ベルマークをテーマにした卒業研究の論文とパネル作品が、2月16〜21日に名古屋市博物館で開かれた「愛知教育大学美術科卒業・修了制作展」に出品されました。作者は、同科デザイン教育研究室4年の中西菜津希さん(名古屋市中村区)。多方面に地道な聞き取り調査を重ね、アンケート調査も実施して、時代の変化に応じたベルマークのあり方を考察しました。
論文のタイトルは「学校におけるベルマーク運動の展望と、その企画研究」。聞き取り調査は、ベルマーク教育助成財団やPTAのお母さん、協賛企業、スーパーマーケットなどで行い、70人規模のアンケートも実施して、運動や教育環境の現況、問題点を探りました。ベルマーク説明会(09年5月、浜松市)に参加したり、小学校PTAのベルマーク整理作業を体験したりもしました。
ベビーブームや高度経済成長に支えられて発展してきたベルマーク運動は、今年で創立50周年です。近年は少子化や経済停滞など時代の変化の影響を受けているようにも見えますが、運動の基本にある「みんなで協力」「物を大切に」「誰かのために」といった考えは、時代が変わっても継続すべき非常に大切な心構えです。中西さんは、こうしたベルマーク運動の心構えや優れた仕組みを、なんとかして次の世代に残したいという問題意識に立って卒業研究に取り組みました。
そして得た結論は、今以上に大学への働きかけを強めること。とくに使用済みカートリッジの回収に特化することで運動の輪を大きく広げることができると、ベルマーク財団に提言しています。
論文の構成は、第1章「ベルマークの仕組みと時代的背景」、第2章「ベルマークの現状と問題点」、第3章「課題の解決に向けて」、第4章「戦略の展開」、第5章「戦術の展開」。
第3章では、愛知教育大の職員、生協従業員、学生、その保護者計70人に聞いた「ベルマークを集めているか」「どのような点が改善されたら集めても良いと思うか」など8項目のアンケート結果を踏まえ、「大学生」と「小中学生を持たない消費者」をベルマーク収集のターゲットにすべきだと提言しています。学校外の場で消費者からベルマークを回収した事例では、協賛会社のキリンビバレッジがスーパーマーケットのクイーンズ伊勢丹と提携して行ったベルマークキャンペーンを取材しました。
第4章、第5章では大学生のボランティアにベルマークを利用すべきだとして、ベルマーク財団に具体的な大学への働きかけを促しています。また、学生に気軽に加わってもらうにはベルマークを切り取ったり計算したりする作業を効率化するのがいいとして、使用済みカートリッジに限定して回収することを提案しました。
「卒業・修了制作展」には、論文をベースに作成したパネル11枚と朝日新聞の記事体広告の見本1部、ポスター1部、パンフレット1冊、営業活動用グッズ(マグカップ)などを展示しました。ベルマーク財団が大学に向けて展開する、架空の「ベルマーク・ボランティア・カレッジ」キャンペーン(略してベルボラ・カレッジキャンペーン)の企画です。
約1年かけて卒業制作を仕上げた中西さんは「何が悪いかの問題点は見えるが、改善点を形にするのが難しかった。取材は楽しかった」そうです。4月から、名古屋市内の中学校の先生になります。「赴任した学校がベルマークに参加していなかったら、ぜひ参加させたい」と話していました。
《写真》中西さんとベルマークと大学を組み合わせた新聞広告の例=名古屋市瑞穂区の市博物館で
(2010/02/24)
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