●「総和おもしろ科学の会」(茨城県)
科学を学ぶ楽しさ、地域ではぐくむ
身近な道具を使い親子で科学実験や工作を楽しむ団体「総和おもしろ科学の会」は、茨城県古河市(旧総和町)の西牛谷小学校で週5日制対応のため93年に発足したPTAの「おやじの会」が始まりです。「子どもたちの学ぶ意欲をはぐくむ」をテーマに、親子が一緒になって会話をしながら、身の回りにある教材を使った科学実験を始めました。当初は科学の専門家もおらず苦労しましたが、東京の科学技術館の専門家らに実験を教えてもらいネットワークを作りながら活動が広がりました。
95年にPTAから分離。「科学クラブ」として学区内の地域住民や先生も参加して連携が深まりました。97年には旧総和町内の小学校10校、中学校3校に活動を広げ「総和おもしろ科学の会」に発展、全町的に親や住民らが参加するようになりました。
現在ボランティアとして取り組む会員は35人。「小中学校への出前授業」は年30回以上で、火薬ロケットの打ち上げ、巨大シャボン玉づくりなど100種類の実験をしています。また「総和科学の祭典」では、古河市内のすべての学校がブースを設け、それぞれ工夫を凝らした科学実験の紹介を続け、入場者は1万人にもなりました。
●「豊田市立西広瀬小学校」(愛知県)
白濁した川、調べて清掃続け30年
愛知県豊田市の西広瀬小学校は山と川に挟まれた全校児童37人の小さな学校です。その5、6年生は、学校の近くを流れる矢作川と飯野川の水質透視度測定を始め1日も休まず続け丸30年になります。
流域が陶土の産地で土砂採取による排水のため、川は白濁、汚れていました。児童が「昔の清流も取り戻したい」と75年から飯野川で清掃活動を始め、翌76年、矢作川沿岸水質保全対策協議会が透視度の測定を提案し、活動が始まりました。
測定を始めた当時、川の透視度は数センチしかない日もありましたが、子どもたちの取り組みをみた大人たちの間に「川を汚してはいけない」という意識が徐々に広がり、地域全体の活動になりました。透視度は年々あがり、現在は150aを記録することもあります。
92年からは地域住民も調査に参加、土日や荒天の日などは、児童に代わって測定しており、親子2代にわたる人もいます。杉浦努校長は「現在、この活動は学校だけでなく、地域を含めた学区全体の活動になりました」と話しています。
●「兵庫県立龍野実業高等学校デザイン科」(兵庫県)
手作りショーで街を活性化
たつの市の龍野地域は、復元された龍野城や白壁の町並みが残る旧城下町で醤油醸造や皮革産業、そうめんなどの地場産業が有名でしたが、郊外の大型店舗進出などで、中心部は空き家が目立っていました。97年から文化祭でファッションショーを開いていた龍野実業高校デザイン科が、校外の人にも見せたい、と02年からこの古い空きビルを利用して、開催を始めました。卒業作品展も「町ぢゅう美術館」として空き家で開くようになりました。生徒のアイデアで企画・運営する中で、皮革業者から材料の提供を受け、地元小学校からもデザインを募集、おばあちゃんたちからは型紙の作り方、元大工さんからは舞台づくりの指南を受けました。生徒と学校の取り組みに地域の人にも「地域に貢献する実業高校」という意識が高まってきています。
衣装だけでなく、演出・照明・音楽・宣伝も生徒だけで考えます。今年の生徒代表の伊藤淳子さんは「色々な経験ができるし、やり終えた時の喜びは格別です」と話しています。最初150人だった観客も、昨年度は2000人に増加。「若い力で市の活性化に貢献してくれています」と市商工観光課は話しています。
●「藍住町立藍住西小学校」(徳島県)
藍の伝統、全校で親しみ受け継ぐ
藍住西小学校のある藍住町は吉野川沿いにあり、かつては川の氾濫で肥えた土が流れてくる藍の栽培に最適な土地で、江戸時代には徳島藩の代表的な産業だった「阿波藍」の主産地として知られていました。
藍住西小学校が藍染めに取り組んだきっかけは、95年度に6年生が卒業文集を手作りし、その表紙を藍染めでつくったことです。児童の母親らを中心にボランティアグループ「藍の風」が生まれ、子どもたちと藍の栽培や藍染めの手法を一緒に学び、4年後には学校に直径1bほどの樽を使った「藍がめ」をつくり、学校でいつでも染められるようになりました。翌年から藍の栽培を始め、さらに地域の協力で全校的な取り組みに発展しました。
今では運動会で濃紺の旗が翻り、卒業式には児童の胸に藍染めの布のコサージュが彩りを添えます。校内行事は製作発表の場になっています。校内の藍がめも3個に増えました。町の栽培農家はわずか2戸に減りましたが、藍染めの学習は、子どもたちに地域の歴史や伝統文化に触れる貴重な機会になっています。
●穴生「あそびの学校」運営委員会(福岡県)
多彩な遊びで笑顔とルール知る
「山の林から子どもたちの歓声が聞こえます」――北九州市八幡西区の住宅地の小高い丘にある上保公園が「あそびの学校」の拠点です。昔の子どもたちは兄弟や近所の子どもと遊び、自然に社会のルールを学んでいました。今は少子化と社会の変化によって、子どもたちが勝手に遊べる環境がなくなっています。そこで学校5日制が実施された12年前、地域の大人たちは「自分たちが昔味わった体験と遊びの楽しさを知ってもらいたい」と、自然の中で遊ぶ場をつくりました。
毎月第2土曜日が「遊びの学校」定例日。「あそび」のプログラムは子どもたちと相談しながら、時間をかけて作りあげています。ボランティアは約120人。地域のお年寄りや保護者が中心ですが、1年生から「学校」に通ったOBの中高生も20人おり、遊びのプログラムを作るスタッフとして参加しています。96年、公園にある木を全部切って都市公園にする計画が浮上した時には、「自然の中で遊べなくなる」と、市に手紙を出して、白紙に戻したこともあります。
忍者ごっこ、キャンプ、草スキーなどの「あそび」を通して、学校や学年が違う子どもたちと触れ合うことで、ルールを学び、思いやりの心や責任感が育っているそうです。
(2006/11/13)
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