三重・津市立南立誠小でDr.ナダレンジャーの防災科学教室


(2022/02/21)印刷する

 ベルマーク財団の教育応援隊のひとつ、防災科学教室が、初めてオンライン開催されました。1月26日、三重県の津市立南立誠小学校(米野浩之校長、児童392人)と、茨城県つくば市の国立研究開発法人防災科学技術研究所(防災科研)がオンラインで接続され、子どもたちは画面に見入りながら防災について学びました。

 この教室は防災科研との共催で2018年度から始まりました。コロナ禍に見舞われた2020年度途中からオンラインでの開催も選択肢に加わっています。

 この日は主催者の同校PTAがweb会議システムを立ち上げ、そこに学校の各教室や防災科研が参加する形で実施されました。同小の1~6年計13クラスにもカメラが設置され、様子が映し出されました。講師は全クラスの様子を見ながら話すことができます。前日にテストをし、当日も開始の約1時間前から接続して本番に備えました。

画面に映るDr.ナダレンジャー

 「私がDr.ナダレンジャーといいます」。金髪カツラに白い四角メガネ、さらにマスク姿の怪しいキャラクターが画面に登場しました。「こう見えて、防災科研で研究している博士なんです」。隣には、ピンクのかつらの女性が。助手のナダレンコです。

 そんな自分たちについてナダレンジャーは「不審者だと思う人は?」と問います。画面に映る教室のほとんどの子が手を上げました。「うわーっ、多すぎ。でも、正しいと思います。これはオンラインなのでみなさんの前にはいませんけど」

 ナダレンジャーの専門は名の通り雪崩。30万個のピンポン玉を高い位置から転がして人工雪崩を作る実験を世界で初めて行いました。下の方に立ってもらった学生のうち1人は見事に流されたそう。その時の写真を、ナダレンジャーはカメラに近付けてよく見せます。

 ピンポン玉はとても軽いので怪我はなかったのですが、これが仮にゴルフボールだったら? 1個当たっただけでも痛いはず。「それが30万個も流れてきたら怖いよね。その気持ちが大事。怖いと思えば近付かないから、被害に遭わなくて済むでしょ」

30万個のピンポン玉を転がした実験

 「防災」の基本を再確認したところで、この日最初の実験。1mm程度の発泡スチロールの粒を、傾けた竹に流して雪崩を再現します。まずは形の観察。粒の流れはおたまじゃくしのように頭でっかちな形になることが分かりました。続いてスピード。最初にほんの少しの粒を、直後にたくさんの粒を流します。すると、大きなかたまりが小さな粒を飲み込み、頭がとても大きなおたまじゃくしになりました。量が増えるとスピードが上がるのです。

 小さな実験だから見ていて面白いのですが、この発泡スチロールの量が100万倍になったら、流れるスピードは10倍にもなるそう。量が増えると威力が大きくなるのはピンポン玉も同じ。30万個ではなく、東京ドーム満タン分の3000億個なら、とても無事ではいられません。「楽しく見えるのは小さいから。巨大化すると怖い災害になります」

 さらに、ナダレンジャーは「将来、立派な科学者になって、子どもたちに伝えていくには、こういう技を磨く必要もある」と、傘回し(落石実験装置)なども披露しながら語りかけます。強調したのは「自分の命は自分で守ること」の大切さ。そのためには「学校で習ったことを思い出したり、自分で判断したりすることが大事」なのです。

 この間、助手のナダレンコは時折カメラにアップで入り込むなど進行に茶々を入れます。オンラインならではのこうした動きが、みんなの笑いを誘います。

雪崩を再現した実験を披露
傘回し(落石実験装置)

 休憩を挟んで後半、ナダレンジャーは水と砂が入ったペットボトルを持って登場しました。ボトルをよく振って静かに待ち、砂が沈んだところで“デコピン”すると、カラフルな丸ピンが浮き上がります。まるで手品です。

 「これ、やってみたい人いる?」とナダレンジャーが語りかけると、一斉に子どもたちの手が上がりました。「出来るよ。みんなの教室にあらかじめ送ってあるから」

 みんなの視線が動き、教室がざわついているのが伝わってきます。「昨日の日直」と指名された子どもたちが、用意されたボトルを持ち、「3、2、1」のかけ声で“デコピン”すると、やはり丸ピンが浮き上がってきました。どの教室も大騒ぎです。

 このペットボトルの正体は、地震によって起こる地盤の液状化現象を観察できる科学おもちゃ「エッキー」でした。水を多く含んだ地盤は地震で液状化するとマンホールが浮かび上がったりします。“デコピン”が地震、丸ピンがマンホールの役割を果たしています。

科学おもちゃの「エッキー」
液状化でマンホールが浮かび上がった様子を説明

 地震の揺れの周期については「ゆらゆら3兄弟」で学びます。高いビル、中くらいのビル、低いビルに見立てた長さの異なるスポンジを、一定のリズムで揺らします。「ゆーらーゆーらー」という遅いリズムだと高いビルが、少し早めた「ハイハイハイ」では中くらいのビルが、高速の「うぃ~」では低いビルが最もよく揺れました。

 ナダレンジャーは、東日本大震災で高層ビルが大きく揺れたことに触れました。その原因は「高いビルが揺れやすいリズムだったから」と言えるそうです。

ゆらゆら3兄弟

 教室の後、子どもたちには全ての実験を解説したパンフレットがプレゼントされました。あらかじめ学校に送ってあったのです。そしてDr.ナダレンジャーとナダレンコが変装を解き、カメラに素顔を向けました。みんなが気になるその正体は、ともに防災科研の研究者、納口恭明(のうぐち・やすあき)さんと罇優子(もたい・ゆうこ)さん。雪崩が専門で理学博士の納口さんは、サイエンスショーの世界ではとても有名な方です。

 今回は当初リアル開催の予定でしたが、コロナのまん延防止等重点措置が発令されたことからオンラインに切り替わりました。防災科研は講堂にカメラなどの機材を設置。納口さんは大型スクリーンで教室の様子を、iPadで自分の映る姿を確認しながら教室を進めました。科研職員も非常時に備えて脇でモニタリングしていたそうです。

納口恭明さん(左)と罇優子さん

 ※防災科研のHPでもナダレンジャーの実験動画が公開されています。

  https://www.bosai.go.jp/introduction/movie.html

 ※防災科学教室はオンラインでの実施も含めて通年で募集しています。希望の学校は財団(03-5638-2320)までお問い合わせください。

カメラに近づいて説明するナダレンコ
自分の映る姿を確認しながら授業を進めるDr.ナダレンジャーとナダレンコ

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