カートリッジは手作業でリサイクルへ/エプソンミズベ


(2019/10/30)印刷する

 使用済みインク・トナーカートリッジの回収にベルマーク点数を付与している協賛会社のエプソン販売(ベルマーク番号73)。その活動の本質は、リサイクルをして地球環境を守ることにあります。参加団体の皆さんのもとから集められたエプソンのインクカートリッジは、長野県諏訪市にあるエプソンミズベという会社で集約・仕分けしています。どんな会社なのか……。10月初旬、同社を訪ねてみました。

エプソンミズベ本社

 「ミズベ」という社名のとおり、諏訪湖近くに本社・湖畔工場があります。本社を含めて長野県内に7つの拠点があり、社員数は185名、うち139名が障がいを持つ人です(2019年6月1日現在)。同社は、セイコーエプソン(本社・長野県諏訪市)が障がい者雇用を促進するため、1983年に設立した「特例子会社(※1)」です。

 この日は、ベルマーク運動で集まったインクカートリッジの受入れ作業を見せてもらいました。

 インクカートリッジは一箱ずつ手作業で取り出し、トナーや他社製の製品が入っていないか目視で確認します。そして手に取り、製品別バーコードと照らし合わせていきます。その数は200~300種類もあるそうです。作業していた平林昌也さんに、仕事をする上で心がけていることを聞きました。「間違わないように慎重にすること」「学校名などの必要事項が正しいかも確認しなければならないので、きちんと見ること」。これを徹底しているのだと言います。

皆さんから届いたベルマーク回収箱
他社製が混ざっていないか目視で確認

個数未記入のものは数え直さなければいけません
平林昌也さん。次の目標はアビリンピック「オフィスアシスタント」への挑戦。文書発送の準備や封筒仕分けをする種目だそうです


 カートリッジがたくさん届く繁忙期は2・3月。ベルマーク財団にたくさんマークが集まる時期と同じです。この日受入れ作業に携わっていたのは2人でしたが、忙しいときは4人に増やし、それでも1日中作業に追われるそうです。

 受入れを終えたカートリッジは、別の部屋で分類されます。台車1台に、36個の回収箱が載りますが、おおよそ1日に2台のペースでこなします。その後、キャップは洗浄して再利用、ICチップからは貴金属が回収され、プラスチック素材は社内向けのコンテナや建材などに生まれ変わります。

カートリッジも人の手で分類
緑色のICチップを取り出します

 エプソンミズベの業務はカートリッジ類の仕分けだけではありません。時計部品の組み立てや基盤のはんだ付け、名刺やIDカードの作成、資料の電子化、印刷や製本作業、特許申請に必要な図面の作成、ビルクリーニングなど多岐に渡ります。

 「事務・清掃・リサイクルとバリエーションを多く設けることによって、社員の特性を活かしやすくしています」と話すのは管理部長の荒井孝昌さん。持っている障がいによって異なる「ストレングス(強み)」を活かすというアプローチを特に大切にしているそうです。諏訪事業部の宮坂礼二さんによると、「信じられないくらい長時間、一つのことに集中して取り組むことができる社員もいる」そうです。

時計部品の外装を加工する前の準備をしています

 「『定着支援』はミズベのテーマ。法律に書かれている合理的配慮(※2)は当たり前の話」と荒井さんは話を続けます。精神保健福祉士の常駐、サポート会議の週1回実施、ジョブコーチ(障がい者の働く環境づくりを支援する職場適応援助者)を14人配置、体操教室の実施、など多角的な取り組みを続けています。それでも障がい者がずっと働き続けるのはなかなか困難なのが実情だといいますが、「ミズベは今年の上期には離職者ゼロを達成したんです」と荒井さん。社員の中には34年の勤続年数を誇る人もいるそうです。

 さらに、「これは自慢なのですが…」と荒井さんが切り出したのが、「アビリンピック(全国障害者技能競技大会)」の全国大会で社員が入賞したことでした。障がいを持つ人が、製品パッキングやビルクリーニング、電子機器組立などの23種目で競う大会です。昨年、沖縄で開催された全国大会には社員5名が出場し、2人が金賞を、銀賞と銅賞がそれぞれ1人ずつという素晴らしい成績を収めました。

 金賞をとった一人が、この日仕事をしていた平林さんでした。3年連続で全国大会に出場し、2年間は銀賞だったのですが、昨年、ついに念願の金賞を手にしました。常に淡々としてクールな平林さんですが、受賞の際は思わず「やったー!」とジャンプして喜んだそうです。

左から宮坂礼二さん、エプソンミズベ代表取締役の坂主昭市さん、荒井孝昌さん

 ベルマーク運動で集められたインクカートリッジは、こうした人の手によって、正確に、根気強く、貴重な資源として大切に扱われていました。環境保全につながるリサイクル活動の輪をつなげていくには、こうした方の力が不可欠であると感じました。


 ※1「特例子会社」 従業員が45.5人以上のすべての事業主は、国が決めている法定雇用率を超える割合で障がい者を雇用する義務があります。そこで、さらに雇用を促進し、安心して長く働けるよう、設けられたのが「特例子会社」制度です。事業主が障がい者のために特別な配慮をしたうえで、一定の要件を満たした子会社を設立したときに、「特例」としてその子会社で雇用される障がい者を、親会社で雇用されているものと考えて雇用率を算出できます。また、算出にあたっては関係するグループ会社を、親会社に合算することが可能です。民間企業の法定雇用率は2.2%で、セイコーエプソンの雇用率は2.62%だそうです。

 ※2「合理的配慮」 障がい者が社会生活を送るうえで、事業主が負担にならない可能な範囲で障がい者に対して配慮をすることです。例として、知的障がいを持つ人には絵や写真などを使ってわかりやすく説明すること、精神障がいを持つ人の気持ちが不安定になりそうなときは落ち着ける場所を用意すること、等が挙げられます。

フルフラットの玄関
車いすを使う社員が使いやすいよう、鏡の傾きを工夫している

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