へき地校など支援



今年もへき地学校等へプレゼント  2003年度のベルマーク援助校をたずねて

北から南から ベルからの贈り物に子供たちの歓声

 ベルマーク運動が、へき地学校等を支援するようになり40年が過ぎました。
 PTAの皆さんと子供たちの、地道な努力によって生まれた援助資金は、これまでへき地の子供たちをどれだけ勇気づけ、励まし続けてきたかはかり知れません。
 いま、へき地の教育環境は少しずつ改善されてきてはいますが、学校の設備品はまだ十分とはいえません。
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 顕微鏡を贈られた学校の子供たちは、近くの池にいるミジンコや珪藻などを持ち込み、顕微鏡でプランクトンを調べ、「見えない」、「いや、見えた」と楽しそうに実験に取り組んでいました。
 一輪車に挑戦、「やっと乗れたよ」と、仲間に喜びを伝えている子供がいました。
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 贈呈校を訪ね、次代を担う子供たちの笑顔に触れ、わずかな教材で学んでいる子供たちの姿は輝いていました。


届いた顕微鏡のぞいて 「見えない」「見えたよ」

北海道礼文島の礼文町立香深中学校
 日本の「てっぺん(最北)の島」、北海道礼文島の礼文町立香深中(石津和之校長、66人)にベルマークからのプレゼントが届きました。デジタルビデオカメラなどと並んで調理実習用のオーブンレンジや最新式の生物顕微鏡がありました。これらの教材を使って2学期の授業が進められました。
 礼文島は、稚内市からフェリーで2時間ほど。さまざまな高山植物が楽しめる「花の島」として人気を集めています。
 香深中は港の後ろの丘の中腹に礼文小と並んで建っています。
 朝の1時間目、24人の1年生の生物の授業が始まりました。理科担当の田中秀平先生が取り出したのは、ベルマーク財団から届いたばかりの生物顕微鏡です。これまでの顕微鏡は反射鏡を明るい窓の方に向けて光を取り入れる仕組みでしたが、今度の顕微鏡は電気の照明付き。暗い室内でも観察出来るのが強味です。
 生徒たちは、田中先生が近くの池から採取してきたミジンコや珪藻などのプランクトンをピペットで取ってプレパラートを作り、代わる代わる顕微鏡でのぞいては、「見えない」「いや、見えたよ」と和気あいあい。
 森尾桃子さんは、「明るかったので、はっきり見えました」、佐々木悟史君は、「生物に興味が湧いてきました」と感想を話してくれました。
 石津校長先生や1年生担任の東川真理先生らも加わって、「かなり明るく見えるね」などとニコニコ。
 先生方は、「大切に使わせていただきます。全国の皆さんによろしくお伝えください」と話していました。


ロング一輪車やテント 運動会ですでに活躍

茨城県高萩市の君田小学校
 今年度のへき地学校援助対象校となった、茨城県高萩市の君田小(樋口富江校長)には、真新しいイージーテント、ボディーボール、一輪車などが届いていました。
 「小さな学校ですので、なかなか教材や教具がそろいません。今度、ベルマークからたくさんの贈り物をいただき感謝しております。子供たちも大変喜んでおります。早速、秋の運動会で使わせていただきました。休み時間は大きなボールで楽しそうにあそんでいます」。樋口校長先生は笑みを浮かべて話してくれました。
 学校は、市内から車で30分ほど山に入った海抜516bの地にあります。現在、17人の子供たちが複式授業で学んでいます。校庭は広々として、君田中学校も同じ敷地に仲良く並んでいます。豊かな自然に囲まれ、ノウサギやキジ、キツネ、イノシシ、多くの野鳥などが時折姿を見せます。
 この地区は、古くから林業と畜産が盛んな土地でした。子供たちは、地域と密着した自然観察会や林業体験学習、総合的な学習の時間などに取り組んでいます。保護者も「おらが学校」という意識が強く、大変協力的で、多くの特色ある手作り施設を作ったり、行事への協力をしていただいています。それらの施設の名前の頭には、必ず「風の子」という枕ことばがついています。訪ねた時、「風の子水田」にはもち米の稲穂が輝いていました。すでに「風の子園」で収穫したキビと一緒にキビもちにし、君小祭りで地域の方や保護者に味わってもらいます。
 毎年夏休みには、市内の小学校の児童たちを対象にした「サマージャンボリー」や「花貫川源流体験」が君田小を会場に行われ、「風の子広場」での飯ごう炊さんや広いグラウンドでのキャンプファイアーを体験します。
 また、校舎の正面には、山の斜面を利用したミニ・ゲレンデ、校舎の裏には、手作りの「風の子スケート場」があり、子供たちの冬の憩いの場となっています。


12人の心が一つに 贈られた一輪車で演技を披露

愛知県額田町千万町(ぜまんじょう)小学校
 真新しい一輪車に乗った全校生12人が、先生手作りのマントを秋風になびかせ、運動場を駆け回ります。ベル援助で一輪車を贈られた愛知県額田町千万町(ぜまんじょう)小学校(斎藤哲彦校長)の子供たちが、日曜日の9月28日に開かれた運動会で、見事な一輪車演技を披露してくれました。
 名古屋から車で1時間半ほどの山あいにある過疎地ですが、「元気で心豊かな子」を育てるのが地域みんなの願い。期待に応えて千万町小では以前から全校生による合奏と一輪車に取り組み、1987年には全日本子ども音楽コンクールで第3位、朝日新聞社の全日本健康優良学校表彰小規模校の部で全国特別優秀校(日本一)に選ばれるなどしています。
 ことしのベル援助ではミニサッカーゴールなどとともに、古くなっていた一輪車の一新を選択。夏休みにはベルの一輪車講習会も開いて技を高め、運動会を迎えました。
父母、祖父母、兄弟や姉妹、来賓席の助役、教育長らの拍手の中を1年生2人、3年生5人、4年生1人、5年生4人の計12人が入場。斎藤校長から「ベルからの贈り物で一輪車が新しくなりました」との紹介があった後、演技をスタートさせました。
 まず、2人だけの男子である5年生の荻野貴文君と鈴木諒佑君が、講習会で習った蹴り上げ乗車とバック乗りを披露。同じ5年生の荻野唯さんと山本佳奈さんは素早い方向転換、3・4年生6人はメリーゴーランド、1年生の荻野詩織さんと佐宗仁美さんも見事に手つなぎを見せてくれました。最後に全員で手をつないで回る大車輪。12人の心が一つになりました。
 「練習通りできた」とみんなニコニコ顔。佳奈さんは「6年生になる来年は背の高いロング一輪車に挑戦したい」と目を輝かせていました。


グループ競技の楽しさ 味わって欲しい

鳥取県日南町の福栄(ふくさかえ)小学校
 鳥取県日南町の福栄(ふくさかえ)小(須田秀和校長、34人)にはミニサッカーのゴールポストとサッカーボール5個のセット、全自動洗濯機、ラジカセ、クリーナー、屋外用ボール整理かご各1台、ドッジボール14個が贈られました。
 中国山脈に囲まれた標高460bにあって、へき地等級1級の学校です。校庭には桜の古木が並び、花のシーズンになると県外からの見物客が来るほどです。子どもたちが一番喜んでいるのはサッカーボールでした。理由は山間で雨が多く、冬になると積雪、日照時間の都合で屋外スポーツが難しくなり、ミニサッカーが体育館で出来るからです。子どもたちは届いたばかりのボールを使い、桑原敏博先生からペナルティシュート、パス回しを教わっていました。1年から3年の低学年生17人が2チームに分かれての試合では男の子と女の子が一緒になってボールを追い、汗びっしょりになっていました。
 ゴールキーパーを努めた角田将汰君は「ボールが捕れないと思っていたけど、小さくて捕れた。おもしろかった」と満足そうでした。庄原和樹教頭は「最近の子どもはグループでする競技をあまり好みません。昔は上級生が下級生に色々な遊びを教えたものです。ミニサッカーでグループ競技の楽しさを味わってくれると良い」と期待していました。同校の運動会は児童数が少ないため、老人会、青年団ら地域の人も一緒に参加、豆腐やビールを速く食べる「食べ物競争」などをして家族的な運動会を催しています。ドッジボールもこのときに活躍します。
 全自動洗濯機は子どもたちが家庭科の時間にTシャツなどの洗い方を学びます。石鹸を使っての洗い方は現実に合わないので、洗濯機を使います。ラジカセは毎日10分間の朝の会にクリスマスソングなど季節の歌をかけ、教室で担任の先生と一緒に聞きます。


ロング一輪車に挑戦
5人が乗れるように
生徒たちがウミガメ放流25年

鹿児島県中種子町の岩岡小学校
 鹿児島県中種子町の岩岡小(福元正範校長、35人)には、一輪車5台とグランドゴルフ・セット、デジタルカメラ1台が届きました。福元校長は「欲しくても買えない物ばかりで、ありがたいです」と喜んでいました。
 中種子町は、種子島宇宙センターのある南種子町に隣接。同校は「ウミガメの放流と花と1輪車の学校」をキャッチフレーズにしています。
 キャッチフレーズのウミガメ放流は、児童たちが25年も続けています。アカウミガメが産卵にくる近くの長浜海岸で今年も採卵し、校内のふ化場で270匹をふ化させ、8月21、31日に放流しました。
 学校では一輪車に力を入れており、1年生から体育の時間に取り組んでいます。秋の大運動会では競技種目もあります。25台あった1輪車が、贈られた5台で計30台に増えました。同校には埼玉、栃木、岐阜、福岡の4県から5人の「たねがしま留学生」がいるが、2ヵ月ほどで一輪車に乗れるようになったそうです。
 贈られた5台のうち1台は、サドルの高いロング1輪車。届いてすぐに6年の森山巧君ら5人が挑戦し、乗れるようになりました。森山君は、ロング1輪車の乗り方をインターネットで調べて研究したそうで、「最初はこわかったが、すぐに乗れるようになりうれしかった」と目を輝かせていました。
 グランドゴルフ・セットを希望したのは、6月4日の開校記念日に児童たちは校区の高齢者とゲートボウル大会をしており、贈呈品のリストを見た児童たちが、「グランドゴルフも高齢者と一緒に楽しめるのでは」と希望したそうです。
 村岡由一教頭は「一輪車はまだ不足で、児童1人に1台は欲しい。デジタルカメラは2台になり、学校行事で活躍しそうです」と話していました。


重度障害の児童・生徒に 必要なデジタルカメラ類


沖縄県浦添市の県立鏡が丘養護学校浦添分校
 沖縄県浦添市の県立鏡が丘養護学校浦添分校(新里邦子教頭、16人)が希望した教材は、液晶つきデジタルビデオカメラ、デジタルカメラ、デジタルカメラ用カラープリンター、クリーナーの各1台。
 新里教頭と高等部の大城徹也先生は「デジタルカメラ類は、自分で動くことができない重度障害の児童や生徒に、授業や日ごろの活動、生活を記録して大画面で見せ、カラー写真の新聞を作って見せるなど、視覚を通して見せるのに必要です。本当にありがたいです」と感謝していました。
 同分校は、同市内の本校から約3`離れており、16人の児童・生徒は全員、隣接の県立沖縄療育園(95人)の入所者。小学部3人、中学部6人、高等部7人の全員が、自分で体を動かすことができず、言葉を発する発語もできない重度障害児者です。
 児童、生徒たちは、校内・校外行事や授業風景、生活ぶりなどを記録したビデオを、プロジェクターで大画面に映したのを見たり、先生たちが毎月1回、学部ごとに発行する新聞を見るのを楽しみにしています。
 新聞制作に必要なデジタルカメラは、これまで3学部で2台しかなく、やりくりして使っていました。1台増えて学部ごとに使えるようになり便利になりました。
 プリンターも普通のカラープリンターが1台で、写真処理も学部新聞もすべて処理していたためにインク代がかさんでいました。新しくインクがいらないデジカ専用のプリンターが入ってインク代の節約になり、色のきれいなカラー写真ができるようになりました。
 3学部の新聞には名前が付けられ、小学部は「あくしゅ」、中学部は「チョンチョン」、高等部は「すまいる」です。カラー写真がふんだんに使われ、活字の少ない見て楽しい新聞になっています。先生たちは「カメラ、プリンターが充実して新聞作りが楽になります」と喜んでいました。


ネットを使って調べ 他校とも活発な交流


津市の三重県立聾学校
 聴覚に障害のある子どもたちが学ぶ聾(ろう)学校へは、ことしも協力会社・エルモ社の教材提示装置を全国16校にプレゼント。津市にある三重県立聾学校(松本傳夫校長)では、「視覚情報による授業に、大きな威力を発揮してくれるでしょう」と、期待しています。
 同校では幼稚部、小学部、中学部、高等部で構成。通学、寄宿合わせて90人の児童・生徒が、ハンディを乗り越えるのに必要な知識や技能、習慣を養い、生きる力を身につけようとがんばっており、「近年は子どもたちがより自信を持てるように、大学進学にも力を入れている」(松本校長)そうです。
 学習科目や内容は一般の学校とほぼ同じですが、耳の不自由を補うために、どの教科でも視覚による学習が最重点になります。最近ではパソコンを使って、インターネットでの調べ学習や、他校の掲示板を通じてのやりとりなどが欠かせません。パソコンはまた、使いこなすことで、就職など社会へ出る武器になるよう、パソコン検定にも挑戦しています。
 ベルが贈った教材提示装置は、こうした学習に大きな頼りになるでしょう。使いやすく、OHPのように図面などのシートを挟んだりしなくても、教科書などを台に置いたり壁に掲示すれば、くっきりした画像や文字を拡大したり、立体的に映し出します。マイク入力やリモコン操作なども可能です。
 「これを使えば、生徒たちが学年末に行う総合学習の発表も、楽しくなりそうです。そのためには、この機器を初めて手にした私たち職員が、使い方を十分に理解し、授業での効果的な活用法を身につけねば・・・」と、中学部で技術・家庭を担当する伊藤みゆき先生は話していました。


カラー拡大読書器使い 画数の多い文字に威力

盛岡市の岩手県立盲学校
 盛岡市北山の岩手県立盲学校(石田豊校長)にはカラー拡大読書器1台が贈られました。全盲の生徒は、点字を使いますが、弱視の生徒は拡大読書器を使ってテレビの受像機に字を大きく映して本を読みます。
 杜と水の都、盛岡に明治44年私立岩手盲唖学校として創設した同校には早期教育を受ける幼稚部の4歳児から高等部専攻科の55歳までの45人が通学、寄宿しています。
 当面、この拡大読書器を使うのは瀧沢英男さん(50)です。瀧沢さんは、長年、都内のホテルで料理長として働いていましたが、病気により視力が低下したため、職を辞して故郷の岩手県に戻り、この春、高等部の保健理療科に入学しました。
「医学書の文字は画数が多く、ルーペで見ても文字が塗りつぶされたようにしか見えません。勉強を続けていくことに不安を覚えていました。カラーで良くわかる拡大読書器を使うことにより、自分の気持ちも、新たな人生に乗リ出す自信に変わってきました」と話していました。
「毎年、中途視覚障害者は増えています。現在ある機種も古く更新が必要で、何台あっても足らないのが盲学校の現状です。今回の寄贈を心から感謝します」と藤嶋博教頭先生は話していました。


病院内学級ではパソコンは必需品 プレゼントに先生も大喜び


徳島市の加茂名小学校
 徳島市加茂名小(三木次尭校長、548人)の健康学級にはノート型パソコン、プリンター、パソコンデスク、学習ソフトが届きました。健康学級とは病気やけがで入院、学校に通えない子どもたちのために、病院の中に教室を設けたもので、徳島県下の小学校ではここだけ。同市蔵本町の県立中央病院の中にあります。現在、2ヵ月前から肝臓で入院している同校5年A子さんが武市美保先生に付き添われて勉強しています。授業内容は加茂名小と一緒で、体育を除いた以外、病院の診察を受けながら全部します。ところが病院の中の授業では理科の実験などはできず、パソコンの絵を見ながらします。算数の分数計算も正しい答えをパソコンの画面の中から選び、マウスを押して正解を選びます。手をけが、鉛筆が持てない子などには指先でキーを押すだけで答えが出せるので、院内学級にとって、パソコンは必需品なのです。これまでは、武市先生が私物を毎日、学校から病院に持ってきて教えていました。
 新しく届いたパソコンを前に、武市先生とA子さんは大喜び。「一対一の授業は息の詰まるところがあって、A子さんに『疲れてない?』などと聞きながら、進めます。疲れたらパソコンでゲームをすることもあり、気持ちをリフレッシュして出来るので大助かりです」とは武市先生。A子さんは「私は算数が得意。面積の計算はパソコンを使うとおもしろい。入院中に苦手なものを無くしたい」と張り切っていました。