富士山のふもとで防災科学教室/静岡・裾野市立富岡第一小学校


(2021/10/28)印刷する

 国立研究開発法人防災科学技術研究所(防災科研)とベルマーク財団が共催する防災科学教室が10月14日、静岡県裾野市の市立富岡第一小学校(勝又和仁校長)で開かれました。本来なら富士山が大きく望める場所ですが、この日はあいにくの曇り空。近くの山々からは雲が立ち上っていました。授業を受けるのは3年生の75人。「どんな話が聞けるんだろう?」と興味津々の様子で、会場の体育館に入ってきました。

 最初は「大雨による災害に備えよう」と題した、防災科研の研究員であり気象予報士・防災士の資格を持つ宮島亜希子さんによる講演です。「大雨って、いつ降るの?」「大雨が降ると何が起こるの?」と児童に問いかけながら、宮島さんは話を始めました。

校庭から見える山から雲が沸く
大雨の話をする宮島亜希子さん

 前日に宮島さんは学校の周りを実際に歩いて地形を確かめたそう。近くを流れる黄瀬川を少し下ると花園橋という橋がありますが、熱海で大規模な土石流が発生した7月3日、ここも「氾濫危険水位」を超えていたそうです。「災害は他人事ではありません。自分の周りでも起きる可能性はあります」と宮島さん。

 では、実際に大雨が降ったら? 子どもたちにクイズ形式で問いかけながら、宮島さんは避難の際の注意点をあげていきます。どこへ? もちろん高いところへ。靴は? 長靴は水が入ると動けなくなるので運動靴がいい。歩くときは、なるべく道の真ん中がおすすめです。

 普段から自宅周辺にどんな危険があるか考えることが大切、と宮島さんは強調します。一緒に避難する人のことも考えます。お年寄りや赤ちゃんがいればなおさら。市が作っているハザードマップを確認しておくと、場所によってどんな危険があるか、避難所はどこにあるか、あらかじめ知ることができます。

クイズに元気よく答える

 「では、その避難所まで、一度歩いてみてください」。コースに危険はないか、階段の有無は、など、実際に歩くと色々なことが分かり、いざという時の備えになるのです。

 最後は科学の話。「大気が不安定、とよく言いますが、上空に冷たい空気があって地上との温度差が大きい状態のことです」。空気の中には見えない水(水蒸気)が含まれていて、それが冷やされると雨を降らせる雲になるのです。「では、これから雲を作ろうと思うんですけど」

ボトル内に雲を作る
ナダレンジャーも参戦

 子どもたちは班に分かれ、それぞれに水が少し入ったペットボトルが渡されました。上部に球状のポンプがついています。中にアルコールを噴霧し、ポンプでボトル内の圧力を高めると、中の温度が上がります。そこでフタのロックを外すと、急に温度が下がり、ボトル内部がさっと白く曇ります。雲が発生したのです。「できたーっ」子どもたちは大喜びでした。

 続いてDr.ナダレンジャーが、助手のナダレンコと共に登場します。いつものカツラ・メガネの変装に加え、コロナ対策のマスクで怪しさ倍増の2人は、トイレ休憩の時間を利用して皿回しを披露。棒を子どもたちに持たせて皿を空中リレーさせていきます。「僕も!」「私も!」とやりたがる子どもたちの輪ができました。

皿回しのリレー
突風から逃げる

 Dr.ナダレンジャーこと納口恭明さん、ナダレンコこと罇(もたい)優子さんは、いずれも防災科研に所属し、サイエンスショーの世界ではとても有名な研究者です。変装や皿回しは関心を引き付けるための手段ですが、この日も最初から、見事に子どもたちの心をつかんだようです。

 「こわ~い実験、好きな人は」とナダレンジャー。「ハーイ」とたくさん手が上がります。「そんなにいるの? じゃあ、泣かしてやるからな」。ちょっと脅かしながらナダレンジャーが取り出したのは「突風マシン」。強めの風がピンポイントで飛ばされ、子どもたちに当たります。でもみんな泣くどころか大喜び。子どもたちに差し出され、担任の先生も“犠牲”になりました。「でもこのマシンが体育館くらいの大きさだったら? 吹っ飛ばされるよね」。逆に言えば、災害は小さくするとおもちゃになる、ということです。「今日の実験は、実は、怖くはありません。安心して」。

真剣な表情の子どもたち

 ナダレンジャーの専門でもある雪崩を模した実験、地震の際に起きる地盤の液状化現象をペットボトルで観察できる「エッキー」による実験、長さの異なるスポンジを用いた「ゆらゆら3兄弟」で揺れ方の違いを調べる実験……。軽妙な語り口とともに次々と繰り出されるアクションに、子どもたちはもう夢中です。

雪崩を正面から体験
ブロックが崩れる!

 最後は高~く積んだブロックを揺らしてみる実験。低い建物は素早い振動で大きく揺れ、高い建物はゆったりした振動の方が揺れます。ではブロックの載った台車をゆっくり揺らしたら。みんなの期待通り、見事にブロックは途中から崩れました。発泡スチロール製なので、もちろん安全です。「安全にやっているから楽しいんです。でも本当にこんなことが起きたら死んじゃうよ」とナダレンジャー。

 これで教室は終わりです。体育館から出ていく子どもたちを、変装を解いた納口さん、罇さん、それに宮島さんが手を振って見送りました。

 教室の司会を務めた3年1組担任の吉川健剛先生は「前半は基本的なことを勉強できました。クイズもあって、子どもたちにも理解できたでしょう。後半は本来怖いものを、面白く楽しく教えてくれた。自分自身も勉強になりました」と感想を述べました。

 この日は地元紙の岳麓新聞が取材に訪れ、また裾野市の環境市民部危機管理課の職員2人が見学に来てくれました。

校歌は作詞作曲とも超有名人。明治8年創立の同校が110周年を迎えた際、当時の校長先生が記念にと依頼したそうです


 防災科学教室は通年で実施校を募集しています。学校の希望に沿った内容の教室になるよう研究者が派遣されます。コロナ禍は現在、少し収まってきていますが、もし再燃した場合でも、リモートに切り替えて実施することができます。もちろん最初からリモートでの実施も可能です。教室の詳細についてはこちらをご覧ください。また、開催申請書はこちらからダウンロードできます。

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