教室
(2025/10/17)印刷する
兵庫県三田市にある市立母子小学校(阿部恭大校長)で10月10日、財団がへき地学校を対象に実施している「理科実験教室」が開かれました。講師を日本蜘蛛学会会員で自然史研究家のせきねみきお先生が務め、身近にいながらあまり知られていないクモの生態を全校児童11人で学びました。
2012年に三田市内で初めての小規模特認校として認められた母子小。小規模特認校制度は、特色ある活動をしている小規模の学校に、市内の全域からの通学を認める制度です。
母子小らしい活動として力を入れているのが、複式学級の特性を生かした算数の授業です。児童が先生役をして、教室前方と後方の2つの黒板を学年ごとに使い、2学年の授業を同時に進める学習法を取り入れています。小規模校で先生の目が行き届きやすいからこそできる活動です。
同校はJR三田駅から車で25分ほどの山あいにあります。周辺は茶葉や黒豆の産地として知られ、シカやキツネ、タヌキが多く出没する地域でもあるそうです。
このような自然に恵まれた環境を生かしたフィールドワークから、授業は始まりました。まずはクモの網の標本づくりです。学校近くを流れる小川沿いでせきね先生と一緒にクモを探します。クモの網を見つけたら、白いスプレーをかけ、次にスプレーのりをかけて紺色の紙に貼り付け、透明ラッカースプレーをかけて完成です。上級生に手伝ってもらいながら標本を仕上げた1年生もいて、学年を超えて一緒に学ぶ姿勢が見られました。
学校の周辺だけでもいくつかの種類のクモが見つかりました。大きなクモを見つけた児童にせきね先生が「このクモは大きいけれど、大人の一歩手前で高校生くらいの雌のクモだね」と話しかけると、児童は「反抗期やな」と面白おかしく一言。さらに先生が「雄は雌が脱皮して大人になるのを近くで見守るんだよ」と説明したところ、児童は「ストーカーやな」と切り返し。せきね先生のクモへの愛があふれる解説を通して、理解を深めていきました。
後半は教室に戻り、先生がつくったスライド資料を見ながら学びました。先生は、どうやって網を張るのか、どんな敵がいるのかといったクモの生態を写真や映像を交えて解説したほか、東南アジアで昔から親しまれてきた「クモ相撲」の映像も流しました。2匹のクモを戦わせる伝承遊びを、子どもたちは興味深そうにじっと見ていました。
クモは「怖い」というイメージを持たれがちですが、「クモって、いいやつだろう」と語るせきね先生とのやりとりに、笑顔を見せてくれた子どもたちでした。


