東京・八王子盲学校で防災科学教室


(2020/10/06)印刷する

 東京都八王子市にある都立八王子盲学校(山岸直人校長、53人)で9月18日、防災科学教室が開かれました。ベルマーク財団と国立研究開発法人防災科学技術研究所(防災科研)の共催で、2018年度から始まったプログラムです。

 講師の花崎哲司さんは元香川県立盲学校教諭で、定年後は防災科研の客員研究員として、主に防災教育や地域社会における防災の研究に取り組んでいます。この日受講したのは小学部の児童9人。弱視から全盲まで、障がいの程度は人によって様々です。

「地震が災害だと思う人?」「はーい!」

 「あ、テントだ」「なんか本格的じゃない?」

 子どもたちが知っているのは、防災科学教室が開かれるということだけで、その具体的な内容は伝えられていなかったようです。教室内や廊下に準備されたテントやプール、ダンボール箱、ロープなどの大がかりな教材を見た子どもたちの歓声で、授業前から気分が盛り上がります。「カンパンって食べた事ある?」「角砂糖の入ってるやつ?」と、山岸校長を交えた“防災談義”も聞こえてきました。

「いろいろな災害から身を守る方法を学びましょう」とはじめのあいさつ

 授業は、まず花崎さんの自己紹介から始まりました。花崎さんのニックネームは「花ちゃん」と「たぬき」で、その由来は香川県高松市に伝わる“屋島のたぬき”。化けるたぬきの中でも“大物”として知られ、スタジオジブリの映画「平成狸合戦ぽんぽこ」にも登場した、いわば妖怪界のスターです。花崎さんは「『自然を壊すな』と人間に戦いを仕掛けにくる話」だと紹介し、子どもたちの関心が集まったところで、「今日のテーマは自然と共に生きることの大切さです」と本題に入りました。

 勤めていた盲学校で、「いろいろな体験を通して、危険から身を守る方法を学ぶ」という取り組みをした時のこと。花崎さんは理科室でレジ袋を燃やして火災報知器を作動させたり、学校中を煙だらけにして弱視の子も見えないくらいにしたそうで、ほかの先生たちはすごく怒ったのですが、普段から五感が研ぎ澄まされている生徒たちは冷静に対応できたとのことでした。

ハンドベルの音の答えはミのフラット、みんな大正解。「良い耳をしてるね」と花崎さん

 そこでみんなの五感を確かめていきます。まず3つの映像が流されました。深さ30センチしかない水でも人が流されるという実験、静岡・大井川のダムの1秒間に2600トンもの水が放流される様子、増水した多摩川の映像です。大量の水が流れる音を聞き、どのような音がしたら逃げなければならないかを学びます。その後、リコーダーとハンドベルを鳴らして音の高さを当てるクイズを通し、子どもたちがとても良い耳を持っていることを確認。花崎さんは「みんなは音で分かる。さっきのような水の音がしたら逃げてね」と語りかけました。

 さらにたくさんの体験が続きます。ブロック2個を両手で持ち上げてみたり、スギとヒノキの匂いを比べたり、ろうそくに火をつけたときの匂いを嗅いだり……。ブロックの体験では「持つことは出来ても、上から落ちてきたら怖い」と想像力を膨らませる子がいました。ろうそくでは「変な匂いがする」「頭が痛くなる感じ」と感想があがり、火を消したときには「ハッピーバースデーの匂いだ」と反応する子もいました。

ブロック二つってどれくらいの重さだろう?
スギとヒノキのブロックの違いを確かめる
花崎さんは「今日は、本物の火を使います」とろうそくを配った

 アイマスクで完全に見えなくした上での味覚の実験もありました。比べるのはオレンジジュースとお茶。「匂いでわかった」「おいしい」と、子どもたちはあっという間に違いを正解しました。「晴眼の人は『味がわからない』、『気持ちが悪い』と言うんだよ」と言う花崎さんに、子どもたちは「へえ~」とびっくりしたようでした。

 続いて花崎さんが鳴らしたのは、袋に入った石がぶつかり合う音。「大きな土砂崩れの前には、石がバラバラ落ちる音がします。地面が引き裂かれるから、さっきみたいな木の匂いもするんだって」と災害の予兆現象について話しました。

 テントにも実際に入ってみました。「窓があるから便利だね」「クッションがあるとこんなに違う」などと、新しい発見があったようです。花崎さんは、最近テレビで聞くようになった「命を守る行動をとってください。安全な場所に移動してください」というアナウンスについて、“避難所”と言わなくなったのは「少子高齢化により学校数が減り避難所の数も減っているから」と話します。レジャー用のテントも、プライバシーを守る空間として利用できるのだそうです。

アイマスクをして、完全に見えない状態で味の実験。分かった人から手を挙げよう
教室にはテントが設営された。どれくらいの広さだろう、中には何があるのだろう
花崎さんがお土産に模型をくれた。飛行機には「フェイルセーフ」といって、トラブルが起きてもすぐ墜落しないよう、様々な操縦方法がある。異なるルートをいくつか用意する“避難”も一緒だね

 いよいよ、教室から飛び出して避難体験です。廊下の床には点字ブロックの代わりにロープが貼ってあります。「避難所でも『トイレまでロープを貼ってください』とお願いすれば、ひとりでも行けるね」と花崎さん。しばらく進むとロープの上に障害物が置いてあったり、上からダンボールがつり下げられたりして、道をふさいでいます。扇風機に向かって傘を開き、風の怖さを体感するコーナーもありました。児童たちは、次に来る人に「ここに何かあるよ」と心配りをしながら、さらに前へ進みます。

 最後に用意されていたのは、床上浸水を想定したふたつのプール。手前側にはスポンジやつぶれたペットボトル、石などが入っています。奥側は泥水です。全員がアイマスクを着けて白杖を持ち、靴と裸足の両方で歩きました。アイマスクは夜の避難を想定しています。白杖を両手で握りしめながら歩く子、「土がきもちわるいー」と思わず声が出た子、「靴が重たい」と驚く子など、さまざまな反応がありました。先生たちも動きやすい服装でサポートしました。声をかけ合い、時折先生の手も借りながら、全員が無事に体験を終えることが出来ました。

天井からつり下げられた障害物。みんな冷静に乗り越えることができた
風に向かって傘をさす体験

一歩ずつゆっくり確かめながら、前へ進んでいく
大きな段差をまたぐと、次は泥水が待っている
「そうそう!その位置だよ」と、先生も協力していた

 花崎さんはまとめとして、「自分のこと、周りのこと、周りの自然のことをよく知っておくこと」の大切さを説きました。八王子は都心よりも比較的揺れが小さいと予想されていることや、学校周辺の避難所、地名の由来についても話しました。八王子盲学校の住所は「台町」。「『台』って高いところのイメージがあるよね。土地の名前で安全かどうかが分かるんだよ」といいます。地図を一緒に眺めながら、「学校の標高は131.36mだから津波は大丈夫、川の水も溢れてこない、地震がきても硬い土だから大丈夫」とも伝えました。

 最後に、6年生が「水の体験がすごかった。将来自立するために今からいろんなことを知っておきたい」「災害が起きても、今日のことを活かして避難したい」と感想を発表しました。

普段は片手で使える白杖だが、このときは両手を使って慎重に歩く児童が多かったそう

 教室を通して、花崎さんは、児童の積極的な姿勢や先生たちの素早いフォロー、子ども同士の声のかけあい方が印象に残ったといいます。「災害はマニュアル通りには起こらない。多様な体験を取り入れ、感じてもらうことで、五感を活かして生きることの大切さを学んでもらえたら」と振り返りました。

廊下にロープを貼る花崎さん。教室開始1時間前には学校に到着し、準備を始めていた

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