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2005年度の第7回朝日のびのび教育賞
受賞5団体を表彰

 学校や地域を舞台に多くの人々が連携し、特色豊かに大きな成果を上げた活動に贈られる第7回「朝日のびのび教育賞」の贈呈式が11月5日、朝日新聞東京本社の築地・浜離宮朝日小ホールで行われました。 受賞された5団体には、それぞれ朝日新聞社から正賞の盾と活動奨励金50万円が、ベルマーク教育助成財団からは副賞20万円が斎藤諦淳理事長から手渡されました。受賞5団体は次ぎのとおりです。
・ 子ども料理教室「ぼくたちとわたしのたのしいクッキング」(北海道・帯広市)
・ 大蔵の田んぼを育む会(東京・町田市)
・ 名古屋青少年ビッグバンド「フリーヒルズ・ジャズオーケストラ」(愛知・名古屋市)
・ 岡山県笠岡市立白石中学校(岡山・笠岡市)
・ 登校拒否を考える親の会(長崎・長崎市)
(2005/11/15)


表彰5団体

■ 「朝日のびのび教育賞」表彰5団体の横顔

  ◆子ども料理教室「ぼくたちとわたしのたのしいクッキング」(北海道・帯広市)
<食べ物を通じて知る社会>

  元高校の家庭科教師村田ナオさん(69)さんと夫の歩さん(71)元中学校の社会科教師は、定年退職した後、「子ども料理教室」を始めて9年目になります。
  料理だけでなく、農業や食材にまつわる地理・歴史・文化的背景など「料理の社会科」を組み合わせた教室は、すっかり地域に定着しています。生徒は年々増え続け、今年は183人の子どもたちが通っています。
  教室を開いたのは小中学校が隔週5日制になった時期でした。土曜日の昼下がり、映画館からたくさんの子どもたちが出てくるのに驚きました。2人は休日の子どもたちに何かできないかを考えました。帯広は、日本でも代表的な畑作・酪農地帯です。「ビートって大きなホウレンソウ?」「牛は大きくなったら自然にミルクをだすんでしょ」。そこで暮らす子どもたちは、食べ物の「素性」をあまりに知らない。不安に思い、2人はそれぞれの専門を生かした料理教室を開きました。
  ナオさんは献立にはできるだけ地元の食材を取り入れ、歩さんは調理の合間に「料理の社会科」を教えます。50年前の食事情、肉の輸入。素材や季節に応じて地理、歴史、文化的背景、時事問題などテーマは幅広い。
  今年6月「食育基本法」が成立、子どもの「食」に関する教育に国や自治体が取り組むことになりましたが、それを先取りした形です。

  ◆大蔵の田んぼを育む会(東京・町田市)
<宅地のすき間で米づくり>

  豊かな水田地帯だったことが地名でうかがえる町田市大蔵町。都心のベッドタウンとして開発が進み、いまは水田がわずかに点在するのみです。このまちでユニークな米づくりが始まっています。
  5年前、大蔵小学校5年生担任・菅原聡先生の社会科授業で米づくりに不耕起(ふこうき)栽培を採用したのがきっかけでした。この栽培は、田起こしや代かきをせず、前年の切り株の間に苗を植える方法です。硬い土に植えられた稲は野生化し、稲本来の強さが引き出されます。さらに田んぼはホウネンエビ、ヌマドジョウ、タニシなどの動植物集まるビオトープとなっています。
  子どもたちは始めたころ「汚い」「つらい」とこぼしていましたが、やがて田んぼの持つ「生命の豊かさ」にひかれ、子どもたちの足は、義務感ではなく楽しみにして田んぼに出向くようになりました。台風にも倒れないたくましい稲が育ち、プロに負けない収獲量だったそうです。
  この栽培法は子どもの卒業と先生の転勤とともに、田んぼの運営主体が学校から保護者を中心とした地域に移りました。周囲の農家には、豊かに実ったコシヒカリに刺激を受け、不耕起栽培を導入する人も増え、地域や農業グループにも広がりをみせています。

  ◆名古屋青少年ビッグバンド「フリーヒルズ・ジャズオーケストラ」(愛知・名古屋市)
<中高生が生き生き演奏>

  全国的にも珍しい中高生らによる学校の枠を超えた地域ジャズオーケストラが名古屋で活動しています。生き生きと演奏する姿で人気を博し愛知万博、敬老会、商店街などの催しに次々と招かれ、公演は年間40回にも及びます。
  中学1年から21歳まで44人が所属して、女子高生によるビッグバンドの活躍を描いた映画「スウィングガールズ」を地でいくといわれ、地元では「ナゴヤ・スウィングガールズ」の愛称で親しまれています。
  「自分たちが楽しむだけではなく、聴く人にも楽しんでもらえる演奏」を目指しています。スタンダードジャズだけでなく、お年寄りには「青い山脈」「川の流れのように」、子どもたちには童謡やアニメソングと、親しみやすく、聴く人にあわせた曲を選び演奏して喜ばれています。
 91年、中学校教諭の木全(きまた)昭弘さんが千種台中学校に赴任した時、生徒や保護者からジャズオーケストラ創部の要望があり、顧問として演奏活動を続けてきましたが、10年後、木全さんの転勤で廃部となりました。
  01年7月、廃部になった同中学校ジャズオーケストラ部の卒業生や生徒が中心になって「フリーヒルズ・ジャズオーケストラ」が結成されました。ジャズ部のある学校は少なく、映画や演奏でジャズに魅了された生徒が加わり、メンバーは増え続けています。

  ◆笠岡市立白石中学校(岡山・笠岡市)
<伝統の踊り古老に学ぶ>

  岡山県笠岡市沖合12`の瀬戸内海に浮かぶ白石島の市立白石中学校(西井保校長)では、島に伝わる国無形文化財の白石踊を教育に取り入れ、伝統芸能を継承しています。学校、家庭、地域が一体となって取り組み、踊りは古老の手ほどきを受けて全生徒が踊れるようになって卒業しています。
  白石踊は1つの口説き(音頭)にあわせて、男踊りや女踊り、奴踊り、笠踊りなど、衣装や所作が異なる13種類もの踊りがあります。輪の中で同時に異なる踊りを踊る中から、独特の調和が生まれてきます。
  島の人口は736人。白石中の生徒は現在男子9人、女子8人。91年度からふるさと教育の一環として白石踊に挑戦し、「総合的な学習」が始まってからは、週2時間のうち1時間をこの踊りにあてています。指導するのは、白石踊会の天野与三郎会長ら。島の全員が白石踊会の会員です。毎年8月14日から3日間の「島の盆」には生徒や島に帰ってきた卒業生も加わり、大勢の観光客に哀調を帯びた踊りを披露しています。

  ◆登校拒否を考える親の会(長崎・長崎市)
<個性認める場所17年目>

  長崎市中心部の雑居ビルの一室に毎週木曜日、約20人の子どもたちが集まってきます。小学校高学年から20歳前後まで。楽器を弾いたり、ゲームをしたり、漫画を読んだり、キャンプなどの行事だけ参加する子、ひざを抱えてうずくまる子もいます。
  「何も強制をしない。思い思いに過ごします。話したい子がいれば聞く。それだけだ。ある時期、立ち止まることも人間の成長には必要。大人が教え、諭すのではなく、見守る場所に」と代表の井形和彦さんは話します。
  教育の学習グループに集まった母親たちが、不登校の子どもたちを支援するために89年、登校拒否を考える親の会が発足しました。親の相談や学習会を続けるうち、子どもの居場所にと、94年にフリースペースを開設しました。通った子どもは10年間で延べ5500人、大人は8000人に上ります。
  子どもの苦しみや親の悩みが複雑化しており、子どもたちが暮らす家庭、学校、社会のありようを、子どもの視点に立って教えています。
(2005/11/15)
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