へき地校など支援



今年もへき地学校等へプレゼント  2002年度のベルマーク援助校をたずねて


町は北緯45度の真上です
「IT教育」が盛ん 全国へ情報を発信

北海道幌延町問寒別小中学校
 今年度のベルマークのへき地学校援助の対象校である北海道・幌延町問寒別小中学校(尾崎信幸校長、小学生44人・中学生22人)を訪ねました。白い校舎は、カエデやダケカンバなど錦に染まった「北の大地」に輝いていました。
 学校には、DVDビデオプレーヤー、CDラジカセ、ジョイントフロアマットなどが届きました。ジョイントフロアマットは低学年のプレールームの「給食コーナー」に敷き詰められて、その上で子供たちは仲良く食事をしていました。「暖かくて柔らかいマットを、ベルマークから贈っていただきありがとう」と元気よく声をかけられました。
 今年で創立92周年。この学校の児童・生徒の数は、道内では珍しく増加しています。
 町は、北緯45度の真上にあり、雄大な天塩山地の山並みが望め、学校の近くには水量豊かな天塩川がゆったりと流れています。
 学校では、「@強い身体A高い知性B豊かな心」を教育目標に掲げて、地域の人たちと一体となって取り組んでいます。特に「情報(IT)教育」には力を入れて、平成7年には文部科学省から「マルチメディア活用開発研究校」の指定を受け、弾みがつき、道内では有数のマルチメディア先進校になりました。子供たちは、全国の小・中学校とテレビ会議システムで結び、情報交換をして交流を深め、さらに理科や総合的な学習の時間では、植物の成長を季節ごとにデジカメに納め、四季の変化をビジュアルに記録しています。
 校長先生は、「九州の学校とテレビ会議システムで結び、北海道にはいないカマキリをメディアスクリーンいっぱいに映し出し、鋭い手足の昆虫と対面、驚いていました。彼らにとっては大きな発見でした」と話します。
 地域とは「ワラベンチャー」(わらべ+アドベンチャー)を通して、カヌー漕ぎ、スノーモービル乗り、魚釣り、山菜取りなどを親たちと一緒に挑戦しています。
 校区が広いため、子供たちは毎日2台のスクールバスで通っています。バスは学校には直行しないで、手前の問寒別駅前で全員を降ろして、そこから歩いて登校させています。「歩くことによって地域の人たちとふれあい、季節感を実感してもらい、さらに交通ルールを学んでもらうのが狙いです」と、長谷川敏之教頭先生は話してくれました。


ダイバーも学んだ
校舎に響く ミュージックベル

岩手県種市町大和中学校
 静かな森に囲まれた岩手県九戸郡種市町の大和中(大西昭子校長)の体育館に、ミュージックベルの澄んだ音色が流れました。ベルマークのお友だちからの贈り物です。生徒たちは地域の皆さんに聴いてもらおうと練習に励んでいます。
 三陸沿岸にある種市町は岩手県の一番北に位置し、青森県と接しています。
 人口は1万5千人ほど。半農半漁のこの町には、全国でここにしかない珍しいものがあります。県立種市高校の海洋開発科です。海中に潜って港湾工事や沈没船の引き揚げ作業などをするダイバーを、これまでに1000人以上も送り出してきました。大和中から同科に進学した生徒が何人もいます。
 同中にはミュージックベルのほか、カラーソフトバレーボールなどが届けられました。子供たちが待ち望んでいた物ばかりです。
 シイタケ栽培のホダ木が並ぶ森を抜けて学校を訪ねました。小中併設校で、中学校の生徒は7人、小学校の児童は21人。生徒たちは、ベルを持って早速演奏をしてくれました。
 最初はドボルザークの「新世界より−家路」、続いて映画「ピノキオ」のテーマの「星に願いを」。前の学校で使ったことがあるという2年生の中澤愛美さん以外は初めてでしたが、息もぴったりで、素敵な演奏振りでした。
 「ほかの人とのタイミングがむずかしくて」と2年生の村上幸博君、「むずかしいけど、きれいな音が出るので楽しいです」と1年生の戸鎖佳代さん。みんな、ちょっぴり緊張しながらも、楽しそうです。
 児童や先生たちが話し合って、秋の文化祭で、地域の皆さんに聴いてもらうことにしました。「贈って下さった全国のベル仲間の皆さんに、くれぐれもよろしくお伝え下さい」と大西校長先生。教頭の齋藤三男先生は、「生徒たちは、みんな仲良しで、小学生の面倒をよくみてくれるやさしい子供たちです。きっと、きれいな演奏をしてくれるでしょう」と話していました。
 大和中のミュージックベルは、もうひとつ素敵な動きを呼び起こしました。PTAのお母さんたちが、このベルを貸してもらって、「ミュージックベルチーム」を結成しようと相談を始めました。お母さんたちは、来年2月に開く町の教育振興大会での初演奏を目指して張り切っています。
 ベルマークの贈り物が、地域の皆さんのきづなをいっそう深めることになりそうです。


村のシンボルは国体会場
地域への思い厚く 皆で学校見守る

富山県上平村上平小学校
 「乗れたよ。イチ、ニ イチ、ニ」「私もよ。見て、見て」。山あいの学校に歓声が広がります。富山県上平村の上平小学校(坪本好美校長、53人)には竹馬、投球トレーナー、ゲームベストなどの体育用具が贈られました。
 村は砺波平野南端から山間へ分け入った岐阜県境にあり、年間の積雪期間が100日もある豪雪地帯。村内の合掌造り集落は岐阜県白川村の白川郷などと世界遺産に指定。最近でこそ高速道路が通じましたが、へき地で培った村人の地域への思いは厚く、とりわけ唯一の小学校である上平小を大切にしています。
 そのシンボルが2年前に国体会場の1つとして建った同小体育館。可動式の座席、多彩な照明装置が整い、村の文化・体育の拠点にもなっています。
 子どもたちも期待にこたえて、勉強はもちろん、村の歴史や暮らし、民謡、方言などふるさとを熱心に学習。ごみ収集や通学路の除雪、赤い羽根募金に参加し、各種行事にはお年寄りを招待、中学校との合同スキー大会では本物のゲレンデで見事な滑りを披露します。
 ベル援助に体育用具を選んだのは、8割がバス通学とあって、やや肥満が気になるためとか。昼休みや体操の授業、タテ割りで遊ぶ「仲良しタイム」に、思い切り走り、投げ、打ってもらおうとのねらいです。
 坪本校長は「ベルマーク運動にも、改めてヒトとヒトとのつながりの素晴らしさを感じる。大切にします」と話していました。


渓流にはオオサンショウウオ
届いた三味線使い 和楽器の良さ学ぶ

岡山県新見市菅生中
 近くの渓流に国の天然記念物オオサンショウウオが住む岡山県新見市の菅生中(上田勝己校長)には,ベルマーク運動から三味線、尺八セット、CDラジカセ、グランドゴルフセット、スチームアイロンが届きました。特に三味線、尺八セットには生徒たちも大喜びです。
 同校は広島県に近い山間部にあって、へき地等級1級校。生徒数は21人、うち7人が女子です。すでに琴が1台あり、これで和楽器が3点そろいました。生徒たちに和楽器の良さをもっと知ってもらおうと希望したものです。届いたばかりの三味線、尺八を手にした谷岡結果さん、有平沙織さん、今田藍美さんは音楽担当の久宗美英先生から使い方を習いながら「本物を初めて手にしました。音を出すのが難しいが、楽しそう」と張り切っていました。
 生徒数が少ないため、秋の運動会、文化祭などは地区の小学校と合同で開きます。場所は運動場を毎年交代で使い、父母、青年団、お年寄りたち約200人も参加、和やかな集いになります。グランドゴルフセットはこのとき、お年寄りたちと地区対抗戦をする予定です。
 生徒数の少ない学校の悩みはクラブ活動で、テニス部や卓球部など運動に力を入れると、文化活動ができなくなることです。久宗先生は「急には上手に演奏できなくとも、将来、県の音楽コンクールにも参加できるようになれたら」と話していました。


新品の管楽器に感激
マングローブ植樹 自然守り10年

沖縄県名護市屋我地中
 「新品の楽器を見たときは、自分たちの楽器だという実感がわき感激しました」――管楽器3点とワンタッチテント、体育館用モップの計5点を贈られた沖縄県名護市の屋我地中(宮城慶元校長、56人)の生徒たちは、手にした管楽器に目を見張っていました。
 名護市は、県都・那覇市から約60キロ離れた本島北部に位置。学校は市街地から13キロほど離れた屋我地島にあり、2つの橋で本島と結ばれています。
 学校は干潟が広がる羽地内海に面し、10年前から生徒たちは毎年、マングローブの植樹を続け自然環境を守り続けています。
 希望した管楽器はトランペット、テナートロンボーン、クラリネット。音楽専科の糸数なぎ子先生が2年前に着任するまでの10年間は音楽の先生がいない空白が続きました。楽器類は音楽室と体育館にピアノがあるだけの寂しさでした。
 糸数先生は着任後、3年生を中心に合唱の練習を続けました。また4月からは楽器に接する機会を作ろうと、他校の先生からトランペット1丁とフルート2丁を借り、音楽選択教科の時間に3年の女子生徒に指導を続けてきました。
 合唱は、11月23日にある国頭地区中学校総合文化祭に出場する予定。管楽器は小曲を吹けるように上達しており、来年はソロ演奏に出場を目指しています。
 糸数先生は「楽器類は高価でなかなか買えませんが、打楽器や木琴類など1つずつそろえて合奏ができるようにしたい」と話していました。


「パソコン・マウスは特製です」
子らの生きる力 伸ばす教育実戦

東京都立墨東養護学校・院内学級
 ベルマーク運動から病院内学級の援助対象校としてパソコンや自習用ソフトを贈った都立墨東養護学校(東京都江東区猿江、高原武校長)は、かつて掘割が縦横に走り、いなせな掛け声が飛び交い、材木と海の香りが漂っていた場所にあります。材木の集積場であった猿江貯木場跡地は「猿江恩賜公園」に変わり、道を隔てた近くにあります。
 同校は体に障害のある(肢体不自由)子どもの学校で、小学部48人、中学部26人、高等部24人の児童・生徒が学んでいます。
 「学校では、子どもたちが持っている『生きる力』を最大限伸ばしてあげることを目標にしています」と高原校長は話します。
 今回、ベルマークから贈られたパソコンなどの機器は中央区にある「聖路加国際病院小児科都立墨東養護学校訪問学級」に置かれて活躍しています。「うれしい事に聖路加病院に入院している児童の退院が決まり、近く前籍校に戻れることになりました」と、吉川公一教頭先生は胸を弾ませながら話してくれました。
 同校は、通学が困難な重度の児童・生徒のために「訪問教育」を実施、入院している聖路加国際病院(3人)をはじめ、近くの都立墨東病院や賛育会病院に、教員が出向いて「病院訪問指導」をしています。さらに築地の国立がんセンター中央病院院内病棟には「いるか分教室」も開いています。
 パソコン室で働いていた女性は、「学校では、体の不自由な子どもたちでも、手軽に使いこなせる特製のマウスを作って使っています」と話しながら、実物を見せてくれました。


バリア克服へベルも一役
子供の自立は 社会の理解から

岐阜市希望が丘養護学校
 「私たちはベルマークをはじめ、多くのみなさんに支えられている。私たちも自ら行動することで、社会の理解を深め、さまざまなバリア(障壁)が少しでも取り除かれれば・・・」。ベルからの贈り物が届いた岐阜県立岐阜希望が丘養護学校の大塚雅子校長は、こう話します。
 岐阜市を流れる長良川の近くにあり、併設の肢体不自由児施設・希望が丘学園から小学部51人、中学部20人が通学、自立する力を身に付けようとがんばっています。力を入れているのが交流と情報公開。子どもが自立したり、自分の意志を正しく伝える能力を養うには、多くの人との接触が必要だし、何より社会の理解が大切だからです。
 市内の小・中・高校の体験学習の受け入れや、これらの学校とテレビ会議システムによる交流、いも掘り、運動会への参加、郵便局などでの作品展への出品等々、と積極的。地域へもできるだけ出かけ、車いすが通れる道路づくりなどを市へ働きかけてもいます。
 ベルからの贈り物は、子どもたちが大好きな音楽を聴けるラジカセ、校外学習の際にひと休みできるワンタッチテント、バランス感覚を養うトレーニングバルーンなど。緊急時に、先生が子どもに呼びかけるメガホンも贈りました。
 それと、デジカメ。学校生活を記録してみんなで楽しんだり、学校のホームページなどに掲載して子どもらのがんばりを社会に知ってもらうために活躍することでしょう。


使いやすい教材提示装置
「子供の理解深める武器に」

名古屋の愛知県立千種聾学校
 聴覚に障害のある子らが学ぶ聾(ろう)学校への今年度のベルマーク援助は、協力会社・エルモ社(本社・名古屋市)の教材提示装置。全国16校へ贈られ、名古屋市の愛知県立千種(ちくさ)聾学校(太田裕昭校長)では、「使いやすく、子どもたちが理解を深める大きな武器に」と喜んでいます。
 同校は幼稚部と小学部からなり、名古屋市と近郊から幼稚部25人、小学部47人が通学。障害の状態に応じたグループ・個別指導のほか、それぞれ居住地域の学校でも学ぶなど、「子どもたちがハンディを認めたうえで、力強く生きていくために、持って生まれた能力を最大限引き出すことが私たちの役目」と、早川はぎゑ教頭は話します。
 授業で使う教科書や時間割りは一般の学校とほぼ同じですが、耳が不自由なので、視覚情報による授業が最重点になります。テレビの教育番組でも録画して、理解しやすいように字幕を入れたりします。スライド、OHP、パソコンなど、情報機器は欠かせない学習用具なのです。
 ベルマークからの贈り物、教材提示装置は、最も頼りになりそう。図面もOHPのようなシートに挟む必要はありません。花や模型なども立体的、かつ細部まで映し出せます。
 小学部指導主事の伊藤美和子先生は、「投影した画像に直接書き込め、ホワイトボードとしても使える。子どもの方を見ながら使えるのもいい。研究次第で活用範囲がどんどん広がりそう」と話していました。


文字が大きく見やすいネ
拡大読書器が届き 早速「トライ」

大阪市の大阪市立盲学校
 大阪市東淀川区の大阪市立盲学校(高田能子校長)にはカラー拡大読書器1台が贈られてきました。視力の弱い人が本を読むときはテレビの受像機に字を大きく映して読み取る機械です。
 同校には目の不自由な人やメガネを掛けても、視力が0・3以下の弱視者127人が通学、寄宿しています。年齢は早期教育を受ける幼稚部の3歳から高等部専攻科の63歳までの男女で、平均年齢は37歳。全盲の人は点字で、弱視の人はこの拡大読書器の上に本を載せて読みます。この学校には25台の拡大読書器がありますが、大勢の授業の時はもうあと10台が欲しいところでした。先生たちは「便利な物をもらって大助かりです」いいと、高等部のAさんは「医学書の人体図鑑などは絵が小さくて、見にくいのですが、拡大器を使うとカラーで良くわかります。ピント合わせやズーミングが簡単なので使い易いです」と喜んでいました。


デジカメなどの待望の品物届く
役立ち楽しめるものを選ぶ

鹿児島県立鹿屋養護学校
鹿児島県立鹿屋養護学校(永田正二郎校長)は、大隅半島の中央部に位置する鹿屋市の北部にあり、ベルマーク運動参加校。運動を始めて2年がたち、9月に初めてマーク約4500点を送付できました。長田校長は「それだけに援助の品々はありがたい。8種類の品物は全校の児童、生徒の役に立ち、楽しめる物にしました。ありがたいです」と感謝していました。
 同校は34学級。児童・生徒数は小学部42人、中学部30人、高等部56人、登校できない子供の訪問学級8人で計136人。
 援助品は8種類計12点。デジタルカメラは各学部が共用でき要望が強かった。CDラジカセは古くなったものの更新。ワンタッチテントとジョイントフロアマットは、子供が一番喜ぶ遠足で、肢体(したい)不自由の子供のために活用できる。円形のジャンピングシェイプはトランポリンのミニ版で、跳んだりはねたりができ子供が好きな用具。
 この他にカラー竹馬やポップボール(45センチ)、低学年用のカラーソフトバレーボールがあり、低学年から高学年までの全児童、生徒が楽しめる物ばかりです。
 ベルマーク運動は高等部の生徒会活動の一環。執行部が中心になり、先生の支援を受けながら活動しています。「学校の活性化を図のと、知的障害で活動に制限があるものの取り組めるのではないかと始めました。仕分けや集計作業に時間がかかるが、根気強く続けていきたい」と生徒会担当の坪山雅一先生。