へき地校など支援



今年もへき地学校等へプレゼント  2006年度のベルマーク援助校をたずねて


文化祭で装置使い初め、購入本も「たくさん読もう」

大分県立聾学校
 全国のろう学校13校にベルマーク運動からの贈り物、教材提示装置が届きました。参考資料やビデオなどの教材を大きく映し出し、聴覚に障がいがある児童・生徒の学習に役立ててもらう狙いです。大分県立聾学校の藤内和子校長は「いろんな機能が備わっているので、全職員で相談して、授業にうまく採り入れたいと考えています。まず11月の文化祭で使ってみたい」と話しています。
  大分県立聾学校は、幼稚部、小、中学部、高等部(本科、専攻科)があり、3歳から20歳までの56人が学んでいます。県内では唯一の専門施設なので、通学が難しい8人が校内の寄宿舎で暮らしています。
  ベルマークには1963年に参加していて、小学部(18人)で使う設備品を購入したばかりでした。逆上がり補助器、野球用ベースの体育授業用品と「教科書に出てくる本」セットです。
  購入図書は88冊、教室前の廊下掲示板にブックカバーを張り出し、ひと目でどんな本があるか分かるようにしてあり、本は下級生、上級生それぞれの読書コーナーに収められていました。また、子どもたちが「読みたくなる」ように、先生たちがアイデアをひねり出しました。「10月の目当て(目標)」のひとつに「本をたくさん読もう」を挙げ、購入図書の題名を印刷した個人カードをつくりました。子どもたちが読み終えたものにシールを張り、10冊になると表彰状がもらえるというものです。
  先生の説明を聞く子どもたちは興味津々。さっそく読書コーナーに駆け出す子もいて、先生のアイデアは効果が十分のようでした。
(2006/10/11-2)

ボールと跳び箱使って全員そろっての体育授業

福岡県みやこ町立伊良原小学校
 福岡県みやこ町立伊良原小学校(鳥田俊孝校長)は北九州市から約50`、標高200bの山間地にあり、県内で最も古い木造校舎の学校です。児童は11人で、1、2年生と、4、5年生が複式、6年生が単独の全校3学級です。ベルマーク運動からの贈り物は、パソコン用のカラープリンターや跳び箱、スローモーボールなど10点。学校を訪問した日は、跳び箱とスローモーボールを使って、児童全員が体育の合同授業を受けていました。
  スローモーボールは、直径19a〜44aのポリ塩化ビニール製で赤、青、黄と色とりどり。上に乗ったり、手で突いたりして、バランス感覚や筋力が養えるそうです。最初は、児童全員でボールを大きく弾ませながら、先生の合図で隣に次々とリレー。次は上級生がボール乗りに挑戦しました。うまくできた子には下級生から拍手、よろける子には「がんばれ、がんばれ」の声援が起きました。児童11人の小さな学校だからこその、まるで家族の様な雰囲気です。
  跳び箱は、上級生が5段、1、2年生は4段を練習しました。今度も拍手と声援です。何度かの失敗の後、1年生の加耒智仁君が4段をクリア。「やっとできた。うれしい」と満足そうでした。
  鳥田校長は「プレゼントは勉強やスポーツの励みになります。保護者や地区の人たちにもお知らせしました」。理科実験教室や一輪車講習会など、ソフト援助についても「機会があれば、ぜひ開いていただけませんか」と話していました。
  伊良原小は、地区の伝統芸能や行事に積極的に参加しています。毎年5月には近くの高木神社で行われる「豊国楽」に子ども神楽を奉納しているほか、9月に開かれる「下伊良原彼岸花祭り」で「伊良原子ども太鼓」を披露します。今年も9月23日の祭りで、鮮やかなバチさばきを見せ、地区の人たちから大きな拍手を浴びたそうです。
(2006/10/11-1)

ソフトボーリングに大喜び

奈良県立奈良東養護学校
 奈良県立奈良東養護学校(矢倉資久校長、262人)に直線縫いミシンや掃除機、ソフトボーリングセットなどが贈られました。生徒たちは早速、授業などで使い、喜んでいました。
  同校は2年前、西の京養護学校と隣接の七条養護学校が統合し開校しました。知的障害や病弱な子が通っており、小学、中学、高等部があります。昨年春には、軽度の知的障害の高等養護部が新設されました。従来の両校舎を使ったままの統合のため教職員全員が集まれる大きな職員室がなく、各学年ごとに職員室を置いています。また児童生徒数も多いことなどから、平成20年度には奈良西養護学校に分割することになっています。
  同校を訪れた時、中学1年生6人が直線縫いミシンを使い、10日後に控えた運動会で使う組旗を縫っていました。ペダルを踏む方式のミシンは初めてですが、先生の指導でうまく縫い上げていました。
  高等部では、掃除機とソフトボーリングセット。生徒会役員らが早速、ソフトボーリングを披露してくれました。これまでは、ペットボトルを並べドッジボールを使うなど手製でしたが、今回のはピン、ボールも柔らかく、さらにボールは指がはいるようになっています。このゲームは子どもたちの人気が高く、学校では授業、クラブ活動に活用したい、と言っています。
  同校はベルマーク運動に参加して35年ほど経ちます。毎週火曜日に集めていますが、その中心になるのが中学、高等部からなる生徒会ベルマーク部です。部長、副部長に多くの生徒が立候補するなど人気の部になっています。3年生の現在の部長は高等部になってから毎年立候補していたそうです。「教室を回って(ベルマークを集めるのが)楽しい」と話していました。
(2006/10/6)

届いた大型プリンターに喜ぶ子どもたち

一関市立津谷川小学校
 秋色が濃くなったの峡谷の道を抜けると、ススキがなびく津谷川のほとりに岩手県一関市立津谷川小学校(熊谷正校長、児童数35人=へき地1級)が輝いていました。「昔は、この北上山地は杉林に覆われ、山は木材を運び出し人たちでにぎわっていたそうです」と、迎えに来てくれた佐藤智之先生は話してくれました。
 津谷川小学校は、ベルマーク運動の今年度へき地援助の対象校となりました。県内では、ほかに下閉伊郡田野畑村立田野畑小、気仙郡住田町立有住中の3校が対象校です。全国のへき地の小中学校には100校贈呈。この援助は、全国のPTAのみなさまからの贈り物です。
 9月初め、大型プリンターと一輪車とサッカーボールが学校に届きました。学校が希望したものなので、先生や子どもたちは品物の到着を待ち望んでいました。
 校長の熊谷さんは、「大型プリンターは、学校の予算ではとても買えるものではないので助かります」と、教頭の皆川英子さんは「子どもたちも喜んでいました。ポスターなど大きなものを印刷する時には便利ですよね。大切に使います」と、それぞれ笑顔で話していました。
 一関市は、平成17年9月に千厩町など近隣7市町村が大合併して面積がぐんと広がりました。学校のある室根町津谷川は、市の東南部にあり近くの大森山(756b)、太田山(686b)などの山稜を越すと、もう宮城県気仙沼市です。学校の近くを流れる津谷川は宮城県に流れ込んでいて、川が縁で県を越えた学校交流も行われています。室根町は戸数270戸、人口は967人。稲作を中心に葉たばこ、しいたけ、花き栽培、さらに酪農、ブロイラーの飼育などが行われている農山村です。いまは専業農家は少なく、保護者の多くは外の町に職を持つ、兼業農家が大半です。
 保護者には室根町津谷川出身者が多く、教育への関心は高く、学校行事には自分たちのことのように地域ぐるみでお手伝いをしてくれます。少子化の影響で平成13年度からは複式学級が2つになり、今年度は3・4年と5・6年が複式学級となっています。
 「昔は林業も盛んで、家族も多く、校庭は子どもたちであふれていました。懐かしいですね」。熊谷校長も津谷川小学校の出身で、先生が通っていた当時は児童数が300人を超えていたそうです。
 学校を訪ねた時、体育館で児童全員と先生方が一緒になって20分の業間の時間に「おうさまジャンケンゲーム」をして遊んでいました。「この縦割り交流は、小さな子どもたちが大きな子どもたちと触れ合う大切な時間です。ここで優しさと厳しさを学んでいきます」と付き添いの先生は話してくれました。館内には子どもたちの歓声が響いていました。
(2006/10/2)

グランドゴルフで地域の人との交流楽しみ

鳥取県日南町の石見東小学校
 中国山地の奥深い鳥取県日南町の石見東小学校(上原大介校長、35人)で、グランドゴルフに興じる子どもたちの歓声がこだましました。グランドゴルフはへき地校への秋の贈り物のひとつですが、学校側は「お年寄りら地域の人たちとの交流が楽しみです」と喜んでいました。
  日南町は岡山、広島、島根の3県境に接しており、石見東小から山越えれば岡山県。校区内は260戸ほどで、複式の4学級でへき地1級に指定されています。
  同校は、地元の大人の指導で子ども神楽が盛んなほか、田植え稲刈りなどを通して地域との結びつきを強めています。これまでは教えを受ける、という形の交流が多いため、ぜひ一緒に遊べるものを、とグランドゴルフに目をつけました。
  グランドゴルフはゴルフをアレンジした新しいスポーツ。木製のクラブでボールを打ち、ポールポストに入れるまでの打数の少なさを競うゲームで、少ない人数でも手軽に出来ることもあって生涯スポーツとしても人気が高い。鳥取県が発祥の地のため、日南町でも盛んです。町内に多くのゴルフ場コースがあり、特に同校から東南1・5`の三本松のゴルフ場は芝生が広く町内外から多くのお年寄りが訪れます。
  同校では、地域のお年寄りに来ていただく機会があまりないので、これを機にゴルフ指南役をお願いしたい、と話しています。いずれは、子どもたちとの交流戦でも開ければ、と期待を寄せています。
  9月22日に同校を訪れると、6年生8人が放課後、運動場でグランドゴルフの初打ち。子ども会でやったことがあるという子もいたが、ほとんどは初体験。ゴム製のスタートマットにカラーのボールを置き、85aほどのクラブで打ち込むと、ボールはコロコロと。最後にゴールポストに入れ込むと「入った、入った」と喜んでいました。何度か繰り返しているうち、子どもたちは「ごっつい面白い」「校長先生、休憩時間にやってもいいですか」とすっかり、とりこになった様子。
  上原校長も「いい贈り物をありがたい。近くにいいゴルフ場もあるので、お年寄りらとの交流を図っていきたい」と話していました。
(2006/9/27)

大判プリンターで素早く教材づくり

北海道稚内市立抜海小中学校
 北海道稚内市立抜海小中学校(佐藤勢二校長)は市の中心から南へ約20`。日本海を一望する、サロベツ原野の一角にあるへき地2級校です。9月初め、ベルマーク運動からの贈り物、大判プリンターとバスケットボール、ライン引きが届きました。
  「早速、使わせてもらっていますよ」と言って、佐藤校長が笑顔で迎えてくれました。校長室には、沖合に浮かぶ「利尻富士」と呼ばれる利尻山の美しい姿と学校の教育目標“やさしく かしこく たくましく”が、大きくプリントされて飾ってありました。
同校は小学校と中学校の併置校です。在校生は3年生から6年生までの児童8人と、中学生3人。漁業と酪農のふたつに分かれた地区を持つ校区は広く、5キロの道を自転車通学する児童もいます。学校から1.2`離れた宗谷本線抜海駅に電車が止まるのは、上下線とも日に5本。これが唯一の公共の乗り物です。
  大判プリンターは職員室に置かれていました。小学校の八重樫裕希先生によると、市内で大判プリンターがあるのはまだ少なくて、教育委員会と2つの学校だけだそうです。「これまで模造紙に手書きで作っていた教材を、素早く作れるので効率的です。他校の先生が羨ましがるでしょうね」と、八重樫先生は話しています。中学校の川端学先生は「先週、中学生は修学旅行で札幌へ行きました。生徒たちにパソコンでレポートを作ってもらい、大きくプリントして学習発表する予定です」と話していました。傍にいた佐藤校長も「大いに活用してください。必要な経費を心配しなくてもいいですよ」と応じていました。
  体育館に行くと、既存のバスケットゴールのほかに、子どもたちが作ったというゴール板が保護者の手でしっかりと取り付けてありました。手作りのゴールと真新しいバスケットボール。「試合用の規格品は今までありませんでしたので、子どもたちと共に喜んでいます」と近藤秀彰教頭は目を細めていました。
  小学生は10月の発表会に向けて、全員で器楽演奏の練習に励んでいます。一人ひとりの役割が大きいので、自分のパーツはしっかりマスターしようと真剣です。こちらの問いに、「曲はビィーナスです」「体を動かすのが好きだから、ドラムが好きです」「一番好きなのは数学」などと、控えめながらもはっきりと答えてくれました。
  ところで、学校は今年度いっぱいで閉校することが、正式に決まり、110年の歴史を閉じることになりました。就学前の幼児が一人しかいないことと、大きな学校へ転校する希望者がいるためだそうです。佐藤校長は「さびしいですが仕方ありません。でもいただいた品物はよその学校に引き継ぎ、これからも役立たせていただきます」と話していました。
(2006/9/26)

ドレミマットが大人気

三重県一之瀬小学校
 収穫の秋の訪れが早い三重県伊勢地方では、お盆過ぎには稲刈りが始まります。志摩半島付け根の山あいでも9月初旬には稲刈りが終わり、切り株が並ぶ田んぼに、運動会の練習に励む子どもたちの元気な歓声が響きます。
  児童数62人のへき地校である度会町立一之瀬小学校に援助の品が届いたのは運動会直前のことです。早速、ワンタッチテントやMD・CDラジカセが大活躍しました。このほか、家庭科の授業に使われる直線縫いミシン、マットを踏むとドレミの音が出る「ドレミマット」、ソフトバレーボールなどが届きました。とくにドレミマットは、低学年や養護の子どもたちに大人気です。
  「以前、ベルマーク運動が盛んな学校にいたことがありますが、ここは学校規模が小さく参加できていません。それなのにこんなに多くのプレゼントをいただき、本当にありがとうございます」と上野秀司校長先生は感謝していました。
  町内には現在、四つの小学校がありますが、子どもの数が年々減少する傾向の中で、近い将来、一つに統合しようという話し合いが行われているそうです。そうなれば1873(明治6)年以来133年の歴史を持つ一之瀬小も閉校を余儀なくされます。
  そんな学校の大きな自慢は、女子ソフトボールの一之瀬エンペラーズです。昨年、今年と県大会で連続優勝し、昨年は福岡ドームで開かれた全国大会で堂々3位になりました。町内の別の小学校の子どもたちとの混合チームですが、名前の通り元々は一之瀬小のチームで、何十年にもわたって地域の人たちに支えられ続けているのです。校長室に飾られた、たくさんのトロフィーや賞状が、強豪としての歴史を誇っています。
  校長室で目に付いたもう一つは、第84回全国高校野球選手権大会の硬式ボールです。卒業生の一人が4年前、久居農林高校の選手として三重代表で甲子園に出場した記念だそうです。
  へき地校出身でも、がんばれば大きく成長できる。そんなことを身をもって示してくれる先輩の存在が、後輩たちを励ましています。
(2006/9/13)

届いたミシンやボードに喜ぶ
「助けてもらうだけでなく地域に役立つことをしたい」

富山県立となみ養護学校
 富山県立となみ養護学校は、チューリップや散居村で知られる砺波平野南部の南砺市にある養護学校です。歴史は比較的新しく、創立して24年です。広々とした校舎は田んぼの真ん中にあり、小学部から高等部までの計99人が学んでいます。
 ここに9月初め、ベルマーク教育助成財団からさまざまな教材、機器が届きました。
 「集会用テント」は5・4b×3・6bで、主に運動会用です。長年の希望でした。運動会は春に行われるので、今年は5月に終わっていますが、来年の活用が期待されています。
 「ジグザグミシン」は、高等部の生徒たちが専門教科で使うために希望しました。同校には、ほかにもミシンがありますが、生徒たちが将来目指している就労の機会を増やすためには、いろいろな種類のミシンを扱うことが有利になります。「掃除機」も同じです。単に校舎内の清掃に使うだけでなく、生徒たちが病院の掃除など、サービス業関係に就労することも念頭に置いています。
 「透明らくがきボード」は、低学年の子どもたちが遊びながら絵や文字に親しむことを狙っています。「トレーニングバルーン」は、上に乗るなどして遊びながら、身体機能を向上させるものです。インクジェットの「カラープリンター」は、校務のほか、高等部の生徒の情報教育に役立てる考えだそうです。
 養護学校が置かれている状況は、大きく変わろうとしており、将来は違った障害の子どもたちも受け入れるようになるかもしれないそうです。そのときに現場でどう取り組むか、設備をどうするかなどが課題になっています。
 そんな中、となみ養護の高等部の生徒たちは週に1回、隣接の特別養護老人ホームや老人健康施設を訪問し、お年寄りの話し相手やベッドのシーツ交換、床やガラス清掃などをしています。また部活で帰りが遅くなったときに利用することのある最寄りの無人駅・越中山田駅の清掃も、年に1、2回しているそうです。
 「助けてもらうだけでなく地域に役立つようにしたいと考えています。今回の援助も何らかの形で地域や社会にお返しできれば……」と金岩清之介校長先生は話していました。
(2006/9/11)