町民たちがコツコツとベルマーク運動/台風で被災、千葉・鋸南町立鋸南小


(2020/07/08)印刷する

 千葉県鋸南町(きょなんまち)は、唯一の小学校である町立鋸南小学校(樋口和夫校長、児童237人)のために、町ぐるみでベルマークを集めています。昨秋、千葉県は強風の台風15号に襲われ、鋸南町も大きな被害が出ました。その復旧がまだ済まないうちに今度は新型コロナウイルス禍。それでも学校は6月から通常に戻り、ベルマーク活動も再開されました。

鋸南小の校舎

 房総半島南部にある鋸南町には、切り立った崖で知られる観光スポット・鋸山(のこぎりやま)があります。人口は7000余人。ベルマーク運動の中心は町の社会福祉協議会で、店舗や公民館に回収箱を置き、広報誌でマーク収集を呼びかけています。公募したボランティアグループ「エンゼルの会」がマークを回収して仕分け・集計し、鋸南小の名義で財団に送ります。

 鋸南小は、学校統合によって2014年に開校。その直前には、どの小学校もベルマーク運動から脱退していました。でも社協には町民からベルマークが寄せられていたため、社協副主査の吉田裕司さんが、これを鋸南小のために使おうと発想。町や学校と話し合い、翌年から現在のような仕組みで活動が始まりました。

前列左から、「エンゼルの会」代表の米山美子さん、白石君子さん、後列左から時乘宣子さん、渡辺ます子さん、磯﨑正子さん

 マークは、ほぼ毎月財団に送ります。活動は順調でしたが、そこに襲ってきたのが昨年の台風。社協主事の筒井香織さんによると、台風が通過した昨年9月9日の未明は、飛ばされた屋根瓦がブロック塀に当たって割れる「ガシャン」という音が何度も響いたとのこと。夜が明けて外に出ると電信柱が倒れており、「世界が変わった」と感じたそうです。被害が集中した地区もあって「竜巻が通ったのでは」との声もありました。補修用のブルーシートで町は青く染まり、停電や電波障害も長く続きました。

 社協は災害・復興ボランティアの拠点になり、エンゼルの会も3カ月ほど活動が止まりました。その後もコロナ禍で今年3~5月は再び休止を余儀なくされ、6月から久々に活動が再開されました。

町内の一部には、今もブルーシートに覆われた屋根が残る

 取材したのは6月下旬。町内ではまだブルーシートを見かけましたが、それでも「だいぶ減りました」と筒井さん。エンゼルの会は60代~80代の8人で構成されていますが、活動再開の時は「人と会えて嬉しかった」と感じた人もいたそうです。病気で参加できないメンバーの家は、近所の人たちがテトラパックを持ち寄る「中継所」として使うなど、ベルマークを介した支え合いも広がっています。この日は5人が社協のボランティアセンターに集まって作業の様子を見せてくれました。

仕分けの様子
テトラ社でないパックは、三角形にしてつなぎ合わせ、カバーをかけて子ども用の椅子に再利用

 マークは10枚ごとにまとめ、集計したら必ず別のメンバーが再チェックします。81歳で最高齢の渡辺ます子さんは、町内でも台風被害の大きかった地区出身で、現在の自宅も被災しました。「よく切り抜けてきたと思う」と振り返りつつも「いい人たちと巡り合えました」と話します。現在、鋸南小の累計集票点数は10万点超。「一人でも多くの人に活動を知ってもらい、マークやテトラパックを頻繁に持ってきてくれたらいいなと思っています」と代表の米山美子さん。

 社協の吉田さんによると「みなさん、活動が生きがいになっているよう」とのこと。同事務局長の増田光俊さんは「子どもたちを支えている活動に感謝します。マーク収集は広くPRしていきたいです」と語りました。

左から、町社協主事の筒井香織さん、事務局長の増田光俊さん、副主査の吉田裕司さん


 台風は、鋸南小にも大きな被害をもたらしました。校舎や体育館倉庫の窓が割れ、教室や廊下が浸水しました。秋山里和教頭は「割れたガラスは各教室1~2枚なのに、風が回ったのか、大きな水たまりの上に机や掲示物、ロッカーなどの中の物が散乱していた」と話します。校庭には飛来した瓦や木材などの瓦礫が散乱していました。

 1週間休校し、ボランティアにも手伝ってもらって学校を片付けました。瓦礫は2トントラック3杯分あったそうです。体育館は避難所や支援物資の受け入れ拠点になりました。校舎の屋上にソーラーシステムがあったため、停電中でも電気掃除機や扇風機、携帯電話の充電器が使えて助かったそうです。

台風後の教室の様子(2019年9月9日撮影、鋸南小提供)
鋸南小屋上からの景色(2019年10月7日撮影、同小提供)

校舎の屋上に設置されたソーラーパネル

 学校が再開し、児童たちは元気な様子で登校してきました。でも、被災した家を見ながら登校するうちに不安を感じても、保護者は片付けで手いっぱい。「だから泣き言を言わず我慢している」と秋山教頭。担任との面談でそんな心の内を打ち明けた児童も多かったそうです。

 この春には、新型コロナウイルス禍で、長期の休校を余儀なくさせられました。それでも秋山教頭は「子どもたちが学校に楽しく来ていることが一番。私たちは毎日笑顔で迎えることが大切」と言葉に力を込めます。学校は6月からほぼ通常に戻り、距離感に気を使いながらも、子どもたちの声が響くようになりました。

ボッチャを楽しむ児童たち
取材後日、ドッチビーで遊ぶ児童たちの写真を鋸南小から送っていただきました

 ベルマーク財団は昨年の台風・大雨で緊急の友愛援助を呼びかけ、宮城・栃木・千葉・長野の計50校を支援しました。鋸南小はその支援校のひとつで、デジタルビデオカメラ、ボッチャボール、ラグビーボールを購入しました。取材日には特別支援学級の児童たちが、体育館で真新しいボッチャボールを使いました。「面白かった」と6年生の磯谷斗也くん。「全国の皆さんの善意でいただいた支援。本当に長く使っていきたい」と樋口校長は話します。

左から、鋸南小の樋口和夫校長、秋山里和教頭

 また、「エンゼルの会」が貯めてくれたベルマーク預金で鋸南小は、これまでに、マグネットシート製の黒板やドッチビーを購入しています。秋山教頭によれば、ドッチビーは児童たちに人気で、異学年が一緒に遊ぶ姿が見られるそう。6年生の大胡優貴くんは「投げ方が違って新しい感じ」、助川智菜さんは「まっすぐ行ったり戻ったりして、いろんな向きに変わるところが楽しい」。樋口校長は「町のみなさんの善意にも支えられていると感じています」とし、今後も学校でのベルマーク収集に力を入れていくそうです。

東京湾フェリーから鋸山方面を望む

ベルマーク商品

ジャポニカ学習帳

ベルマーク検収

今週の作業日:3/25~3/29
1/30までの受付分を作業中