驚きの連続、「クモっていい奴なんだ!」
(2017/09/13)印刷する
高野山近くで観察会、4人が参加
ベルマーク財団の理科実験教室「クモ観察会」が9月5日、世界遺産に登録されている高野山近くの和歌山県高野町立花坂小学校(田中秀和校長)でありました。日本蜘蛛(くも)学会会員で自然史研究家、せきねみきおさんの楽しいフィールドワークと講義に、4人の児童はすっかり引き込まれ、クモに対する見方が大きく変わったようでした。
「クモってほんとはいいやつなんだ、ってことをクモになり代わってみんなに伝えたくてやって来ました。スパイダーマンのせきねです!」
芝生の緑がまぶしい校庭の一角で、クモの巣柄のバンダナを頭に巻いたせきね先生が元気よく語りかけると、1、2年生各1人と6年生2人の子どもたちから歓声が上がりました。
「クモの絵かき歌」で授業はスタート。せきね先生が「クモといえば、はちー」と歌いながら、画用紙に「8」の字を書き、「頭と胸で一つの丸、お腹でもう一つの丸。頭と胸とお腹の三つがある昆虫とは違います」。絵を描きながら、足が8本、目が8個、天敵が蜂であることを説明し、子どもたちを次々と驚かせます。
続いて、校内のあちこちでジョロウグモの観察です。「巣の形が楽譜みたい」「メスよりオスが小さい」「金色の糸もある」など九つの特徴をイラストで示した紙を配り、誰が一番早く、全部確認できるかを競いました。
クモの巣の標本も作ってみました。水性の白い塗料と糊を巣にスプレーした後、黒い画用紙を後ろから差し入れて、巣を移し取ります。ラッカーを塗って乾かせば完成です。子どもたちは助け合いながら、それぞれがユニークな模様の標本を仕上げていきました。
「かっこいいクモを見に行こうぜ」。せきね先生はそう言うと、事前に探し出しておいた場所へみんなを連れていきました。倉庫の軒下で、黄色と黒のしま模様のコガネグモが巣を張っていました。体長2センチ近い大きなメスで、近くには緑色のモナカのような卵と、孵化(ふか)してまもない多くの子グモが身を寄せ合っています。
せきね先生が息を吹きかけると、子グモは四方八方に逃げ出しました。びっくりする子どもたちに、「これを『クモの子を散らす』と言うんだよ」と、四散して逃げる様子の言い回しの説明です。「脱皮して大きくなったら、お尻から糸を出して空を飛んでいくんだ」とも付け加えました。
フィールドワークの最後にみんなでクモを採集してきて、名前をせきね先生に教えてもらいました。オオヒメグモ、ギンメッキゴミグモ、ズグロオニグモ……。身近な場所にいろんな種類のクモがいました。
授業の締めくくりは、映像を使った教室での講義です。クモが7種類もの糸を使い分けながら巣を張ったり、獲物を捉えたりしていることや、人間の髪の毛の20分の1の細さの糸が、鋼鉄の5倍もの強さを持つことなど、驚きの連続でした。
「稲につく虫を食べるクモは、米作りが始まった弥生時代から田んぼの守り神だったんだ」「地球は4万5千種類の美しいクモでいっぱいなんだよ」
約1時間40分に及ぶ授業を終えた子どもたちは、クモの好感度が大きくアップした様子です。6年生の中尾甚哉くんは「クモはちょっと気持ち悪いなと思っていましたが、話を聞いて関心を持ちました」。2年生の寒川(そうがわ)美月さんも「嫌いだったけれど、めっちゃいいやつってわかりました」と話していました。
せきね先生は大阪の私立の中高一貫校で理科教師を務め、退職後は奈良県のレッドデータ(絶滅危惧種)ブック作りなどに携わりました。2001年からNPO法人奈良県青少年文化振興協会の「子どものためのクモの観察会」の講師を務め、約10年間で24科111種類のクモ類を確認しました。ホームページ「生きものエッセイ:虫めづる」(http://www.natureoz.net/MMZ.htm)もとても楽しい内容になっています。