災害の話、身近に感じて/山梨県立盲学校で防災科学教室


(2021/07/20)印刷する

 ベルマーク財団の教育応援隊の1つ、防災科学教室が7月14日、山梨県甲府市の山梨県立盲学校の体育館でありました。国立研究開発法人・防災科学技術研究所(防災科研)との共催で4年前から実施しており、今年度では初めての開催です。小学部から高等部までの生徒と先生、計約40名が参加しました。

 午前9時45分、教室が始まりました。盲学校の生徒指導主事の上原豊先生が「この間、静岡で災害がありましたが、どんな災害だったか次のうちどれか選んで下さい。1台風、2地震、3大雨」と聞くと、ほとんどの生徒が3の大雨に手を挙げました。「今日は、こういった災害のお話をするので、みなさんよく聞いて下さいね」

 山梨県は前日、激しい夕立と雷に見舞われたそうです。成田健校長先生は「昨日は雨と雷がすごかったですね。家にいる時や外にいる時、身近で災害が起きるかも知れない。どういうしくみで起きるのか学びましょう」と話しました。そして一同みんな、講師の方に向かって気を付け・礼とともに「よろしくお願いします」と挨拶しました。

Dr.ナダレンジャーとナダレンコが登場

 この日は2部制。前半は防災科研の研究者でDr.ナダレンジャーこと納口恭明さんと、ナダレンコこと罇優子さんが講師を務めます。登場した二人は金色とピンク色のかつらにメガネといういつもの仮装姿。まずはお馴染みの皿回しを始めました。中高生、そして小学生もお皿と棒を渡されて次々と実際に皿回しを体験。意外にみんな上手です。さらなる高度な技も披露された後、「そろそろ慣れた? では、災害の実験を始めてもいいかな?」とナダレンジャー。

 実験の最初は突風マシン。勢いよく風が吹き出します。ペットボトルで作ったミニサイズのマシンを子どもたちに渡したナダレンジャーは「自分の顔に向けてやってみて……これ小さいから面白いけど、体育館の大きさだったらどうかな? みんなふっとんで死んじゃう。巨大化すると災害って怖いんだよ」。

ナダレンジャーは専門の雪崩の実験も披露した

 さらに地震の実験では、同じ振動でも高さによって揺れ方が違うことを学び、またペットボトルに砂と丸ピン(画びょう)を入れて水を満たした実験器具「エッキー」を使って、砂の地盤に地震の揺れがくわわると液状化が起こることも学びました。「サイエンスを勉強する時は、楽しく」とナダレンジャー。

 10分間の休憩をはさんだ後半では、講師が花崎哲司さんにバトンタッチ。防災科研の客員研究員で元香川県立盲学校の先生です。花崎さんはハンドベルを鳴らして「これなんの音?」。1人の生徒が「はい!ハンドベル!」と元気よく答えました。「すごいね。多くの人はベルの音っていうんだよ。みなさんは見えない、見えにくいけれど自分の得意なことがあるからね」

スクリーンも使ってみんなに語りかける花崎さん

 会場に、人が手で水に触っている音が流れます。一方、山から大量の水が流れてきたときの音も。水の勢いや威力が違うのが音からわかります。

 雨の夜は移動が難しいけれど「みなさんは音や匂いで方向が感じ取れるかも」と花崎先生。「他の人にはできない力をみなさんは持っています。大切なのは知ること、考えて話し合うこと、行動すること。先生や家族と話しあって下さいね」

 その後、みんな花崎さんが準備した3つのプールの前に移動します。まずは先生オリジナルの「ねこちゃんハウス」が置いてあるプールへ。今回の教室で始めて披露する実験だそうです。ハウスには丁度猫が入れるくらいの大きさの扉あり、外から押し開けて中に入ります。ふだん扉は簡単に開きますが、ハウスの中を水で満たすと、扉がとっても開きにくくなりました。

ねこちゃんハウスは水を入れると扉が重くなった

 増水した道路にはまった車から脱出するのが大変なのと同じです。水が多くなれば、ますます難しくなります。「早く逃げなきゃダメだよね?」と花崎さんはみんなに伝えます。

 あとの2つは、ただの水プールと、泥や石ころが入っているプール。順番に入って歩いてみて、土砂が入っている方が歩きにくいことを体験しました。水から上がった生徒の一人は「石があってすべりそうで怖かった」と話してくれました。プールが終わると、次はテント。実際に中に入って、広さなどを体験します。

普通のプール(右手前)に続いて土砂入りのブールを歩いてみる

 全員が体験を終えて体育館に戻った後、子どもたちの代表2人が感想を述べました。「水の中は歩きづらかった。勉強するのは楽しかったけど、本当に起きたら怖いなと思う。今日のことを生かしたいです」。小宮山隆教頭先生が「これから防災避難訓練をどうしてやっていくのか改めて知る機会でした」と話し、生徒全員で講師にお礼の挨拶をして、教室は終わりました。

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