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教材提示装置で授業に新風 大宮ろう学園

 さいたま市北区の埼玉県立特別支援学校・大宮ろう学園(神田芳男校長)には、「教材提示装置が贈られました。教科書や教材、子どもたちが書いたものをプロジェクターで拡大して黒板などに映す装置です。黒板に映し出した教科書を示しながら授業する牛山先生。左手前が教材提示装置同学園には幼稚部、小学部、中学部、高等部、高等部専攻科があり、聴覚障害の3歳から20歳までの195人が学んでいます。12月15日、この装置を使った初めての授業をのぞいてみました。
 6人の中学3年生が理科の授業で、「還元」「酸化」の実験に取り組みました。牛山騎八先生が提示装置を使って、教科書の1ページを大きく映し出します。さらにアップにして「まず読みます」。生徒たちは、先生の読み指す早さに合わせて、映し出された教科書を目で追います。実験の説明図も大きく映し出し、必要な道具や薬品、手順を確認して実験の開始です。
 酸化銅が、銅と二酸化炭素に分かれる実験です。生徒たちは、2組に分かれて試験管を使って薬品を火で燃やしたり、管でつながった別の試験管の水の色が変わったりする実験に真剣です。一段落したところで、再び装置の出番です。牛山先生が、映し出された教科書のページの文字にチョークで書き込んだりしながら、なぜ酸化銅から銅ができたのか、化学式なども交えながら教えていきます。実験でできたばかりの2組の銅を装置で映し出し比較します。色の違いなどがはっきりわかります。「こっちは完全に反応が終わったもの。こちらはまだ反実験が終わり、先生から結果の説明を真剣に聞く生徒たち。=いずれも埼玉県立特別支援学校大宮ろう学園で応の途中だね。でも両方とも銅はできています」。最後はテスト形式のまとめ。生徒たちに書かせると、1人のまとめを装置に。みんなで見ながら「合ってる?」「OK」。1時間の授業が楽しく終わりました。
 「子どもたちは音が聞こえないから、教科書を見ながら先生の話を聞くということはできません。だから黒板に映る教科書を見ながら、先生が話す言葉を聞き取ろうとするんです」と櫻庭比呂美教頭。このため、教科書を拡大コピーして黒板に張ったり、先生によってはパソコンで教科書をスキャンして取り込み、プロジェクターで黒板に映したりしています。しかし、この方法だと手間がかかるうえ、チョークで書き込んだり、その場ですぐに映したりすることはできません。牛山先生は「この装置は使い勝手がいいし、きれいに見えます」と言います。ただ課題もあるようです。「セッティングに時間がかかるので、1人の先生が使った後、次の授業で使う場合はちょっと大変です」と話していました。

《写真上から》
・黒板に映し出した教科書を示しながら授業する牛山先生。左手前が教材提示装置
・実験が終わり、先生から結果の説明を真剣に聞く生徒たち。=いずれも埼玉県立特別支援学校大宮ろう学園で

(2009/12/18)

個性あふれる作品できたよ 大分県日田市出野小で絵画教室

喜田川さんが4歳のときに描いたという絵を見つめる子どもたち 大分県日田市立出野(いづの)小学校(江藤利行校長)で11月20日、今年度3回目のお絵かき教室が開かれました。ベルマーク新聞の漫画「ベルちゃん」の筆者で、イラストレーター喜田川昌之さんに「心の目で描こう」と教わり、子どもたちは想像力を働かせ、個性あふれる絵を描いて、楽しい時間を過ごしました。
 出野小の児童は2〜3年生と4〜5年生、6年生の3学級計9人で、この日は8人が参加しました。午前9時45分からスタート。校舎2階の英語教室に、子どもたちが自分のクラスから机といすを運んできました。
 「みんな前に集まって」。喜田川さんが取り出したのは、4歳のころに描いたという家族や動物の絵です。「うーん上手だね」「これは何」。子どもたちの緊張がほぐれ、喜田川さんとの距離がぐんと縮まりました。授業の最初は「さぐり絵」です。黒い布袋に両手を入れて、手触りだけで中の品物を想像し、絵を描きます。2年生の佐藤快斗君は「分った。簡単、簡単」と、タワシの絵を仕上げました。しゃもじ、砂時計、ジョウロ、跳び縄、洗濯ばさみ、けん玉、茶こし、やかん。喜田川さんが子どもたちの机を回って、「ギザギザがあるよ」「ちくちくするね」とアドバイスをします。2回目は果物や野菜です。「何かな」「分った」。手触りで品物を想像する「さぐり絵」手で触り、匂いをかいで、レモン、リンゴ、レンコンなどの絵を完成させました。
 次は、漢字の一文字からイメージを膨らませ、風景や動植物などを描き加えて、仕上げる「感じ絵」です。喜田川さんは、黒板に大きく「土」と書くと「どんなイメージを持ちますか」と尋ねます。「土の上を、はだしで歩くと気持ちいいでしょう。動物も同じだよ。犬がいるね。木が生えてる。石ころがあるよ」と、たちまち「感じ絵」が出来上がりました。「絵は自分の心、気持ちを映すもので、これが正解ということはありません。その子にとって描きたいものが答えです」という喜田川さんに促され、子どもたちも挑戦します。8人が選んだのは水、山、海、川、人、空。先生2人と特別参加の読み聞かせボランティアの女性は手、幸、脳です。6年生の佐藤正海君は「人」に取り組み、誕生から死まで人の人生を描きました。川の字の絵からは、学校近くを流れる高瀬川の清流が思い浮かびます。海には魚釣り、貝がら集め、キャンプ、水泳と、夏休みの楽しい思い出がいっぱい詰まっていました。
完成した「感じ絵」がずらり 締めくくりはアニメーションづくり。静止している絵と一部が変化している2枚の絵の組み合わせを、交互に見ると、絵が動き出すという基本的なアニメです。喜田川さんが見本を見せたあと「さあ、これからが本番です。自分で考えてつくりましょう」と話すと、にぎやかだった教室が静まり返りました。それでも、子どもたちは真剣な表情で、シーソー、電球の点滅、ブランコ、キック、まりつき、ジャンプ、けん玉などのアニメを完成させました。
 5年生の佐藤彩音さんと2年生の佐藤快斗君が「アニメができて、うれしかった」などと、お礼の言葉を述べて、2時間のお絵かき教室の楽しい体験が終わりました。
 出野小は、日田市の中心部から車で約30分、山間部の旧前津江村(05年3月に旧日田市などと合併)にあります。保護者だけでなく、地区の人たちと学校の結びつきが強く、地域ぐるみの学校行事が多いそうです。とくに2学期は運動会、ふるさと祭り、音楽祭、オープンスクール、収穫感謝祭とスケジュールがいっぱい。子どもたち、先生と地域の人たちとの交流が毎年、にぎやかに行われます。
 ただ、今年に続いて来年も、いまのところ新入学児の予定がないなど、過疎化による児童の減少が悩みになっています。「保護者の同意」を前提に、周辺の4小学校1分校を一つに統合する計画が進んでいるそうです。
みんな自信満々、作品を手に喜田川さんと記念撮影=いずれも大分県日田市の出野小学校で


《写真上から》
・喜田川さんが4歳のときに描いたという絵を見つめる子どもたち
・「何かな」「分った」。手触りで品物を想像する「さぐり絵」
・完成した「感じ絵」がずらり
・みんな自信満々、作品を手に喜田川さんと記念撮影=いずれも大分県日田市の出野小学校で

(2009/12/03)
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