最近の援助から


記事目次



「探り絵」、迷路、アニメができた
色鮮やか、工夫とアイデアいっぱい

 宮崎県えびの市と熊本県人吉市の2小学校で11月7〜8日、へき地校援助の絵画教室「絵かき・あそび体験塾」が開かれました。ベルマーク新聞の漫画「ベルちゃん」の筆者、イラストレーター喜田川昌之さんの指導で、児童計18人は、さまざまな絵を描いて、楽しい時間をすごしました。

  《宮崎県えびの市立加久藤小学校尾八重野(おべの)分校、平川滋也分校主任》
分校は市中心部から約5`、鹿児島県境に近い、えびの高原のふもとにあります。到着すると、喜田川さんは、正門前の草むらに陣取り、校舎と屋内運動場をスケッチ。絵画教室の最初に、身近な風景画を見せると、子どもたちとの距離がグンと縮むため、毎回、学校周辺をスケッチしているそうです。
  午前中は5、6年生7人が参加。喜田川さんがスケッチした絵を掲げると、7人は一斉に「すげぇー」「うまい」。喜田川さんは、思わず苦笑いです。日用品や雑貨が入った袋の中を手で触って、中身の品物の形や色を想像しながら絵を描くときには、子どもたちは「なんだろう」「分かった、分かった」。ある子が「探り絵だ」と声を上げました。この指導法には、「手で触って想像しながら描く」というだけで、ひと言で表現する名前がなかったため、「探り絵はぴったりだね」と、喜田川さんは感心していました。5年生の崎原夏美さんは、袋の中身を栓抜きと見抜きました。「すぐに分かった。好きな色を塗ったら同じ色だった」と満足そう。
  後半は「ウサギの縄跳び」のアニメーションづくり。お手本の1枚の絵を写し、変化をつけたもう1枚を描いて、動いているように見せるのですが、みんな工夫を凝らしました。ウサギの脚が曲がって見えたり、目がぱちくりしたり、耳がぴょこんと折れて見えたり、アイデアいっぱい。創作アニメは、シーソーやお手玉などを仕上げました。
  休憩を挟んで2時間20分。「いつもは騒がしいことが多い高学年なのに、静かで驚きました。よほど集中していたのでしょう」が、先生たちの感想でした。
  午後は2〜4年生5人が集まりました。喜田川さんが4歳のころに描いた絵を見せると「わぁー、かわいい」。みんな目を輝かせていました。
  「探り絵」では、机をたたいて「こわいよー」という子や「あー、分かった。簡単、簡単」という子も。喜田川さんが黒板に1本の線を引き、「これは何に見えますか」と尋ねると、ベルト、糸、刀、縄と、すぐに答えが返ります。2本の線には線路、柵、道。「柵」の答えに、喜田川さんが牛の絵を書き加えると、牧場のできあがり。「おー、すごい」「覚えておこう」。線、点、丸の好きな形を使ってイメージ画を描き、迷路づくりをして、絵画教室は終了。3年生の山田翔太郎君は「うまくできました。けど一生懸命やったので、ちょっと疲れた」と話してくれました。

  《熊本県人吉市立田野小学校、奴田原和男校長》
市中心部から車で約30分、鹿児島県大口市に通じる久七峠を登りきると、赤い屋根と白壁の校舎が見えました。標高は680b、訪問した8日は、この秋一番の冷え込みになり、気温は零下2度、初氷が張りました。真冬は零下10度、積雪50aにもなるそうです。奴田原校長は「来客があると、何かが起こるのです」。初氷は、きっと歓迎のあいさつだったのでしょう。
  絵画教室には6人の全児童が参加。前半は、そろって袋の中身を手探りで描きます。入っているのは、やかん、砂時計、タワシ、熊手、玉じゃくし、けん玉、鍋敷き。みんな神妙な顔つきです。熊手を描いた2年生の元田真君は「こんな色だったんだ」。やかんの5年生、鹿末順大君は「ちょっと失敗。ぎざぎざが違う」。「見たものをそっくりそのままに描くのと違って、感覚とイメージで描くのだから、間違いということはありません。写真よりもよいでしょう」「大人では分からない膨らみや、くぼみに気づいた人がいて、感心しました」と、喜田川さんが話すと、みんな納得した様子でした。
  休憩時間に喜田川さんが著書の「画文集 わらべ絵集―いつもの仲間」を広げると、みんな声をそろえて文章を読みあげ、食い入るようにわらべ絵を見つめていました。後半は1、2年生3人が点と線、丸、三角を使ったイメージ画と迷路、4〜6年生3人はアニメづくりに挑戦しました。
  イメージ画は、鬼や月夜の花火、広い家が、色鮮やかに仕上がりました。上級生が作ったアニメは、柱時計や歯磨き、国旗掲揚台などさまざま。4年生の大塚ふぶきさんは、手際よく二つを完成させました。
(2006/11/20-3)


宮本武蔵のふるさとで「実験名人」
岡山県美作市で出前「ベルマーク教室」

 岡山県美作市の梶並小学校(横山泰三校長、20人)で11月16日、「実験名人ベルマーク教室」が開かれました。授業を受けたのは、併設の市立梶並幼稚園の園児や先生、保護者らも含め計約30人。出雲科学館館長で島根大特任教授の曽我部國久さんが、ヘリウムガスや液体窒素、風船などを使った実験を披露すると、紅葉真っ盛りの山々に囲まれた体育館に歓声が響き渡りました。
  たくさんの実験器材を積んで朝早く車でやってきた曽我部先生は、まず会場の体育館で実験の下準備にかかりました。入念な作業は約2時間。扱いを間違えれば事故につながりかねない火やガスを使うだけに、手抜かりは許されません。他人に任せても自分で点検し直さなければならないので、結局は自分でやる方が早いのだそうです。
  最初はヘリウムガスを吸い込んで声が変わる実験をし、風鈴やオルゴールで音の響き、振動について理解を深めました。続いて零下200度の液体窒素を使った実験では、少しの時間だけ指を入れたり花やバナナを入れたりして、どのように変化するかしないかを見ました。花はバラバラに砕け、バナナは硬くなって釘を打てるほどでした。膨らませた風船を入れると小さくしぼみ、出してしばらくするとまた膨張する様子も観察しました。シャープペンシルの芯に電気を通して液体窒素に入れると電灯のように輝き、水にスミレの色素(緑色)を入れてアンモニアやドライアイスを加えると紫色などに変化しました。子どもたちは見るだけでなく、液体窒素に花を入れたり、マシュマロを入れて食べてみたり、実験に参加して喜んでいました。
  最後は校長先生から園児までが2人1組になり、「世界で一つ」しかない万華鏡づくり。この日の体育館は寒かったのですが、実験のおもしろさにひかれた子どもたちは、ずっと目を輝かせていました。児童の一人は「マシュマロがおいしかった。万華鏡づくりが楽しかった」と満足そうでした。
  同市は2005年3月、吉川英治の小説『宮本武蔵』で武蔵のふるさととされた旧大原町など六つの町村が合併して誕生しました。北部に位置する梶並地区は中国山地の谷筋に集落が散在する山里で、山を越えると鳥取県です。小学校の歴史は1875(明治8)年創設と古く、1941(昭和16)年に国民学校になった当時は322人の児童がいましたが、戦後は過疎化の進行やダム建設などで児童数が減少し続けています。それでも子どもたちは、豊かな自然の中、元気いっぱいに過ごしています。
(2006/11/20-2)


富山湾を望む中学校で「走り方教室」

 海から吹き上げる潮風に北陸路の冬の厳しさが感じられるようになってきた11月14日、石川県七尾市の涛南(とうなん)中学校(中前猛校長、51人)で「ベルマーク走り方教室」が開かれました。日ごろ一流の陸上選手と接する機会に恵まれない全国各地のへき地校の児童生徒を対象に02年度から始まった援助活動で、今年度の開催は東京・八丈島の大賀郷中、大分・竹田市の都野中に次いで3回目でした。
  講師は、NPO法人「ニッポンランナーズ」のヘッドコーチ齊藤太郎さんとランニングコーチ堀江真由さんの2人。全国高校駅伝に選手で出場歴のある齊藤さんは、早大スポーツ科学部でランニングの理論やスピリットを学び、実業団のリクルートでコーチを務めました。同チームの休部後はニッポンランナーズ設立にかかわり、会員500人のヘッドコーチとして活動、陸上競技だけでなくサッカーや野球、サッカー審判など、あらゆるジャンルのランニング指導にあたっています。堀江さんは200メートル、400メートル走の現役選手で、出身の順天堂大では陸上競技部女子部の主将も経験しています。いずれも全国レベルのコーチ、選手で、実践を交えて生徒たちに効果的な走り方を分かりやすく伝授していました。
  あいにくの雨空で、会場は体育館の中でした。最初に体育館内を軽く4周した後、柔軟体操やスキップ、ストレッチで体をほぐしました。続いてプロジェクターで一流選手の走行フォームを映し、人骨の模型も使って、走る姿勢や腕の振り方、腰の構えがいかに大切かを強調していました。座学の後はボールや縄ばしごも使い、楽しくダッシュや競走を繰り返し、堀江さんと生徒が体育館内の短い距離を競走して終わりました。「走るのは苦手」と言っていた生徒が多かったのですが、心地よい汗をかいた後は「楽しかった」と喜んでいました。 教室があった週末には全能登中学校新人駅伝大会があり、代表選手にとってはタイミングのいい開催でした。
  七尾市は、日本海に突き出た能登半島のほぼ中央に位置する自然豊かな港町、観光の町です。その中心部から車で東南へ約30分。海沿いの「能登立山シーサイドライン」(国道160号)をしばらく走ると涛南中です。国道から案内看板にしたがって山手への急坂を登った高台に、新築されて4年という、しゃれたたたずまいの校舎があります。校庭からのロケーションはすばらしく、晴れた日には眼下の富山湾を隔てて壁のようにそびえる立山の峰々を望むことができるそうですが、この日はあいにくの雨模様で、雄大なパノラマを目にすることができなかったのは残念でした。
  ここの中学校で珍しいのは、運動会を海で開くことです。毎年8月第1日曜日に地元の漁港を借り、カヌーやカッター、競泳などを楽しみます。こうした「海の運動会」は、石川県では1校だけだそうです。運動会を開くには前日から準備が必要で、2日間にわたって漁港を休むことになります。漁船の移動も含め、関係者の協力が不可欠です。地域に愛され、支えられている学校であることがよく分かりました。
(2006/11/20-1)


一流コーチ指導に熱心な質問次々と

  今年2回目の「ベルマーク走り方教室」が、10月26日、大分県竹田市都野中学校(森本高美校長、46人)で開かれました。学校がある地域は、昨年合併して竹田市となった旧久住町。九州本島最高峰のくじゅう連山の麓(ふもと)にある標高580bの高原地帯です。校舎の後には高さ1700bを超える久住山と大船山、そして少し低い黒岳が雄姿を連ねていました。
  開催前日の夕方学校へうかがうと、芝が敷き詰められた広いグランドのトラックで、陸上部の生徒たちが練習をしていました。市の中学校体育連盟主催の駅伝競走大会に向けて、追い込み中とのこと。4年前の大会で男子は優勝し、続く県大会では2位の成績を修めています。「この時期に一流コーチに来ていただけて、とてもラッキーです」と森本校長は喜んでいました。
  当日は曇り空でしたが、時折日が差し込んでまずまずのコンディションでした。講師は元オリンピック選手でベルマーク協賛会社のエスビー食品鰍ノ勤務する遠藤司さんと、高校駅伝で活躍したニッポンランナーズの齊藤太郎さんです。共に早稲田大学競走部出身で、遠藤さんは齊藤さんのコーチだったこともあり、息の合った指導をしていました。
  はじめに遠藤さんがトレーニングをする上で大切なことについて@受身であってはならないA毎日のトレーニングを惰性で行ってはいけないB先生のアドバイスを理解すること、を自らの体験をふまえて話しをしました。その後グランドに出ての実技指導で、骨髄模型を手に齊藤さんが正しい姿勢の大切さや、足の上げ方、手の振り方を骨格の機能から分かりやすく説明しました。3人1組になって、直立した体を前後に倒して支えあい正しい姿勢を学ぶ頃には、生徒たちの間から楽しげな声が聞こえてきました。ラダー(ひもでできた梯子)を使って、走るリズムを体得する練習では、生徒たちは教えられた通りしっかりと手を振り足を上げ、続く全力走では背筋を伸ばして、習ったばかりのきれいなフォームで走っていました。
  休憩の後、走り方をもっと積極的に学びたい生徒たちは遠藤さんの指導で、両脇に置いたハードルを支えに体を浮かせ、地面すれすれに足を回転させてから走り出すという練習をしました。「一流選手も同じ練習をしている」と教えられて、みんなの顔は一層引き締まり、進んでアドバイスを受けていました。
  実技のあと、生徒たちから「練習のない日はどういうことをしたらよいですか」「大会の前にやって良いことと悪いことは何ですか」など、次々に熱心な質問がでました。「競技中に止めたいと思ったことはありますか」と聞かれて遠藤さんは「心の中で揺れ動きますが、弱い心に負けないように気持をコントロールすることが大事です」と答えていました。
  最後に3年生の河野裕太君が「遠くから来てくれてありがとうございました。普段の生活の中で今日学んだことを生かしていきたいと思います」とお礼を述べました。そして「一流のアスリートに習えてうれしかった」と話してくれました。生徒会長の日野慶一君も「走る楽しさ、気持ちよさがわかりました」と話していました。
  玄関を出ると、給食中の生徒たちがランチルームから顔を出し、手を振って見送ってくれました。「いつかこの中から、陸上界で活躍する選手が出たらうれしいですね」と遠藤さんは話していました。
(2006/11/08)
ページトップへ